荻原直彦電波部長インタビュー「価格競争の導入により高周波数帯の活用を促進」

 電波は、携帯電話やテレビなど身近なものから、警察、消防、救急、航空、船舶、防災など公共性の高い無線通信、さらには医療、交通、ドローン、ロボットなどありとあらゆる場面で利活用されており、社会基盤を構築する重要な土台となっている。

 昨今の技術進化のスピードは目覚ましく、電波や通信を巡る状況も刻一刻と変化しつつある。

 6月1日の「電波の日」に合わせて、総務省総合通信基盤局の荻原直彦部長にインタビューし、この4月に成立した新たな周波数割当方式の導入を含む電波法及び放送法の一部改正や、「高速・大容量」や「低遅延」、「多数同時接続」を実現する5G普及に向けたインフラ整備状況、ドローンの利用拡大や次世代モビリティ、災害時にもつながる通信環境の構築といった電波を巡る現状について、取り組み状況や今後の課題等を聞いた。

――新たな周波数割当方式の導入を含む電波法及び放送法の一部を改正する法律が2025年4月18日に成立しました。本法律の概要、特に新たな周波数割当方式の導入の狙いや期待についてお聞かせください

 我が国の人口が減少に転ずる中、国民生活や経済活動に不可欠なものとなっている電波の有効利用を促進するため、電波法及び放送法の一部を改正する法律案を2025年通常国会に提出し、同年4月18日に成立しました。

 具体的な改正事項としては、 
①6GHzを超える高い周波数帯の活用を希望する多種多様なサービスの中から、最も電波を有効に利用できるものを、「価額競争」により決定する新たな周波数割当方式を導入するほか、
②無線局の免許状等や基幹放送事業者の認定証のデジタル化、
③免許人等にご負担いただく電波利用料の料額の改定や電波利用料の使途の見直しを行うとともに、
④地上波テレビの放送事業者が、やむを得ず、放送の中継局を廃止する際に、受信者を保護するための規律を整備する等の措置を講ずるものとなっております。

 ①の新たな周波数割当方式の導入の背景は、近年、電波の利用が急速に進むにつれ、電波がひっ迫した状態となっているため、比較的空いている6GHzを超える高い周波数帯の活用を進め、電波のひっ迫の解消につなげることが必要となっています。さらに、6GHzを超える高い周波数帯の利用技術が進展してきたことによって、今後、新規サービスの創出等を通じた我が国の持続的な経済成長や競争力強化への貢献も期待できます。

 こうした状況を踏まえ、総務省では、6GHzを超える高い周波数帯の活用促進のための方策について、検討を進めてまいりました。その中で、6GHzを超える高い周波数帯においては、周波数の特性を踏まえたスポット的な利用を前提として、農業や工業、観光など、様々な利活用方策が検討されている状況にあることも踏まえ、多種多様な事業者の創意工夫を反映しやすい新たな割当方式を導入する必要があると考えました。

 そのため、これまでのように、金額の多寡に加え、エリアカバーの整備計画等も含めて総合的に評価する既存の割当方式ではなく、割り当てる者に求める条件を極力少なくし、創意工夫による周波数の経済的価値の最大化を図る者を選定する仕組みとして、もっぱら金額の多寡で評価する「価額競争」による新たな周波数割当方式を導入することが有効であるとの結論に至り、今回法案を提出し、成立したものです。

 今後、必要な準備を経て、なるべく速やかに価額競争を実施したいと考えており、価額競争を通じて6GHzを超える高い周波数帯の活用が進み、その結果、創意工夫による様々なサービスが展開されることを期待します。

(全文は6月1日付紙面に掲載)

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。