第75回電波の日・情報通信月間記念中央式典を開催

第75回「電波の日」(6月1日)と「情報通信月間」(5月15~6月15日)を記念して、総務省と情報通信月間推進協議会(会長・遠藤信博日本経団連副会長/NEC特別顧問)は6月2日、東京都千代田区の帝国ホテルで令和7年度「電波の日・情報通信月間記念中央式典」(電波協力会協賛)を開催した。これに伴い、電波利用や情報通信の発展に貢献した個人15人と、団体6団体を表彰した。また各地方総合通信局等でも同様に地方記念式典が開催された。

 主催者を代表して村上誠一郎総務大臣は、「電波情報通信の様々な分野で多大な貢献された方々のこれまでのご功績に深く感謝と敬意を表し心からお祝い申し上げる。昨今の情報通信技術サービスの普及進展に伴い国民生活の利便性は高まり通信放送業界を取り巻く環境は大きく変化している。SNSの活用や生成AIの浸透が進む中で通信放送インフラがこうした活動を支えるキーワードとしてますます重要。このため総務省では、地方における5Gや光ファイバーの整備、データセンターの地方分散、海底ケーブル整備などデジタル基盤の整備を進めている。合わせてオール光ネットワークを中核とする次世代情報通信基盤や量子暗号の通信など先端技術の研究開発や社会実装の取り組みを進めている。一方、SNS等ネット上の偽・誤情報や誹謗中傷は短時間で広範に流通拡大し、国民生活や社会経済活動に深刻な影響を与えると認識している。総務省では、4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法をはじめ制度的な対応、利用者の意識啓発に向けた官民連携の取り組み、技術開発や研究開発等の総合的な対策を専属的に進めている。また放送については国民の知る権利を満たすなど、社会的な役割が期待される放送を持続可能とする観点からその将来像や制度のあり方についてさらなる検討を進めると共に、放送コンテンツの制作力強化、海外展開を進めていく。さらにAIに関しては、広島AIプロセスの国際行動規約に関し、AI開発企業による履行状況や確認するための報告枠組みの運用が開始された。引き続き広島AIプロセスの賛同国の増加やAI開発企業の取り組み推進を図る。本日の式典には我が国を代表する情報通信関係の皆様にお集まりいただいた。今世界は激動を迎え先が見通せない状況だが、皆様と我が国の将来を考え、この難局を乗り切っていきたい」とあいさつした。

 続いて情報通信月間推進協議会の遠藤会長は、「今日の経済社会において電波は通信、放送はもとより交通や防災、医療等を支える基幹のインフラと言っても過言ではない。DXが進む中、重要性はよりいっそう高まっている。こうした中、society5・0、SDGsの実現に向けて有限希少な国民共有の財産をいかに有効に活用し、イノベーションを促進していくかは、我が国の持続可能な成長に直結する重要な課題。現在我が国では5Gやローカル5Gによるスマートシティ、遠隔医療、自動運転といった実装の取り組みが加速している。今後ともこれら多岐にわたる分野で価値を見いだす新たな社会基盤を構築すべく、Beyond5Gの開発を強力に推進していくことが戦略的に極めて重要と考えている。さらに厳密な官民連携の元、国際協力化やルールの形成を推進することで国際競争力を強化し、さらにはリーダーシップをとっていく必要がある。足下では生成AI技術の発展に応じた法制度の見直しも進んでいる。つい先日、国会では生成AI法が可決・成立に至った。今後新たに設置されるAI戦略本部が日本の司令塔となり、国際的枠組みを形成していくことを強く期待している。様々な課題を解決していくうえで、最終的には人材育成が重要な鍵を握る。表彰分野を含め幅広い電波通信分野で厳密な産官学の連携の下、次世代の多様な人材育成や活躍を推進していくことが求められている。今後のBeyond5G到来を見据えると、電波の日と情報通信月間が果たす役割はますます重要。協議会としても様々な行事への支援等を通じて広範な国民への普及啓発にいっそう努める」と話した。

