
イームズロボティクス、レスキューKショートセミナーを開催
「第10回 Japan Drone 2025/第4回 次世代エアモビリティEXPO 2025」(主催・一般社団法人 日本UAS産業振興協議会〈JUIDA〉、共催・株式会社コングレ)は、6月4日(水)~6日(金)の3日間、幕張メッセ展示ホール5・6(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)で開催した。Japan Drone/次世代エアモビリティEXPOは、新たな産業創出と国際競争力の強化に貢献する展示会である。Japan Droneは2016年の初開催以来、今回で第10回目を迎えるドローンに特化した国内最大規模の専門展示会。主催者側では様々な課題解決に向けた具体的なビジネスマッチングの場を提供し、社会基盤整備を促すと共に豊かなくらしの実現に向けたスマートシティの推進に積極的に取り組むとしている。同時開催展である次世代エアモビリティEXPOは新たな空の移動革命として期待される「空飛ぶクルマ」の社会実装に向けた取り組みの実現を支援し、新しい産業の創造に貢献することを目指す。
イームズロボティクスは、出展ブース内で最新技術や導入事例、今後の展望を紹介するショートセミナーを開催した。
①「社会実装をリードする、福島県×イームズの挑戦とは」=福島県からドローンが飛び交う便利な社会を作る!にはをわかりやすく紹介。福島県だから、イームズロボティクスだからできる取り組みを紹介
②「能登半島地震の災害対応から生まれた新たな〝災害対応ドローン〟」=能登半島地震の災害対応や、国や自治体、医療機関などとの防災訓練に数多く参加するイームズロボティクスだからこそ、開発できる機体がある。求められる災害対応や、機体性能、運用の課題などを紹介
③「物流・防災・地域福祉を一体化する、新たなコミュニティデポモデル初公開」=イームズロボティクスは、新しい拠点として「コミュニティデポ」を提案している。公民館のような地域の集会所に複数企業の物流やドローン配送を組み合わせた新しいハブ機能を持たせるコミュニティデポを紹介
④「制度を知り尽くし、空を設計する。―型式認証申請・取得からカスタマイズ展開まで、イームズロボティクスの最前線―」=第二種型式認証を取得したE6150TCの実例、現在申請中の第一種型式認証機「E600-100」の開発を通じて、制度と製品開発の最前線を紹介。事業参入・導入検討における〝次の一歩〟を紹介。
今回はその中から②「能登半島地震の災害対応から生まれた新たな〝災害対応ドローン〟」の内容を紹介する。イームズロボティクスの曽谷英司代表取締役社長が講演した。福島県会津若松市出身で、テレビユー福島アナウンサーとしても活躍した小野美希さんがMCを担当した。
――国や自治体、医療機関などとの防災訓練に数多く参加するイームズロボティクスだからこそ開発できる機体についてご紹介してください。最初に能登半島地震など災害時にドローンがどんな役割を果たせるのかが注目されていますけど、実際に災害対応をされたということで災害支援の課題、求められるドローンの活用について、教えてください
「昨年正月に起きた能登半島地震では、実際に私も石川県の輪島まで、ドローンが様々な活用ができるのではないかと行きました。20社以上のドローン関係の企業が実際に現地に入って、様々な形でドローンを飛ばした初めてのケースになったと思います。孤立しているところに救援物資を運んだり、被害状況を確認したり、土砂災害を測定したりといろいろなドローンを飛ばしたというのが能登半島地震の事例になります。ただ、実際に飛ばすとなると、冬場の日本海で風速が15㍍以上で飛べないとか雪が降っている、通信できない、電気が通らない形で非常にドローンを飛ばすには劣悪な環境だったとことを経験しました。携帯電話も繋がらないので、孤立している集落の方々が何人いるのかわからない、連携が全然取れませんでした。そういったところに早く何か物を届けるにはどうしたらいいのだろうと現地で感じました」
――能登半島地震が発生する前から、様々な想定をしながら研究を重ねてドローンの開発を進めてきたと思うのですが、それでもやはり実際に現場に行くと、こういったことが起きるのかというようなことがわかったのですね
