NOTICEキックオフイベント開催 総務省―NICT、電気通信事業者が連携強化

 IoTを悪用したサイバー攻撃の増加を踏まえ、総務省及び国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、電気通信事業者と協力し、サイバー攻撃に悪用されるおそれのあるIoT機器の調査及び当該機器の利用者へ注意喚起する取組み「NOTICE」を2月20日から開始する。「NOTICE」の実施にあたり、総務省、NICT、電気通信事業者などの関係者間の連携の強化や周知広報を目的とした「NOTICEキックオフイベント」を2月13日に中央合同庁舎2号館で開催し、電気通信事業者(インターネットサービスプロバイダ)23社などが参加した。 佐藤ゆかり総務副大臣は「政府はサイバー空間とフィジカル空間が融合した社会であるSociety5・0の実現を柱として位置づけている。実現に不可欠なインフラがIoT、AI、5Gである。これらの新しい技術の利活用を最大限進めるため、我が国における経済発展と社会的課題の解決を両立させる。このSociety5・0においては、ネットワークに大量に接続されるIoT機器のサイバーセキュリティの確保が大変重要である。現在普及しているIoT機器には、セキュリティ対策が十分ではないものも多く存在する。これらの機器が重要インフラなどへの攻撃に悪用されることによって甚大な被害がもたらされるおそれが広がってきている。既に諸外国においては、多くの方々が利用しているインターネットサービスが長時間停止するとか、社会経済に深刻な被害生じた事例も多々発生している。そこで我が国においては本年、大阪G20サミット、ラグビーワールドカップが開催されるほか、2020年にはオリンピック・パラリンピック東京大会、2025年には大阪万博が開催されるなど、向こう数年間、国を挙げて世界規模のイベントが続く。こうした中で、IoT対策の必要性が高まっている。このような状況を踏まえて、昨年5月に国立研究開発法人情報通信研究機構法が改正されて、NICTがサイバー攻撃に悪用されるおそれのある機器を調査して、電気通信事業者を通じて、利用者に注意喚起を行うこととした。このNOTICEのプロジェクトをいよいよ2月20日に開始することになった。本プロジェクトは、パスワード設定が適切になされているかなどを調査して、不適切な場合には、利用者に対策をお願いするもの。IoT機器のセキュリティ設定は、もはや個人の問題ではない。国民経済に大きく影響するという認識が必要である。本プロジェクトは他国にも例がない先進的な取組みである」と挨拶した。 NICTの徳田英幸理事長は「NICTは、旧通信総合研究所(CRL)の時代から20年近くにわたり、セキュリティ技術の研究開発に取り組んできた。大規模サイバー攻撃観測分析システム(NICTER)、対攻撃アラートシステム(DAEDALUS)、攻撃分析システム(NIRVANA改)など、リアルタイムでの観測、分析、可視化や、様々なサイバーセキュリティ対策技術の研究開発を推進している。これらの取組みを進める中で、近年、IoT機器の脆弱性を狙う攻撃が増加している。NICTERでの統計によると、サイバー攻撃は2015年から2017年の2年間で年間545億パケットから1504億パケットへ約2・8倍伸びている。そのうち、IoT機器へは約5・7倍に増加している。しかも全体の約54%にも達している。これらの大量のIoT機器を踏み台にしたサイバー攻撃が増加している状況が顕著に見られることを憂慮している。このたび政府、総務省において、このNOTICEプロジェクトを立ち上げられ、官民で連携して取り組む新しい枠組みをつくったのはタイムリーであり、安全でクリーンなサイバー空間を保持していく上では意義深い」と挨拶した。 KDDIの高橋誠社長は「様々な技術革新により新しい事業創出がおこり、地方も含めた日本全体の経済発展につながっていくことが望まれている。テクノロジーの著しい進化によって、あらゆるものがインターネットにつながるIoTは、いつでも誰でも簡単に利用できるようになってきている。一方、IoT機器はすべてサイバー攻撃の対象になりうるので、セキュアな環境をどう確保するかが喫緊の課題になっている。ネットワークに大量に接続されるIoT機器のサイバーセキュリティの確保は、事業者にとっても大変重要な課題だ。昨年改正されたNICT法を踏まえて、官民がより緊密に連携して、今般のプロジェクトを推進し、安心・安全なインターネット環境を保つことが必要だ。このような取組みは初めての試みで、脆弱性のある機器の情報をもとに、所有者に対する注意喚起を効率的かつ円滑に行えれば、大きな効果が得られる。IoTセキュリティについては1社で対応するのは難しく、通信・放送などの業界全体で情報共有して取り組む」と挨拶した。