
技研公開 2025~神田 菊文所長に見どころを聞く
NHK放送技術研究所(技研)では、最新の研究成果を一般に公開する「技研公開2025」を5月29日(木)~6月1日(日)までの4日間、技研(東京都世田谷区)で開催する。
今年のテーマは「広がる つながる 夢中にさせる」。メディアを視聴するデバイスや環境が広がり、人と人、人とコンテンツ、人と社会がつながり、実物感・没入感あるれる新時代のメディア体験で多くの方を夢中にさせるという意味を込めている。
「Future Vision 2030―2040(2024年度版)」が描く放送メディアの未来ビジョンを実現するための研究成果18項目の展示で紹介する。
NHK放送技術研究所長の神田 菊文氏に、技研公開2025のテーマ・コンセプト、今年の特徴や見どころなどを聞いた。
―2024年8月に所長に就任されてから1年弱となりますが、これまでを振り返ってどのようなお気持ちでしょうか?
放送技術研究所(技研)は90年以上にわたる歴史のなかで様々な取り組みを続けてきました。諸先輩方の業績をさらに発展させていくことにプレッシャーも感じますが、社会やメディアの未来に貢献できる役割に、大きなやりがいと誇らしい気持ちを感じています。今後も技研が一丸となって、技研のDNAを未来に受け継ぎ、さらに進化させていきたいと考えています。
―技研公開2025のテーマ「広がる つながる 夢中にさせる」に込めた思いを教えてください。
今年の技研公開のテーマ 「広がる つながる 夢中にさせる」には、視聴者の好みや環境の多様化に応じて、メディアを視聴するデバイスや視聴環境が広がり、人と人、人とコンテンツ、人と社会がつながり、実物感・没入感あふれる新時代のメディア体験で多くの方を夢中にさせる、という私たちの想いを込めました。多様化する生活様式や視聴環境に対応し、視聴者が自由に選択してコンテンツを楽しめる時代を想定し、そのイメージを感じて頂けるような展示を用意しています。
―今回の展示の概要と見どころを教えてください。
昨年、技研が目指す目標や方向性を描いた「Future Vision 2030―2040」を改訂し公表しました。Future Visionに描く放送メディアの未来ビジョンの実現に向けて、3つの重点領域、あたかもその場にいるような世界を体感できる「イマーシブメディア」、いつでも・どこでも・誰にでも必要とされる情報を届けるための「ユニバーサルサービス」、基礎研究により未来のメディアを創造する「フロンティアサイエンス」に加え、メディアの直近の課題解決に貢献していく「メディアを支える」技術の研究開発に取り組んでいます。技研公開2025では、これらの研究開発の現在地である最新の成果を18項目の技術展示で紹介します。
なお、昨年度同様に、それぞれの技術が3つの重点領域のどれに該当するのかと、すでに実用段階にあるのか、2030年までの比較的短期間で技術的に実用段階となる技術なのか、2030年以降の技術確立を目指した長期の研究開発を必要とする技術なのか、という研究のフェーズが分かるようにしています。
Future Vision2030―2040で掲げた3つの重点領域と、メディアを支える技術で、次のような展示を実施します。
□イマーシブメディア
・展示番号1「広がるコンテンツ体験」で、3Dディスプレー、触覚・香りディスプレーによる新しいコンテンツ体験を展示します。展示番号3「イマーシブメディア体験」では、ヘッドマウントディスプレー(HMD)なしで没入感のある360度映像を、8K映像のような高解像度で楽しめる展示を用意します。

「半球表示装置」㊧、「30K360度カメラ」
□ユニバーサルサービス
・映像・音声・手話など多様な形態の情報提供を通じて、視聴者の幅広いニーズに応え、誰一人取り残さないインクルーシブメディアを実現する技術を、展示番号2「つながるメディアアクセシビリティー体験」で展示します。
・コンテンツを視聴する手段として、放送に加えてネットの存在が当たり前になったようなサービス環境が広がった世界の中での、情報の信頼性の確保と、放送とネットをさらに連携させて活用する仕組みとなる技術を展示番号6―9「Webベース放送メディア」で紹介します。
・偽情報・誤情報対策として、コンテンツの発信者や制作過程を表す「来歴情報」を、改ざんできない形式で生成・提示することにより、ユーザーにコンテンツの信頼性に関する判断材料を提供することを目指した研究については、展示番号7「Webベース放送メディア② 来歴情報提示技術」で展示します。
・理解や興味につながるコンテンツとの出会いを目指して、コンテンツと人をつなぐ技術の研究に取り組んでいます。膨大なコンテンツの中から自分に役立つものを取捨選択するための技術や、多様なコンテンツへの接触機会の提供を実現する技術を展示番号8「Webベース放送メディア③ コンテンツナレッジ」で展示します。
□フロンティアサイエンス
・新たな没入型体験の提供や豊かなコンテンツ表現を可能とするデバイスや、防災・減災など社会課題の解決に役立つデバイスを実現する研究を進めています。これらの成果を展示番号4「広視野撮影を目指した湾曲イメージセンサー」、展示番号5「自由な曲面を可能にするディフォーマブルディスプレー」で展示します。
(全文は5月26日号3面に掲載)

広視野撮影を目指した湾曲イメージセンサー

自由な曲面を可能にするディフォーマブルディスプレー
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
最新の投稿
放送2025.06.13JPPA AWARDS 2025~経済産業大臣賞はオムニバス・ジャパン・2年連続
実録・戦後放送史2025.06.13「正力松太郎プラン③」
放送2025.06.11TBSテレビ 公衆インターネット回線を活用した放送TS+PTPの長距離伝送・高精度伝送を実施
放送2025.06.11interop shownet~在阪4局が共同MoIP検証を実施