「我々も防災訓練などでドローンを飛ばすのは何回も何回もやっていたのですが、実際の現場は全然違うと体験した形でした。実際に現場で感じたことを活かして開発したものが『レスキューK』です。Kは神奈川県のKで、神奈川県の公募の中で、災害専用ドローンを開発した機体になっています」
――現場で感じたことでどのようなことを活かした機体になるのでしょうか
「実際に能登半島では、物流用のドローンが飛んでいる、カメラ搭載のドローンが飛んでいる、それぞれ機能的にはバラバラの機体があっちに行ったり、こっちに行ったり飛んでいました。それから孤立集落と早く連携を取るために最初に衛星電話を届けるのが一番良いのではと現場で話し合ったこともありました。『レスキューK』の機体は、捜索に必要な可視光カメラと赤外線カメラが付いています。それから衛星電話をパラシュートで4台落とすことができる機構も付けています。衛星電話を落としたらそこに対してスピーカーも付いているので、会話もできます。将来的には衛星通信ができる形にします。LTEが入らない場所でも通信ができる形にすればより使えるのではと考えています。
――カメラだったり衛星電話で会話ができるとかなり効果がありますね
「今までもスピーカーだけの実証や、赤外線カメラだけの実証については何度もおこなってきましたが、実際に現場で感じたいくつかのことが、トータルで1台で行えたらと思って開発しました」
――「レスキューK」は今後、どういった場面、機関で活用する予定でしょうか
「日本には〝災害大国〟と悲しい呼称があります。『レスキューK』は、様々なところで災害時に活用できると思います。今回のような大規模地震、土砂災害など様々な災害時に使えます。自治体の方々が災害時になって、急にドローンを使うのはなかなか難しいので、平常時に普通にカメラだけで点検をするとか、物流も少し集落から離れている家に荷物を運ぶといった普段からそういった運用をすることで、災害時にも活用できると考えています」
――「レスキューK」はイームズロボティクスの「E6150TCをベースにして開発したと聞きました
「型式認証2種の機体をベースに開発をしていますので、正確にはカスタム仕様なので型式認証とは外れますが、型式認証並みの信頼性はある機体になります」
――災害対応におけるイームズロボティクスの強み、現場での反響を教えてください
「能登半島地震での経験を生かして、今回私どもが出展しているブースの福島県のロボットテストフィールドは、災害時のドローン活用のガイドラインを3年前に作っています。そのガイドラインを能登半島地震の経験を生かして、さらにレベルアップしようという動きがありますので、ガイドラインが改訂されたらそれを全国の自治体の方々が見ていただく。そのガイドラインに基づいて各自治体で実証していただく。そうすると、災害時に実際にドローンが飛んで、災害復旧が進む環境がさらに高まると思います」
――自治体によって抱えている課題は様々だと思います。自治体ごとにどういったことが必要なのか、どうしたらそういったことをイメージしやすくなるのでしょうか
「能登半島地震では半島があって、そこに幹線道路が1本しかなくて、普段1時間で行けるところを5時間かけていかなければなりませんでした。似通った地形の自治体の方々は災害時についての課題について既にいろいろ検討をされています。今回、実は福島県から、ある事業採択を受けたのですが、福島県は広域災害があったときに250ヵ所の孤立集落が生まれるという。その250ヵ所に対してドローンを使って、どうやって物資を届けるかというのを調査することを今回行うことになっています。同じようなことが各自治体にも必要になってくると思います。各自治体に対して何かあったときには、どこが孤立するか、そこに対してドローンがどこまで物を運べるか、ご提案できる形にしていかなけばと考えています。当然我々1社だけではできない部分あると思いますので、国内の様々なドローンメーカーと連携して、それぞれ得意なドローンを使って、様々な自治体の課題を解決していくような必要性があると思います。我々は業界全体とそういったことをサポートできる形にしていきたいと考えています」
――災害はいつ何が起こるかわからない中で、こういった取り組みはお話を伺ってとても心強いと思いました。、さらに今後に期待したいなと思いました
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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