
アストロデザイン、難波豊明氏が新社長に就任 「ハイエンドニッチは維持しつつ、様々な業界に色々な提案」
アストロデザインの新社長に難波豊明氏が就任した。1977年の創立以来、初めての社長交代となる。
難波新社長にアストロデザインの印象、強み、社長になってやりたいこと・抱負などを聞いた。
―プロフィールをお願いします
難波 私はシャープ株式会社出身で、入社後約33年間技術者として複合機(コピー機)の設計開発に従事していました。その後、シャープ株式会社で複合機事業、サイネージ事業、POS事業、自動車関連や液晶関連の生産自動機、自動搬送装置を製造するマニュファクチャリング事業の各事業責任者を歴任の後、2024年1月にアストロデザイン株式会社に入社しました。
―アストロデザインとの出会いは
難波 シャープ株式会社で8Kの監視カメラの開発の際、一緒に技術開発をしたのが最初の出会いです。2021年1月にサイネージ事業の事業責任者を担当していた時、出資しているアストロデザイン株式会社の社外取締役に任命されたのが直接的な出会いです。
―アストロデザインの中に入られてどういう印象を持たれましたか
難波 非常に技術的に素晴らしいものを持っている会社です。ただし、問題はやはり世間にあまり知られてないということです。これだけ技術者を取り揃えている会社は珍しく、大企業でもなかなかない。1人や2人ならともかく、様々な能力を持つ技術者が多数集まっているので、素晴らしい会社だと思いました。繰り返しになりますが、それをどう使っていくのか、もっと上手に世間に伝えていくのが課題だと思います。
だから私の使命は、いかに多くの人達に弊社の技術を広めていくかにあります。この会社を大きくするというよりは、公共的に存在価値のある会社にしていくというのは大きなミッションかなと思っています。
―アストロデザインの技術とは
難波 例えば8K技術があります。8K技術は単に映像を8K解像度にしただけでなく、様様な要素技術を集積させたものです。色域を広げたり、プレームレートの高速化、膨大なデータ量を扱う技術等様々な技術開発が必要になります。アストロデザインは、8K及び8Kを越える映像を扱う技術やノウハウを豊富に持っています。
また、カメラにはイメージセンサーが使われますが、イメージセンサーから送られてくる電気信号を画像データに変換する半導体が必要となります。この半導体を作っているメーカーは投資を回収するため、多くのカメラメーカーなどに売るのです。そうすると、同じような性能のカメラがたくさんできるわけです。
我々はそうじゃなくてFPGAを使います。FPGAは、設計者がフィールド(現場)で論理回路の構成をプログラムできるゲート(論理回路)を集積したデバイスです。このため、自由自在にいろんなことができるので、例えばこんなふうに処理してほしいというのも比較的自由にできます。もちろん、誰でもできるわけではなく、半導体の技術と、その用途(例えばカメラ)の技術の両方が必要なのですが、アストロデザインはそれを扱える技術を中に持っています。
―8Kの技術は徐々に広がっています
難波 8Kはテレビ放送という形では、残念ながら大きく広がっていません。しかし
テレビ放送以外のところで非常に多くの技術が生かせる場が増えてきました。
例えば美術館・博物館でも多く使用されており、中には8Kの非圧縮を4台並べて32Kの画像を扱うケースも出てきています。PCがいくら速くなったとはいえ、まだまだそこまではいかない。
また、スタジアムでバックスクリーンやディスプレイに同時に色々な違う画像を流すという技術。それを信頼性が高く組み上げる技術も持っています。
今街中に監視カメラがあふれていますが、解像度はほとんどHD以下なんですね。そこに高精細の監視カメラを入れようとしたら、何が起こるかというと、何が起こるかというと、まず動かない、画像が見られないということが起こります。我々はとある施設の中に、8Kのカメラ32台を同時に見られるようなシステムを組んだりしています。
さらに、公営競技の着順掲示板や写真判定の表示にも我々の技術が使われています。遅延なく、間違いが許されない場面で、瞬時に表示する装置が使用されています。
ここでポイントになるのが遅延です。一つ遅延すると全部連鎖して遅延していってしまう。大規模な高精細の画像を一気に扱える力があるから、遅延もなくなります。カメラで撮影して映し出すまでの時間は約3msです。遅延はよく1フレーム(約16・67ms)とか2フレーム(約33・33ms)とか言われますが、ほとんどわからないレベルです。
変わったところでは、高速道路のトンネル検査があります。高速道路のトンネルでは、事故を防ぐためにひび割れの調査をしています。0・2ミリ以上のひび割れを見つけるのですが、高速道路を通行止めにして人手で行っています。これを車に8Kカメラを複数台搭載して、走行しながら撮影します。時速100kmで走行しても、0・15ミリのひび割れを検知できます。また、高速道路を通行止めにする必要もありません。
この他、医療分野への展開も考えています。遠隔医療も一時話題になりましたが、普及が遅れています。その原因は、医療現場をクリアに写す高精細モニターと遅延です。医療用モニターには8Kクラスが必要ですし、遅延が大きいと手術自体ができなくなってしまいます。ここでも我々の技術が生かせると考えています。
―最後に今後の抱負を
難波 鈴木会長がいつも言われていた「ハイエンドニッチ」。非常にハイエンドで、非常にニッチな機械を開発している会社です。これは継続してやっていく、ただしもう少し幅広く広げていきたいというイメージを持っています。
弊社のキャッチコピーは「最先端のその先に アストロデザイン」です。これは私が考えたのではなく、社員の皆さんから募集して決定したものです。もっと幅広く、せっかくこれだけの技術を持っているのだから、様々な業界に色々な提案をしていきたいと、そういうことを前提にスローガンを募集しました。
まさにこのキャッチコピーを実現するために、私は全力を挙げて努力していきます。
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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