 来賓として、竹内謙衆院総務委員長は、「無線技術やデジタル技術の発展は医療、教育、行政などあらゆる分野で生活に革新をもたらしている。人口減少や高齢化といった社会課題の解決にも貢献し、例えば遠隔医療の普及による医療アクセスの向上やAI、IoTの向上による作業の効率化があげられる。本年度の情報通信月間のテーマにもあるように、より豊かで安心して暮らせる社会の実現に向けて新たな技術革新によってさらなる社会転換が期待されている。こうした変革の時代において我が国の豊富な知見と先進的な取り組みは国内にとどまらず、国境を越えて世界の様々な社会課題の解決に貢献すると確信している。実現のためには皆様の日々の成果を世界に戦略的に発信することが不可欠。我が国の優れた技術が世界に届くよう皆様にはよりご協力を賜りたい。衆院総務委員会では、次世代通信技術として注目される衛星通信やHAPSに大きな関心が寄せられ、未来を見据える情報通信政策において活発な議論が交わされている。引き続き技術がもたらす恩恵が社会全体に広く行き渡るよう皆様の活動を後押しすると共に国民目線の議論を進める。今日の式典が我が国の情報通信技術がさらに力強く発展する契機となることを願う」と祝辞を述べた。

 同じく宮崎勝参院総務委員長は、「電波が国民に広く開放されて以来、その用途は拡大を続け今や情報通信ネットワークは国民の生活に欠かすことのできない重要な社会インフラとなった。近年はスマートフォンやIoT機器の急速な普及、自動運転をはじめ各種産業におけるワイヤレス技術の活用の拡大を背景に電波の利用のさらなる増加が予想されており、その公平な利用がますます求められている。こうした中、低遅延、高信頼、低消費電力を可能とするBeyond5Gはあらゆる産業や社会活動の基盤となることが期待されている。実現に向けて官民挙げて取り組みが進められており、総務省のBeyond5G推進戦略の下、NICTに設置された基金などを活用し、民間企業や大学等において研究開発や国際標準活動などが精力的に推進されている。大阪・関西万博ではBeyond5Gの重点技術の1つであるオール光ネットワークが用いられているほか、Beyond5Gによって実現される未来社会を体感できる展示も行われており、我が国の研究開発力や技術力を世界に発信することによる国際連携や海外転換の累進が期待されている。今国会では電波法放送法の改正、ユニバーサルサービス確保に向けた電気通信事業法、NTT法の改正が行われた。引き続き電波の公平かつ能率的な利用や情報通信産業の発展が進むことを切に願う。当委員会としても国民生活の向上に向け情報通信分野の諸課題に全力で取り組む」と述べた。

 電波協力会を代表して小池英夫NHK専務理事は、「電波の日は電波利用が国民に広く開放された大変意義深い日で、この間我が国の放送通信は技術の進化を着実に取り入れつつ電波を有効に活用しながら発展を遂げてきた。特に今年は放送開始から100年の記念すべき年。大正14年3月22日に社団法人東京放送局が日本初のラジオ放送を開始して以来、電波を使った放送は国民の生活に欠かせない存在。この放送開始の契機となったのが大正12年に起こった関東大震災。未曽有の大災害で根拠のない流言飛語が広がった反省から正確で信頼できる情報を誰もが入手できる手段が必要と当時の人々が切実に感じた結果、放送というメディアが誕生した。それから100年を経てSNS等で真偽の定かでない情報が氾濫し、かえって確かな情報を入手しにくい状況。国民共有の財産である電波を預かる私たちは国民の命や暮らしを守るため、放送通信を最大限活用し、正確で迅速な情報を確実に届けるという責務がこれまで以上に重要と認識している。本年10月からはNHK改正法が施行される。NHKでは正確で信頼できる情報やコンテンツをこれまで以上に豊富に提供することを通じて情報空間全体の健全性に向けてさらに貢献していきたい。放送法第1条には放送を公共の福祉に適合するように規律しその健全な発展を図ることを目的とするとある。同様に電波法第一条にも電波の公平かつ能率的な利用を確保することによって公共の福祉を増進することを目的とするとある。放送や通信に関わる事業を行う私たちは常にこの理念を心にとめておく必要があると実感した。現在の豊かな電波環境を築いた先人の志を受け継ぎ、公共の福祉の一層の発展のために尽力していくことをここに誓う」と話していた。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。