情報・通信

建設技術研究所、AIを用いた河川管理の高度化

2021107日】

写真 1
北条川上流域(米里地区)における溢水

写真 2
北条川分水堰の運用

建設技術研究所(東京都中央区、中村哲己社長)は鳥取県と共同で、「持続的で実効的な河川管理」および「豪雨時における安全避難」の実現を目的として、河川監視カメラ・水位計などより得られるデータとAI (人工知能)技術を用いた新技術の開発(河川管理の高度化)を進めている。具体的には、鳥取県との間で「鳥取県中部(倉吉市・北栄町)を流れる北条川における河川管理高度化実験に係る確認書(2020年3月3日)」を締結し、共同で実証実験に取り組んでいる。
 北条川を実験フィールドとして実証実験を実施している。上山晃東京本社情報・電気通信部部長に実証実験の詳細を聞いた。
 上山氏は「河川監視カメラは河川の状況を直感的に把握できるので、多く設置され、また一般にも積極的に公開されています。一方、異常を発見するには、職員が常時、複数の画面を確認する必要があります。そこで、画像から出来事を定量的に判断できるようにならないかと考えました。監視カメラの撮影画像をAIで分析することで、水防活動や緊急時対応の支援を行うなど、高度な河川監視の実現を支援したいと考えています」と話した。
 北条川での実験内容は①北条川上流域(米里地区)における溢水(いっすい)監視→現状は、CCTV画像を待機職員が目視確認しており、いつ・どこで溢水が発生したのか正確に把握できていない(現地にて溢水箇所を特定し、水防活動を行っている)→溢水を検知するAIモデルの運用へ②北条川分水堰(ぶんすいぜき)の運用→現状は、分水堰の操作が複雑で職員負担が大きい。時間推定は、職員の経験と勘。人事異動等による運用精度の低下が懸念。操作判断は休日・夜間にも及ぶため、職員の時間拘束による心理的負担が大きい→AI技術による数時間後の水位予測へ③北条川放水路河口部における砂州の監視→現状は、北条川放水路河口部における砂州高の評価が困難。砂州高を定量的に計測できておらず、CCTV画像を見て主観で判断。将来は砂州フラッシュが可能な砂州高を定量的に観測したい→AI技術による画像解析へ。
 「①「溢水監視」では、溢水を検知するAIモデルを開発しました。通常時、増水時、溢水時の『河川水面』の特徴を学習しました。ピクセル単位で『河川水面』の領域を出力し、溢水事象を、CCTV画像から判定します。具体的には上流域のカメラの画像を学習させ、ます。また河岸から連続的に水が溢れてきた際に溢水と判定すべきことを学習させました。日中、夜間(照明有)は高精度で水面検知が可能です。AIが人間の指定したとおりに水面を理解しているものを正検知として日中で9割9分2厘の精度で検知ができます。また、①「溢水監視」では、『河川水面』領域の検知結果から水位を算出するシステムを開発しました。水位算出手順は、ポールを持った人間を立たせて現地にて測量を実施→同時刻のCCTV画像から1pxあたりの水位を算出→画像に写っている水面の高さをAIに学習させて、それが上下したら1ピクセルあたりどれくらい水位が変動するのかを計算して水位を算出というものです。水位計が付いていないところでもカメラさえ付いていれば水位が測れます。上流に設置されている危機管理型水位計と比較すると概ね、水位上昇、下降の傾向把握ができるレベルに達しました。最大誤差で0・2メートル、平均誤差で0・04メートルといった精度です。
 ②「分水堰操作支援」では、堰操作に応じた水位予測モデルを構築しました。過去の観測雨量・水位などの実績データを学習。堰操作に応じた水位予測モデルを構築(4モデル=【堰起立時】①堰起立を続けた場合②堰倒伏操作をした場合【堰倒伏時】③堰倒伏を続けた場合④堰起立操作をした場合)。3時間後の水位予測を行い、堰を倒伏すべき時刻を予測します。
 ③「砂州監視」では、砂州と河川水面を検知するAIモデルを開発しました。『砂州」と『河川水面』の特徴を学習し、ピクセル単位で『砂州」と『河川水面』の領域を出力します。日中、夜間は月明かり程度の明るさがあれば高精度で検知できます。砂州でいえば正検知率8割8分2厘の確率で検知しました。これにより、CCTV画像から砂州の高さ計測が可能です」(上山氏)。
 このほか、砂州閉塞・砂州開口(砂州の一部が崩れ、河川水面と海水面が連結した状態)判定モデルを開発し、「砂州の開口・閉塞状態」の特徴を学習した。CCTV画像から砂州閉塞・開口の判定し、河川水位、潮位と組み合わせることで「砂州フラッシュ」の発生を判定・記録することが可能だ。「北条川は、地方の中小河川で、雨が降ったらすぐ水位が上がって川が溢れます。また、放水路が整備されており、分水堰(ゴム堰)が整備。高水になったら分水堰を倒して放水路に水を流すという運用をされていますが、水田地帯で、分水堰を倒すとなると地元の方の了解を得なければなりません。水が上がってくることを早く知りたいし、ゴム堰を倒す時は、できるだけ早く地元の方々に倒すことを知らせなければいけません。また、鳥取県の位置する日本海沿岸河口部は砂州が発達しており、砂州が発達すると河口部が閉塞してしまう。河口閉塞時にゴム堰を倒し逆流し、JR高架橋等に被害が生じることは万が一にも避ける必要があります。河川管理者は、河口砂州の撤去のタイミングを目で見て判断しています。砂州フラッシュ(砂州が流れてくる現象)が起こるのか起こらないのかは、工学的に判定ができないものですから、砂州撤去の判断は主観で判断せざるを得ませんでした。AIを活用することで、砂州フラッシュが発生したことを記録できるようになりました。将来は、水位、流量、砂州の大きさ等の条件から安全に人口的な砂州フラッシュを起こせるようにならないかと考えています」。
 さらに上山氏は「防災・減災対策のDXによる避難体制等の強化に向けて『AIによる河川管理の高度化』の実用化を進めています。気候変動による水災害リスク災害が高まる中、災害時における河川監視の高度化、住民自らの行動等につながる情報提供の高度化、さらには被災状況の把握や災害復旧の迅速化を推進する必要があります。これに対応するためには、職員の労力を省力化した上で、高度な判断・対応を行えるようにすることが重要です。当社は、河川監視カメラ・水位計等より得られるデータとAI(人工知能)技術を用いた技術で河川管理の高度化を支援したいと考えています。画像からAIでいろいろなものを検知して、解析して通知していきます」と話した。

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