坂本龍一 NHKドキュメンタリー イタリア賞受賞

世界でもっとも歴史と権威のある放送番組国際コンクールの一つである「イタリア賞」の授賞式が10月24日(金・現地時間)、イタリア・ナポリで行われ、NHKスペシャル「Last Days 坂本龍一 最期の日々」(初回放送2024年4月7日)が、すべての出品作品の中からもっとも文化・芸術面で優れた作品に贈られる「イタリア共和国大統領特別賞」を受賞した。さらにテレビ・パフォーミングアート部門で部門最優秀賞にあたる「イタリア賞」も獲得し、ダブル受賞となった。

 

「イタリア賞」は、1948年にイタリアの公共放送RAIが創設。第77回を迎えた今年は、建都2500周年を記念するイベントの一環としてナポリで開催され、世界60の国と地域、89の放送機関から合わせて238作品が出品された。

 

NHKスペシャル「Last Days 坂本龍一 最期の日々」は、YMOのメンバーとしてテクノ・ミュージックで世界に衝撃を与え、その後も独創的な音楽で多くの人の心をとらえた坂本龍一氏の最晩年を捉えたドキュメンタリー。坂本氏の日記には「死刑宣告だ」「安楽死を選ぶか」といった闘病生活の苦悩や、「音楽だけが正気を保つ唯一の方法かもしれない」「残す音楽、残さない音楽」といった、音楽を深く思考する本音が刻まれていた。また、YMOのメンバーとの知られざる交流や、最後になってしまった未発表の曲も描かれている。

 

イタリア賞が発表した審査講評「本作は、抑制のきいた美しい映像表現、静寂の巧みな使い方、そして坂本氏の日記や家族・友人の声の断片を通して、生命と芸術の儚くも美しい輝きを描き出している。命の終わる瞬間を描きながらも、「生きるということを見つめることへと昇華させたこの作品は、優美で、人間的で、そして深い希望に満ちている。創造とは、まさに生命が絶える際にも強く輝くのだということを私たちに思い出させてくれる作品である」。

 

今回の受賞を受け制作統括の松宮健一氏は「世界各地で凄惨な争いや災害が起きている今、坂本龍一さんが残した音楽は人々の苦悩や絶望を癒やしている。この番組が世界に認められたことを名誉だと思う一方で、より大きな責任を背負ったと感じている。テレビ・ドキュメンタリーの役割とは何か、より深く考えていきたい」とのコメントを発表した。

 

なお、この番組はすでに2024年ローズ・ドール賞(アート部門)を受賞しており、2025年国際エミー賞では、アート番組部門でノミネートされている。

 

NHKスペシャル「Last Days 坂本龍一 最期の日々」©NHK