防災科研など、高専防災減災コンテスト
国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研、茨城県つくば市、寶 馨理事長)は、1月24日(土)につくば国際会議場(茨城県つくば市)で「第4回高専防災減災コンテスト 最終審査会」を開催した。
共催は独立行政法人国立高等専門学校機構、公益財団法人国際科学振興財団。後援は文部科学省、一般社団法人全国高等専門学校連合会、NHK。協賛は応用地質、関電工、三菱電機エンジニアリング。
高専防災減災コンテストは、高等専門学校に在籍する学生(高専生)が、防災減災に関する地域の社会課題を取り上げ、その解決アイデアと検証過程を発表・評価する取り組み。実社会に根ざした活動を通じて、高専生の主体性や創造力の育成を図り、若い力による地域の災害対応力・回復力の向上を目指すもの。
最終審査会では、全国の高専から書類審査を通過した10チームがつくばに集い、プレゼンテーションを行った。各チームが地域の防災力・減災力向上に向けて取り組んだアイデアと検証活動の成果を発表し、審査と各賞の表彰が行われた。
当日は午前11時30分からポスターセッションが行われた。午後1時30分から開会・主催者挨拶・コンテスト趣旨説明、協賛社紹介が行われた。
独立行政法人国立高等専門学校機構の谷口功氏が次のように主催者挨拶を行った。
全国に国立の高等専門学校が51ありキャンパスは55あります。その取りまとめを行っている組織に高専機構というのがあって、そこの理事長をしております谷口です。今日はこの素晴らしい会にお集まりいただいてありがとうございます。学生諸君も本当に頑張ってくれて、40ぐらいの発表の中から選考されて、最終に残ったのがここにあるような10チームで、これから素晴らしい発表があると思います。
減災防災、これは世の中で本当にものすごく大事なことで。今、いろいろな形の災害が本当はないことがいいのですが、あちこちで起こっています。それを少しでも被害を少なくする、防げればもちろんいいということです。高専の学生さんは外国に行って、今、外国にも高専をたくさん作ろうというので、どんどん外国に高専を作り始めているような状況です。そして高専ではどういう思想を育てているのですかと、外国で必ず聞かれます。いろいろな説明をさせていただいていますが、いちばん皆さんにわかってもらえるのは、皆さんだって病気になったら病院に行くでしょう。病院に行って治していただいたり、あるいは病気にならないようにいろいろとやってもらうでしょうという話をしました。社会だって同じです。社会だって正しく発展していってもらわないと困る。みんなが幸せになるように、そういう発展をしてもらわないと困るんだから、そういうことができるような、いわば人のための社会のためのお医者さんを作っていますと説明をすると、あっわかった、そういうことですか。外国に行ったら、それだったらうちの子を鍛えてください。そういう話になります。社会のお医者さん、ソーシャルドクターと言いましょうという形でやっていると、本当に世界の中で今、高専とソーシャルドクターが広がって、世界でちゃんと話が通じるようになりました。
まさにこの防災減災をやってくれている学生さんは、社会のためのお医者さんなんです。どうやったら災害が防げるか、どうやったら災害があった時に被害をとっても少なくできるか、いろいろな方々のご支援も得ながら、まさに社会のいろいろな病気というわけではないが、災害を防ぐために、あるいは何かあった時に、それを少しでも軽減したい、そういうことを考えて、どうやったらいいかを、若い学生さんたちが本当にアイデアを出してやってくれている中で選ばれたこの10校の最終のコンテストとなります。学生さんがこんなに頑張ってくれたことを聞いていただくこともとてもいいことだと思います。
もちろん災害は無い方がいいんです。ない方がいいけれども、あってもちゃんとそれに対応できる、そういう気持ちをぜひ市民の皆さん、関係者の皆さんにみんな持っていただいて、住みよい暮らしやすい社会になるように、みんなが幸せになるようにというそのためのコンテストですとご理解くださいと申し上げて、開会のご挨拶に代えます。
