NHKが2024年度決算発表 受信料減少で対前年度比406億減収

 NHKは、2024年度(令和6年度)の決算を発表した。単体決算のうち一般勘定としては、事業収入は受信料の減収等により、前年度比406億円減(6・2%減)の6125億円。受信料は同426億円減(6・7%減)の6328億円で、その他事業収入は同20億円増(10・0%増)の203億円だった。
事業支出は、特別支出が増加した一方で、退職手当・厚生費や減価償却費の減等により、93億円減(1・4%減)の6574億円となった。事業収支差金は449億円の不足となり、計画通り還元目的積立金を取り崩して補てんした。
 予算との比較では、事業収入が受信料の増収等により、対予算比104億円の増収。事業支出は、退職手当・厚生費や減価償却費の減等により、17億円の予算残となった。
 事業収入のうち受信料は、2023年10月から実施の値下げ等により、前年度と比べて426億円減収の5901億円。年度末の受信契約総数の状況としては、契約総数4067万件に対して支払い数3893件で支払率は78%と前年度と横ばい、衛星契約数は2171件(前年度比17件減)で、衛星契約割合は前年度と同様に53%だった。
 事業支出のうち、国内放送費は番組関係費が34億円増の2565億円、技術関係費が29億円減の725億円で、併せて5億円増の3291億円だった。「公共的価値」の実現に向けて「コンテンツ戦略6つの柱」に基づく番組改定を行い、公共放送ならではの質の高いコンテンツを放送・展開。パリオリンピック・パラリンピックや衆院選など、関心の高いニュース・コンテンツを多角的に伝えると共に、2027年度の収支均衡に向け、将来のソフト削減につながる先行投資等に取り組んだ。また地域向けには、地域に密着したニュースや情報番組を中心に編成し、地域の実情に応じた特集番組を随時編成したとしている。
 国際放送費は、テレビジョン国際放送が3億円減の173億円、ラジオ国際放送が0・3億円増の24億円だった。国内外の視聴者の関心に応える番組や訪日・在留外国人に向けた情報発信など、国際発信力の強化に取り組んだ。また外部プラットフォームへの発信も強化し、効率的・効果的な番組提供に努めたとしている。
 「NHKインターネット活用業務実施基準」、「2024年度インターネット活用業務実施計画」に基づき、インターネット活用業務を実施。国内インターネット活用業務については、地上テレビ常時同時配信等業務とニュース災害情報の発信等業務合わせて139億円、国際インターネット活用業務は27億円で、合計166億円だった。地上テレビ常時同時配信は、原則として総合テレビジョンと教育テレビジョン(Eテレ)で放送している番組全てを放送と同時提供。またパリオリンピックやパラリンピックでは、競技のライブ配信や1日の競技をまとめた動画の配信など、わかりやすい情報提供に努めた。
 営業経費の状況としては、「新たな営業アプローチ」の推進により、巡回訪問を中心とした活動から転換し、効率的な契約・収納活動を行ったことで、対前年度比42億円減となった。受信料収入に対する営業経費の割合を示す営業経費率は前年度と変わらず8・9%となった。
 給与は、要員数の減少等により、前年度比3億円減の1096億円。退職手当・厚生費は退職給付費の減等により、同108億円減の334億円となった。
 建設費(設備投資額)の状況については、情報棟(放送センター建替第1期整備)の建物が2024年10月末に完成し、引き続き放送設備準備を進めると共に、川口施設(仮称)等の建設工事、放送番組設備や放送網設備の整備を実施。全体としては対前年度比385億円増の1258億円だった。放送センター建替えに係る情報棟建設工事は256億円、放送設備整備は471億円で、2024年度末までにかかった累計支出額は656億円、2024年度末の建設積立資産残高は1348億円となった。このほか主な建設費の内訳は、▽地域放送会館の整備(1億円)▽放送番組設備の整備(263億円)▽放送網の整備147億円▽研究施設・一般施設等の整備(117億円)―。
 NHKが放送した番組等をインターネットを通じて一般利用者に有料配信する「NHKオンデマンド」業務と、ビデオ・オン・デマンド(VOD)事業者へ番組等を有料で提供する業務に係る「有料インターネット活用業務勘定」としては、事業収入は登録会員数の増加等による視聴料収入の増により、前年度比7億円増の65億円。事業支出は、配信本数増加による配信経費の増等により、19億円増の56億円となった。事業収支差金は9億円となり、一般勘定の服地収入に繰り入れた。予算との比較では、事業収支が7億円の増収、事業支出が0・8億円の予算残となった。
 受託業務等勘定については、対前年度決算との比較で事業収支がG7広島サミット開催に伴う国際放送センター運営関連業務の受託終了等により、前年度と比べて6億円減の12億円。事業支出10億円を差し引いた事業収支差金2億円は一般勘定の副次収入に繰り入れた。
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 連結子会社13社と持分法適用会社1社を含む連結決算では、経常事業収入が値下げ等による受信料の減収等により、対前年度比441億円減(6・2%減)の6659億円。経常事業支出は、放送事業運営費の減等により、同225億円減(3・1%減)の6992億円となった。これに伴い、経常事業収支差金(営業利益)は同216億円減の332億円の赤字となり、特別収支等を加減した結果、当時事業収支差金(純利益)は406億円の赤字となった。計上事業収入における連単倍率は1・09倍となり、NHKが占める割合が大きいことから、損益の状況はNHK単体と同様の傾向となっている。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。