関東総通局、関東地方非常通信協議会「記念講演会」

 総務省関東総合通信局(黒瀬泰平局長)は、5月23日に九段第3合同庁舎(東京都千代田区)で、関東地方非常通信協議会との共催により同協議会の総会終了後、首都圏防災をテーマに記念講演会を開催した。 関東地方非常通信協議会は、関東管内における非常時の通信確保と円滑な運用を図ることを目的に、関東管内の官庁、企業、団体等の機関により構成され、非常通信訓練や講演会、周知啓発などの活動を行っている。 本活動の一環として、非常通信及び災害対策に関する理解を深めてもらうことを目的とした記念講演会を開催したもの。 講演会に先立ち行われた「令和元年度関東地方非常通信協議会総会」では、冒頭、同会会長もつとめる黒瀬泰平関東総合通信局局長が次のように挨拶した。 「近年、毎年のようにわが国は災害にみまわれており、昨年は9月に北海道胆振東部地震で甚大な被害のみまわれており、また平成30年7月豪雨などでも多大な被害を受けた。当協議会では、こうした災害の備えて中央非常通信協議会の構成員らと連携して非常通信訓練の実施や通信体制の総点検、非常通信セミナーの開催などさまざまな取り組みを行っている。日頃から関係機関との情報共有を図り、万が一の大災害に備えてその基盤となるきわめて重要な活動である」。 議事は▽第1号議案:平成30年度事業報告(案)▽第2号議案:令和元年度事業計画(案)▽第3号議案:令和元年度役員の選出等(案)―でいずれも満場一致で承認された。 令和元年度事業計画の概要は次の通り。▽各種非常通信訓練の実施①第82回全国非常通信訓練(中央非常通信協議会主催)②総合防災訓練における非常通信訓練(同)③関東地方非常通信訓練(関東地方非常通信協議会主催)▽非常通信実施体制の総点検▽非常通信に関する周知・啓発①講演会等の開催②広報活動の取り組み▽防災訓練への参加①「第68回利根川水系連合水防演習」への出展②「第40回九都県市合同防災訓練」への出展▽その他①非常通信実施体制の総点検の強化②非常通信訓練の実施の強化―である。 記念講演会の講演1は演題「災害情報の共有・利活用』で、講師は国立研究開発法人防災科学技術研究所総合防災情報センター長の臼田裕一郎氏。概要は『大規模災害時における災害情報の流通、共有及び利活用についてこれまでの研究内容や成果等を交えての講演』。 講演要旨は次の通り。「防災科学技術研究所、通称防災科研は、さまざまな自然災害を『観測・予測』し、得られた結果の『評価・検証』を行うとともに、個人・地域・行政に必要な『情報システム・対策技術』の開発と『社会実装』を進め、災害に強い社会の実現を目指している。防災科研の総合防災情報センターでは、所内外と連携して『知の結集』を行い、防災研究成果や災害情報を集約、再編して、統合的に発信するプラットフォームを構築する」。 次に防災科研の「臨海統合地震津波火山観測ネットワーク」の仕組みづくりや、大型降雨実験施設である実大3次元震動破壊実験施設(E―ディフェンス)の紹介を行った。 臼田氏は「災害対応における情報共有の課題は、組織内で集約される災害情報が、組織外の対応者に届かない。また、組織外で生成される災害情報が、組織内の対応者に届かない」点と指摘。災害対応の理想の姿は『情報を「共に」「有す」』『「知らない」を無くす」こととし、防災科研が開発した『基盤的防災情報流通ネットワーク』(SIP4D)を紹介した。「これは、災害対応に必要とされる情報を多様な情報源から収集し、利用しやすい形式に変換して迅速に配信する機能を備えた、防災情報の基盤的流通を担う仕組み」と説明。防災情報の仲介型運用機能、標準的な災害情報プロダクツの提供を担っている。ポイントは仲介運用と、利活用側が必要な形で提供―であり、複数の情報をひとつのデータに統合して提供するので、効率化が図れるとしその実績も示した。「SIP4Dは〝ツール〟。内閣府の『国と地方・民間による災害情報ハブ』は〝ルール〟。内閣府の『災害時情報集約支援チーム(ISUT)は〝チーム〟。ツールとルール、チームの三位一体が重要なのだ」と述べた。 ここまでが過去5年間の活動内容で、ここからは今後5年間について話した。防災科研では「状況認識統一から意思決定支援を目指す。さらに、情報に基づき、社会をけん引する『CPS4D』を確立する。防災版CPSであるCPS4Dはサイバーフィジカルシステム・フォー・ディザスターレジリエンスの略で『SIP4D』の先を行くもの」とした。CPS4Dは、デジタルツイン、レジリエントネットワーク、フィードフォワードの3つのコア技術カテゴリーであり、それぞれを説明。「目指す姿は、避難・緊急活動支援統合システムの構築である」と話した。 次の講演は演題「東京五輪を見据えた観光防災@Society5・0の具体化」で、講師は明星大学人文学部人間社会学科教授の天野徹氏。概要は『東京五輪や首都直下地震を例に、観光危機管理や観光防災の観点から、実現可能な問題解決策を提示する講演』だった。