午後1時40分から各高専チーム最終発表(各チーム10分)が行われた。
10チームと発表内容は次の通り。
▽函館工業高等専門学校(北海道函館市)「『ココロボ×電波でつながる函館プロジェクト』~函館高専×FMいるかから始まる防災ネットワーク~」▽福島工業高等専門学校(福島県いわき市)「毎日に防災を!防災カウントダウンカレンダー」▽福井工業高等専門学校(福井県鯖江市)「災害時孤立地域の自主避難ビニールハウスの謎を解き明かす。そしてその先へ」▽福井工業高等専門学校(同)「ベストなベスト ~身に着ける安心~」▽豊田工業高等専門学校(愛知県豊田市)「WAS(Water Break Damage Assessment System)断水被害調査システム」▽和歌山工業高等専門学校(和歌山県御坊市)「事後対策型防災杖「用心棒」の開発」▽和歌山工業高等専門学校「風船を用いた耐震化『BAL―SS』」▽鹿児島工業高等専門学校(鹿児島県霧島市)「卵の殻を用いたシラスの改良~廃棄物削減を目指して~」▽沖縄工業高等専門学校(沖縄県名護市)「災害発生時の公衆通信網遮断時でも使用できるスマートフォン~アドフォン~」▽沖縄工業高等専門学校(同)「AI音波消火器を搭載したドローンSOFIA」。
午後4時から表彰式・講評が行われた。
各賞受賞校は次の通り。
文部科学大臣賞は沖縄工業高等専門学校の「災害発生時の公衆通信網遮断時でも使用できるスマートフォン~アドフォン~」が受賞した。
同作品のチームコメントは次の通り。
「私たちのチームは4年生1人、2年生4人の5人で全員が情報通信システム工学科で、学科の強みを活かしました。私達が開発したアドフォンは、昨年先輩方が開発したアドホック防災ヘルメットを改良したもので、様々な人に届きやすく、使いやすいをモットーに、軽量化や、低価格化を実現したほか、通信技術の向上やアプリの開発も行いました」。
主な概要は次の通りとなっている。
スマートフォン従来の機能を使いながら災害用ヘルメットの強みを詰め込んだアドフォンを開発した。アドフォンをもつ被災者は付近のアドフォンと無線回線が自動的に接続され、被災者の間で情報がバケツリレー方式で次々に伝わり、情報通信ネットワークが自動的に拡大していく。アドフォンを用いた実験・評価・デモンストレーションを行い、ステークホルダーとの対話を通じて機能改善や災害時への適応方法の明確化を図る。
アドフォン本体の開発では、本体はモバイルバッテリー半分程度の大きさで、軽量なため普段から持ち運ぶことを可能にした。本体(アドフォンモジュール)にはRaspberryPiを用いた。スマートフォンはアドフォンモジュールにBLEで接続される。また、GPSモジュールを接続し位置情報の通信も可能だ。そしてアドフォンでは、スマートフォンからの電力供給でも動く。
また、アドフォン独自のアプリとAIの開発では、自由度の高いメッセージの送受信を可能にした機能や、GPSモジュールとアドホック通信を組み合わせ、通信網遮断時でも使用できる地図の導入を行った。被災度判断AIも搭載した。
国立高等専門学校機構賞は豊田工業高等専門学校の「WAS(Water Break Damage Assessment System)断水被害調査システム」が受賞した。防災科研賞は福井工業高等専門学校の「災害時孤立地域の自主避難ビニールハウスの謎を解き明かす。そしてその先へ」が受賞した。国際科学振興財団賞は福井工業高等専門学校の「ベストなベスト ~身に着ける安心~」が受賞した。NHK賞は和歌山工業高等専門学校の「風船を用いた耐震化『BAL―SS』」が受賞した。このほか、三菱電機エンジニアリング賞は函館工業高等専門学校、応用地質賞は鹿児島工業高等専門学校、関電工賞は沖縄工業高等専門学校の「ドローンSOFIA」が受賞した。
筑波大学システム情報系社会工学域教授で審査委員長の川島宏一氏が次のように講評を述べた。
今回、2つ驚かされたことがあって、ひとつは、実は事前審査を見た時に、今年はどうかなと若干思いました。その懸念を見事に払拭していただきました。もうひとつはプレゼンテーションのメインプレゼンターの男女の比率が50対50でした。私は高専生というと男子が多いかと思っていましたが、見事に高専での女性の活躍がここまで見事に進化していることは本当に嬉しく思いました。
