総務省、リチウムイオン電池火災頻発で調査結果公表

 全国の市区町村が回収するごみにリチウムイオン電池(LIB:Lithium―Ion Battery)が混入することにより、処理施設等で火災事故が頻発している状況を受け、総務省は同電池を内蔵した製品の回収・再資源化に関する調査結果を公表した。
 調査は、関係機関によるリチウムイオン電池等(リチウムイオン電池、ニカド電池及びニッケル水素電池)の回収・処理等の取組実態を明らかにし、市区町村におけるリチウムイオン電池等に起因した火災事故等の減少及びリチウムイオン電池等の再資源化の推進を図る観点から、市区町村等における火災事故等の発生状況、リチウムイオン電池等の排出の周知・回収・処理等の取組実態を調査し、関係行政の改善に資することを目的に令和6年5月から7年6月にかけて実施した。
 調査対象機関は、経済産業省と環境省。関連調査等対象機関は全国1558市区町村と15の関係団体等で、うち50市で実地調査、43市で組成分析調査を実施した。
 調査によると、対象50市におけるLIB等製品に起因した火災事故等の発生状況は令和元年度の38市(76%)から5年度の45市(90%)と過去5年間で増加傾向にあり、このうち処理施設の稼働停止等の多大な被害が生じた事例が15市で17件確認された。
 また調査対象43市で組成分析調査を実施し、 不燃ごみ等に混入していた5083製品(うちLIB製品は2854製品)、約1・3トンを分析したところ、LIB等の電池単体のほか、加熱式たばこ、携帯電話、モバイルバッテリー、電気かみそり、電気掃除機などが多く混入していたことが判明した。資源有効利用促進法に基づき、製品メーカーには自主回収や環境配慮設計、リサイクルマークの表示といった責務があるが、LIB製品のうちで電池の取り外しが容易なのは1割程度で、リサイクルマークの表示があるものは5割程度にとどまっていたとしている。
 組成分析調査結果を使って、LIBのマテリアルフローのうち、消費者による排出状況や市区町村の回収・処分状況を試算したところ、住民が排出したLIBの過半数以上で、事業者の自主回収等の枠組みが利用されず、市区町村ごみとして排出されていたことが判明。このうち4~5割程度が、再資源化が想定されない不燃ごみ等に排出されており、 同様にLIB処分量の4~5割に近い水準で、焼却・埋立て又は一時ストックされている状況である可能性が確認されたとしている。
 このほか、調査結果の概要によると、市区町村では、LIB等の回収に当たり、財政的負担、処分事業者の確保などの課題があるとの意見が確認されたほか、処分事業者が見当たらず、埋立て・焼却・ストックしている例も確認された。また保管方法が適切でない事例や、安全な保管・処分方法を求める意見等もあった。
 総務省では、経済産業省と環境省に対し、製品メーカー等の自主回収対象品目の追加、市区町村における適切な回収・処分を推進するための市区町村に対する情報提供、住民のLIB等排出の実態解明の推進などを要請したとしている。

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kobayashi
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