愛媛大学がグランプリ獲得 第24回3D・VRシミュレーションコンテスト オン・クラウド

 フォーラムエイト(東京都港区、伊藤裕二代表取締役社長)は11月19日(水)~21日(金)の3日間にかけて、品川インターシティホールで「第19回FORUM8デザインフェスティバル」を開催した。19日には、同社開発のソフトウェア「UC―win/Road」を活用した高度なVR作品を集めた「第24回3D・VRシミュレーションコンテスト オン・クラウド」の表彰式が開催され、グランプリに当たる最優秀賞には、愛媛大学による「メタバース教育プラットフォーム IMSS(インフラメンテナンス・スマート・シミュレーター)」が選ばれた。
同ソフトウェアは、都市計画や土木事業の設計データから3D都市モデルを作成し、景観検討や災害シミュレーションなどを行うことができる3次元リアルタイムVRソフトウェア。主に、3Dモデルの作成と編集や豊富なデータ連携、運転や災害、避難、交通流シミュレーションといった機能を備えており、道路設計や交通シミュレーション、避難誘導の検討など、幅広い用途に活用されている。 とりわけ最近ではXR、AI、センシング等を活用した高度な事例も目立っている。
 同コンテストは、国内外からUC―win/Roadによる高度なVRデータ作品を集めて優れた作品を表彰するコンテスト。2002年のUC―win/Road「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー」受賞を機にスタートし、FORUM8デザインフェスティバルのメインイベントとして毎年開催されて今年で24回目を数える。2011年からはVR―Cloudによるクラウド一般投票が選考プロセスに追加され、2024年にはメタバニアF8VPSによるメタバースでの投票を行い、コンテストを盛り上げてきた。また2022年からは、新アワードとして「VRシステムオブザイヤー」も創設された。UC―win/Roadだけでなく、メタバニアF8VPS(FORUM8メタバース)によるソリューションを最大限に活用することで、データを通じた高度なコミュニケーションを実現し、スマートシティやDXを加速させる最先端のVRやシステムの応募に期待を寄せている。
 今年は、日本大学理工学部土木工学科教授の関文夫氏を審査委員長に、NPO地域づくり工房代表の傘木宏夫氏と、名古屋大学未来社会創造機構客員教授の原口哲之理氏を委員に迎え、委員による審査会とクラウド一般投票を経てノミネートされた15作品の中から最優秀賞、優秀賞、アイデア賞、エッセンス賞、各審査員による特別賞の受賞作品を選考した。
 最優秀賞を獲得した、愛媛大学の「メタバース教育プラットフォーム IMSS」は、RC橋梁の3D点群・BIM/CIM可視化・損傷劣化の近接目視点検シミュレーションなどを通じて、オンライン学習で土木技術者のインフラ点検スキルを学習するシステムで、様々なインフラデータが蓄積され,インフラミュージアムとしても構築されている。
 審査委員長の関氏は、「橋梁点検メンテナンスは全国で行う必要があり、人材育成は喫緊の課題だった。それをリアルにクラックからコンクリートの打音まで全てをワンパッケージで人材育成できるシステムを開発したことに驚いた。全国の土木系の学生に参照してもらうとともに、橋梁台帳としても活用できる利点を高く評価した」と講評した。
 受賞した愛媛大学の代表者は「こんな大変な賞をいただき舞い上がっている。SIPの中で取り組んでいるが、世の中にフライトシミュレーターがあるならインフラメンテナンスのシミュレーターがあってもいいという話からスタートした。まだ道半ばだが、もっと高い高みを目指していきたい」と喜びを語っていた。
 伊藤社長と関氏、(一財)VR推進協議会理事で日本テクノス名誉会長の相田龍三氏が審査員を務めたVRシステムオブザイヤ―には、松江土建株式会社による「GNSSによる3DVR除雪ガイダンスシステム」が選ばれた。
 同作品は、RTK―GNSS測位システムから取得した位置情報とUC―win/Roadを連携した3DVRによる除雪ガイダンスシステムを構築。除雪グレーダ内に設置されたモニタで、実際の走行位置と連動したVR空間の映像を表示できる。マンホールや橋梁ジョイント手前等での注意喚起を実現している。縁石や車線境界の位置を視覚的に確認可能となっている。
 関氏は作品全体を振り返り、「今年の作品には三つのテーマが見えた。一つはリアルタイムレンダリング、二つ目はデジタルツイン、三つ目がメタバース。いずれもVRでは定石だが、この三つが今後のVRの方向性と思えるくらいしっかりしてきた。もう一つ気付くべきはUC―win/Roadが賢くなっている点。今後は動く属性が組み込まれてより自然に、よりリアリティを持ってくる。『賢くなってる』が今年のキーワード」と総括していた。
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 このほかの受賞対象と作品は次の通り。
 【準グランプリ(優秀賞)】
 ▽東京都台東区「大規模災害直後の帰宅困難者等初期避難シミュレーション」▽Advanced Institute of Convergence Technology「UC―win/Roadを活用した自動運転リスク予測モデル検証SILS」
 【アイデア賞】
 ▽秋田県男鹿市「脇本城跡観光メタバース・AR体験コンテンツ」▽三井共同建設コンサルタント株式会社「『ChatGPT × UC―win/Road』~人間中心設計の観点からの都市計画立案におけるAI活用提案~」
 【エッセンス賞】
 ▽関西大学総合情報学部「関大総情・メタバースオープンキャンパス」
 【審査員特別賞】
 ▽デザイン賞(関文夫氏)=愛知県豊田市「デジタルツインによるミライのまちづくり」▽地域づくり賞(傘木宏夫氏)=岐阜県恵那市「東濃地域次世代モビリティ都市イメージ」▽Traffic simulation賞(原口哲之理氏)=株式会社オリエンタルコンサルタンツ「ミクロ交通SIMとDSのリアルタイム連携による道路改良検討」

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。