そして、このコンテストの目玉、いちばんすごいところは、実際に現場に行ってそれに取り組んでおられる専門家の方々とか、あるいは課題を抱えている人に交流して、話して、そこで実験してもらうという社会実装の手前のところまで行っていて、それを翻してもう一回提案しているところだと思います。
いずれも着眼点や着想は非常に重要だと思いました。文部科学大臣賞の沖縄工業高等専門学校の作品はいわゆるアドホック通信のチェーン型で、これは市民をつなげる力がある。人間でしかできない、大規模に協力し合えるという、人間の力を巻き起こす意味で非常に素晴らしいと思いました。
今年の特徴については、私が感じたのはAIが入ってきました。AIで画像診断などの作品があって、今はデジタルトランスフォーメーションからAIトランスフォーメーションというのも言われています。あらゆる分野でAIが様々な問題解決を支えてきているのですが、AIではできないけれど、人間だからこそできる。人間の能力がおそらくいつまでも残っていくであろうし、残っていってほしい。私はこのコンテストで鍛えられている人間の2つの力があると思います。第一は、何が問題なのか、何が重要で価値のある問題なのかを探索して、それを特定する力。なぜ重要かというと、サイバー空間の中ではまだ共有されてない、リアルで即時的で、本当にホットなところに人間の関心は行くし、そこをキャッチできるという人間の人間ならではの能力。それをサイバー空間以上に人間と人間のコミュニケーションが創造する、それを感じるという能力があるので、これも皆さん現場で探索して、ある問題だと思ったけど、違う問題に転換したり、全く違う視点に返ってと、ヒットする琴線に触れる問題はないかを特定する力です。それからもうひとつは、その問題を発見した後で、関係者とコミュニケーションを密にとって、人間の共感を巻き起こす。そこから協力を得るっていう力です。そのコミュニケーションの力こそが人間の力だと思います。
防災減災というテーマは、日本が災害が多いだけに、日本こそが実は世界のフロントランナーになり得る分野です。圧倒的に日本が優位に立てる。実験現場があるし、そこには実際のお客さんがいます。そういう意味で、この分野に皆さんが取り組んでいることは非常に将来性が高く、それはビジネス的にも価値があることですし、皆さんの発想も鍛えられていると思います。
今思っている頭の中で〝発酵〟している。それをもう一段進化させて、その次につなげていただきたい。
閉会の挨拶を防災科学技術研究所の寶馨理事長が行い次のように述べた。
去年まではプレゼンテーションがビデオプレゼンだった、あらかじめ撮っているので、生徒さんたちもあまり緊張しなくていいわけです。時間的な制約も考えなくていいんですが、今年は自らプレゼンしていただくスタイルになりましたので、皆さん、大変緊張されたと思いますが、その分緊張感があっていい審査会になったのではないかと思います。
皆さん、それぞれ様々なアイデアを出していただいて、若い方々の発想力、本当に毎年感心するのですが、今後も大いに発想を膨らまして防災減災に役立つようなアイデアを出してもらいたいと思っています。
自助、公助、共助という言葉があります。最近は互助を入れて、互助共助と言ったりもしますが、互助は家族とかお隣さんとかそういう狭いところです。共助はもうちょっと広い範囲になります。皆さんのはそのどれに当たるんだろうかと考えると、では誰と相談しようかと、いろいろ発想が湧いてくると思いますから。防災減災のアイデアを思いついた、これは何に役に立つんだろうか、誰に役に立つんだろうか、将来どういうところに役に立つんだろうか、そういう広がりを持って、考えていただければと思っています。
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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