29年度電波の利用状況調査結果を公表 総務省

 総務省は5月25日、平成29年度電波の利用状況調査の調査結果を取りまとめた。また、その結果を踏まえた電波の利用状況調査の評価結果(案)を作成。パブリックコメント(意見公募)を6月25日まで行う。 電波の利用状況の調査及びこれを踏まえた電波の利用状況の評価は、15年から電波法(昭和25年法律第131号)第26条の2の規定に基づき、周波数割当計画の変更など電波の有効利用に資する施策を総合的かつ計画的に推進するため、総務省が毎年実施しているもの。調査は、次の周波数帯ごとに3年を周期として実施。▽714MHz以下の周波数帯▽714MHzを超え3・4GHz以下の周波数帯▽3・4GHzを超える周波数帯。 調査対象は714MHz以下の周波数帯を使用する無線局であって、平成29年3月1日現在、国、地方公共団体及び民間が開設しているもの。総務省は、意見募集の結果を踏まえ、平成29年度電波の利用状況調査の評価案について速やかに電波監理審議会に諮問し、結果を公表する予定。 714MHz以下の全体的な調査・評価結果によると「本周波数帯の全体的な評価としては、適切に利用されていると判断できる」。全体としての主な特徴は①周波数区分ごとの無線局数は、335・4MHz超714MHz以下の周波数の電波を使用する無線局が最も多く、全体の約56・4%を占め、次いで、50MHz超222MHz以下の周波数の電波を使用する無線局が全体の約26・5%を占めていた②各総合通信局における無線局数の推移は、中国局と九州局では約0・6%減少し、関東では約11%の増加、その他の局は数%ほど増加傾向がみられ、全体としては、増加傾向にあった③電波に関する需要動向については、簡易無線局は50MHz超222MHz以下の周波数区分で減少している一方で、335・4MHz超714MHz以下の周波数区分で大幅に増加している。また、222MHz超335・4MHz以下の周波数区分では、防災行政無線や消防用無線の移行先であることからこれらの無線局が大幅に増加していた。 各周波数区分ごとの調査・評価結果では、26・175MHz以下の周波数帯では、調査結果のポイントが▽本周波数帯の無線局数について、全体の約98%がアマチュア無線(31万7622局)で利用されている。アマチュア無線HFは減少傾向にある一方で、アマチュア無線LFは増加傾向にあった▽その他無線システムについては、大半の電波利用システムは減少傾向であるが、路側通信(特別業務の局)MF等は増加傾向にあった。 ここでの評価結果のポイントは▽本周波数帯は、電離層反射等による長距離伝送が可能であるという特性を有し、中波放送、短波放送、航空通信システム、船舶通信システム等の陸上、海上及び航空の各分野の多様で重要な電波利用システムで利用されていること、また、船舶無線及び航空無線のシステムでは今後も一定の需要が見込まれていることを踏まえ判断すると、適切に利用されていると認められる。 26.175MHz超50MHz以下の周波数帯では、調査結果のポイントが▽本周波数帯の無線局数について、全体の約82%がアマチュア無線(22万8241局)、全体の約17%が船舶無線(4万7496局)に利用されているほか、海洋レーダーVHFやラジオ・ブイ等の船舶関係の通信に利用されていた▽大半の無線システムは減少傾向にあるが、平成25年に制度整備を実施した海洋レーダーVHFやラジオ・ブイでは、増加傾向であった。 ここでの評価結果のポイントは▽船舶無線の局数は減少傾向にあるが、漁船の安全操業等を確保するためには船舶無線は必要不可欠であり、今後も一定の需要が見込まれる▽船舶通信システム等の重要な電波利用システム、アマチュア無線及び新たな海洋レーダーVHFなど広く利用されているとともに、ラジオ・ブイ等の一部の電波利用システムでは増加傾向が見られることを踏まえ判断すると、適切に利用されていると認められる。 50MHz超222MHz以下の周波数帯では、調査結果のポイントが▽本周波数帯の無線局数について、全体の約49%がアマチュア無線(64万249局)、約11%が簡易無線(11万3755局)に利用されているほか、陸上運輸用無線や列車無線等の多様で重要な電波利用システムに利用されていた▽150MHz帯アナログ方式の移動系防災無線は、260MHz帯デジタル方式へ移行しており、局数が減少傾向にあった。FM補完放送は平成26年の制度整備以降、置局が進められていた。そのほか、列車無線やオーブコム等、一部増加傾向が見られるが、大半の無線システムは減少傾向であった。 ここでの評価結果のポイントは▽鉄道等の公共分野の自営通信のほか、FM放送等の多様で重要な電波利用システムに利用され、また新たに整備されたFM補完中継局の設置状況等を踏まえ判断すると、適切に利用されていると認められる▽放送中継用無線(固定局)の受信機の通過帯域幅の調査結果、占有周波数帯幅の許容値に比べ相当広い通過帯域幅をもつ受信機を使用しており、必要以上に他の無線局の周波数利用を妨げている場合があることから、デジタル方式への移行等を推進する必要がある。 222MHz超335・4MHz以下の周波数帯では調査結果のポイントが▽本周波数帯の無線局数について、全体的に無線局数は増加傾向にあり、特に260MHz帯は、150MHz帯消防用無線及び60MHz帯・150MHz帯・400MHz帯防災行政無線の移行先であって、消防用デジタル無線(陸上移動局・携帯局)が前回調査より約4万9千局が増えているなど、消防用無線(7万9332局)、防災行政無線(6万2076局)ともに、順調に移行が進んでいた。 ここでの評価結果のポイントは▽本周波数帯は、他の周波数帯を使用する消防用無線や防災行政無線の移行先であり、今後も無線局数の増加傾向は続くと見込まれているとともに、防災行政無線、消防用無線、航空通信システム等の多様で重要な電波利用システムに利用されていることを踏まえ判断すると、適切に利用されていると認められる▽280MHz帯電気通信業務用ページャー(無線呼出局)については、現状の需要に応じた帯域幅に見直すことが適当である▽広域向けセンサーネットワークのニーズがあることから、センサーネットワーク用に周波数の確保を検討していくことが必要となっていくと考えられる。 335・4MHz超714MHz以下の周波数帯では、調査結果のポイントが▽本周波数帯の無線局数について、簡易無線局(350MHz(登録局)、400MHz、460MHz)が約53・8%(113万7080局)、アマチュア無線が約19・0%(40万1192局)、タクシー用デジタル無線(陸上移動局・携帯局)が約6・0%(12万6058局)で全体の約78・8%を占めた▽本周波数帯は、デジタル化を実施している簡易無線局(350MHz〈登録局〉、460MHz)は前回調査と比較して2倍以上局数が増加しているなど、アマチュア無線を除き全体的に増加傾向にあった。 ここでの評価結果のポイントは▽本周波数帯は、防災行政無線、ガス等の公共分野の自営通信、デジタルテレビジョン放送等、多様で重要な電波利用システムに利用されるとともに、簡易無線、アマチュア無線、タクシー無線等にも広く利用されており、適切に利用されていると認められる▽350MHz帯マリンホーンについては、旧規格の使用期限を踏まえ、平成34年までに他の無線システムによる代替等移行を図ることが適当である▽本周波数帯を使用している陸上系の電波利用システムで、現在、アナログ方式を採用している無線機器は、周波数数の有効利用の観点から、デジタル化や狭帯域化を促進することが望ましい。