
NHK TECHEXPO~テレビ開票速報を自動読み上げ/絶海の孤島「西之島」を定点カメラ等で調査
5月26日(月)から28日(水)までの3日間、「NHK TECH EXPO 2025」(NHKテックエクスポ2025)を開催された。
今回は、「新しい発想で、魅力的なコンテンツを」「大切な情報を確実に届けるために」「体験・体感してみよう!」をテーマに、全国のNHKの現場ならではのノウハウ・アイデアから生まれた機材やサービスを20項目展示している。注目展示をいくつかピックアップする。
「テレビ開票速報 自動読み上げシステム」は、選挙の開票速報番組の際に当選当確情報や投票数、得票数を表示するシステムに、ラジオ放送で音声のみの票数を読み上げシステムを連動させて、テレビ放送で出した画面のパートを全て自動で読み上げるというもの。
システム導入の経緯は、昨年の衆院選の例で、深夜の1時半から朝の5時まで得票数の画面を、日本全国、全選挙区分ずっと出している。今まではアナウンサーが全部生放送を読んでいた。長時間でもあり、開票速報という性格上、読み間違いに気をつけなくてはいけないので、大変負担だった。
そのためこのシステムを導入することになったが、当初は別々のシステムで、連動していなかった。それにより画面の内容と、これから読み上げる音声が本当に一致してるのか、確認する人が必要だった。それでは工程が増えるので、投票数させることにしたという。
ここでポイントになるのが、立候補者、政党名、投票数を事前にアナウンサーが読み上げ収録することにした。投票数は1桁はゼロから9までを1つ1つ読み上げ、2桁は10から99までを読み上げる。これを3桁、4桁、5桁、6桁と繰り返し行う。そしてそれを組み合わせて投票数を読み上げるもの。数字に加え、全立候補者も大変だが、一度登録すれば数字はそのまま使えるし、立候補者も次の選挙でも使用できるため、大幅に負担を軽減できるという。
AI音声でいいようにも思えるが、選挙という特性上、候補者の名前、発音やイントネーションはデリケートな部分があり、プロのアナウンサーが読むということで全部収録している。今年の参議院選の開票速報でも同システムを利用する予定。(TOP画像)
「定点カメラ・地表探査ローバーで西之島の謎に迫る」は、2013年に噴火して以来、今1年以上噴火を繰り返す西ノ島定点観測カメラや地表探査機を使って調査するシステム。西之島は近くの島(小笠原諸島・父島)から130キロ離れている絶海の孤島で、周りの影響を受けにくく、世界でもまれな環境にある。2020年の大噴火によって火山灰と溶岩により飲み込まれた。その後ドローンを使っての観測や、環境省の調査が年に1回10日間程度あるが、その間に、定点カメラ(360度カメラおよび長期間用)やローバーを使って、地上の様子やサンプルを採取したりした。360度カメラは調査の初日にセットして、最終日に改修する。長期間用カメラはバッテリーおよびソーラーで稼働、半年~1年間の定点観測を行う。
溶岩なので雨が降っても染み込むと思っていたが、大雨が降ると川になることが分かった。鳥が卵を産んで育てようとしていたが、全部流されてしまった。こんなに過酷な環境だったことに、カメラを見て初めてわかったという。また、長期間用カメラは回収時に鳥のフンで真っ白になっている。触るのも嫌になるほどだという。
現在は画角やPZT(パン・ズーム。チルト)を制御することはできないが、将来的には例えばスターリンクなどと連携することにより、リアタイムの観測や制御を実現できるのではないかとした。
また、ローパーはモニターを見ながら遠隔で操作でき、360度撮影や4K撮影ができる。加えてアームを使って島のサンプルを採取することんもできる。
定点カメラ
「ちるるアニメーター!」は、番組のマスコットキャラクター「ちるる」をリアルタイムに操演するためのシステムで、AIを活用し、カメラ映像から人物の顔、手、姿勢を検出する。音声解析によるリップシンクや、操作パネルによる感情操作機能を含む搭載しており、3DCGキャラクターをリアルタイムに操演することが可能。
カメラで撮影した映像をAIで解析して、体の動きを200カ所程度多ラッキングする。マーカーレスなので、どこでもだれでも操演可能だ。また操作パネルによる感情・ギミック操作が可能で、真顔・喜ぶ・怒る・焦る・驚く・疑問・ジト目などを選択できる。さらにPCとカメラだけのシンプルな構成で実現できるので、コストもかからない。
NHKでは「まねっこどーもくん」というシステムがあるが、同システムでは本当にモーションをマネするだけだった。今回、表情のギミックを入れたり、表情に合わせて連動するように開発した。すでに、「週刊情報チャージ!チルシル」(総合毎週土曜日午前9時~9時30分)で使用されている。
ちるるアニメーター!
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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