
スペースICT推進シンポジウム開催、「宇宙が守る、宇宙ICTの防災への活用の現在と未来」テーマに
第5回スペースICT推進シンポジウム(スペースICT推進フォーラム主催、総務省・一般社団法人日本航空宇宙学会後援)は2025年7月30日(水)、東京ビッグサイト南展示棟南会議室(東京都江東区有明)で開催され、一般参加者約200人が宇宙や情報通信に関する最新の動向に耳を傾けた。
スペースICT推進フォーラム(会長・中須賀真一東京大学教授)は、衛星通信に関連する企業・機関やユーザー等が広くコミュニティを形成し、宇宙の通信技術の多面的発展や先端的な地上の通信技術との協調等を目指し、総合的に議論する場として2020年7月に設立された。これまでに、158の特別・一般会員、49名の個人・学生会員が参加し、月例の検討会を始め、会員向けの会合を多数開催。 2021年に同フォーラムの設立1周年を機にシンポジウムを開催したことを皮切りに、以降毎年シンポジウムを開催して、宇宙や通信技術に関する最新の研究事例等を紹介している。
主催者を代表して、中須賀会長は「宇宙の中で通信は極めて大事。通信がないと色々な作業ができない。データは送れないし衛星のコマンドも送れない。宇宙でビジネスをやろうとすると衛星づくりから打ち上げ、法的なことまで色々なことをやらないといけないが、通信事業者がそれぞれ1社1社で何かをやろうとしてもなかなか難しい。横を見てタッグを組める仲間を集められる組織が必要ということがこのコミュニティのモチベーションの一つ。もう一つ大事なことは、企業が宇宙で何かをしたいと考えたときに政府の政策の中にアイデアが入っていかないといけない。アイデアを検討し、政府に訴えて、政府も安心して政策を打てるという政府とのインターフェイスとしての役割も重要。そのための組織としてこのフォーラムがある。まだプロジェクトは起こってはいないが企業の仲間づくりは進んできている。今後プロジェクトが起こり、政府と組んで新しい施策が起こっていくことを期待している。今回のテーマは防災。今日もちょうど津波警報が出るなど災害はいつ起こるかわからない状況。2035年までに南海トラフの地震が起こる確率が高いとされている。宇宙を使って防災に答えるというのは正に喫緊の課題。防災に向かって宇宙の活動がどう貢献できるかを議論し、またフィードバックを我々に入れていただきたい」とあいさつした。
続いて来賓として総務省大臣官房審議官の柴山佳徳氏が登壇し、「宇宙分野は最後のフロンティアと呼ばれ、革新的なサービスが出てきている。一例を挙げれば低軌道衛星によってスマートフォンに対して直接通信可能な衛星ダイレクト通信の提供などがあり、これらサービスが様々な経済活動に活用されることが期待される。宇宙分野には国境という概念はなく、競争は一層激しくなるとみられる。我が国でも通信の商用化や関連機器の製造が進められているが、今後一層産学官の取組が重要となる。政府では昨年宇宙戦略基金を創設し、民間企業や大学での先端研究開発を支持している。また総務省ではこれとは別に周波数に関する国際ルールの策定や国内免許の制度面の対応を行っている。今後とも制度面と技術面の両輪で宇宙ビジネスを支援していきたい」とあいさつした。
この日は、国立研究開発法人防災科学技術研究所社会防災研究領域長/総合防災情報センター長の臼田裕一郎氏▽JAXA第一宇宙技術部門衛星利用運用センター技術領域主幹の川北史朗氏▽JAXA航空技術部門航空利用拡大イノベーションハブハブマネージャの小林啓二氏▽内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室参事官補佐の大柿顕一朗氏▽気象庁情報基盤部気象衛星課課長の別所康太郎氏▽NICT電磁波研究所電磁波伝搬研究センター宇宙環境研究室室長の津川卓也氏▽スペースICT推進フォーラム 5G/Beyond 5G連携技術分科会副主査(NICT)の三浦周氏▽スペースICT推進フォーラム事務局光通信技術分科会担当(NICT)の斉藤嘉彦氏―の計8氏がそれぞれ所属する立場から宇宙と通信技術、防災への活用について講演した。
このうち、防災科研総合防災情報センター長の臼田氏は、「防災の観点からスペースICTに期待すること」と題して講演。衛星技術への期待として、能登半島地震で需要が高まった「扱いやすくどこでも使える通信技術」や、人工衛星、ドローン、生成AI、拡張現実等を活用した「マルチモーダルな観測の一翼を担う技術」、防災デジタルプラットフォームを活用した関係機関間の迅速な情報共有等「迅速かつ的確な観測と被害状況の共有」について指摘した。
防災庁を中核に防災の推進のための技術ニーズを明らかにし、防災政策に活用できる技術シーズの把握、関係府省庁等や民間企業、大学等の研究機関等の各実施主体による防災技術の研究開発状況の把握と促進、分野横断的な防災技術の研究開発に係る関係機関間のコーディネート等を通じて、産官学民が連携した防災技術の研究開発・社会実装を推進する必要があり、これら技術や知見を「防災産業」へ発展させ、新たな産業の柱に育てていくべきとし、「産官学民が共創して社会を作っていくのが目指すべき姿」と話した。
後半には、各講演者がパネリストとなり、防災を巡る今後の展望等について議論を交わした。
この記事を書いた記者
- 主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。
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