次期高度情報通信基盤システム等整備 警察庁、8年度概算要求3478億円超

警察庁は、令和8年度予算概算要求で、一般会計3476億5500万円、東日本大震災復興特別会計2億1300万円の合計3478億6800万円を要求した。サイバー空間の脅威への対処、テロ対策と大規模災害等の緊急事態への対処、安全かつ快適な交通の確保、科学技術を活用するなどした緻密かつ適正な捜査の推進、組織犯罪対策の推進、生活の安全を脅かす犯罪対策の推進と犯罪被害者等支援の充実、警察基盤の充実強化、の7つの重要事項を予算編成の柱とし、警察情報基盤の整備充実では、通信指令システム及び次期高度警察情報通信基盤システム等の整備を推進する。また、警察業務デジタル化・高度化の推進とともに、治安上の諸課題等に対処するための増員146人を要求した。
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 令和8年度要求・重要事項の内容を見る。サイバー空間の脅威への対処には、64億57000万円(前年度予算56億9200万円)を盛り込んだ。サイバー犯罪の検挙件数が過去最高を記録し、わが国の政府機関、民間事業者等を狙ったサイバー攻撃が発生するなど、サイバー空間の脅威は極めて深刻な情勢にある。国境を越えて実施されるサイバー事案や情勢の変化に応じ、また、サイバー対処能力強化法及び同整備法施行に向け、サイバー警察局・サイバー特別捜査部の充実強化をはじめとする人的・物的基盤の強化を図るなど、組織の総合力を発揮した効果的な対策を推進する。
 対処能力の向上に51億5700万円を充て、サイバー対処能力強化法及び同整備法の施行に向けたアクセス・無害化措置の実施環境を整備等のほか、高度化・複雑化するサイバー事案に的確・機動的に対処するサイバー特別捜査部の体制強化、捜査・対処用資機材と情報技術解析用資機材の整備等を推進。人的基盤の強化及び研究の推進に7億1200万円を充て、サイバー事案に対処する人材確保の推進、警察学校における体系的教育により能力底上げや高度な専門人材の育成を図る。官民連携及び国際連携の推進に5億8800万円を充て、民間事業者・団体との連携推進とともに、国際共同捜査への参画や国際機関、外国治安情報機関等との情報交換・連携を推進する。
 テロ対策と大規模災害等の緊急事態への対処に78億9500万円(前年度予算88億9100万円)を盛り込んだ。わが国に対する国際テロの脅威の継続やローン・オフェンダー等による重大事件等を踏まえ、情報収集・分析、水際対策、ドローン対策、警戒警備等のテロ対策を強化するほか、安倍元総理に対する銃撃事件及び岸田総理(当時)に対する爆発物使用襲撃事件等をふまえつつ、警護を更に強化する。また、激甚化・頻発化する豪雨災害、今後発生が懸念される首都直下・南海トラフ地震等の大規模災害への備えを強化するほか、国境離島における警備事象等への対処能力向上を図る。
 現下の情勢を踏まえたテロ対策・警護の強化に22億4900万円を充て、テロの未然防止、テロへの対処体制の強化及び警護の強化のために必要な装備資機材の整備等を推進する。大規模災害対策の強化や国境離島における警備事象等の緊急事態への対処能力向上に向け、各種装備資機材の拡充を推進する。
 科学技術を活用するなどした緻密かつ適正な捜査の推進に117億5900万円(前年度予算93億9500万円)を盛り込んだ。刑法犯認知件数は戦後最少を記録した令和3年から3年連続で増加しているほか、通り魔事件等の突発重大事案が発生するなど、依然として厳しい犯罪情勢にある。このような情勢に的確に対処するため、客観証拠の早期確保に向けた迅速かつ的確な捜査を展開し、一層緻密かつ適正な捜査に務めるほか、警察における適正な死体取扱い業務を推進する。
 警察における科学捜査力の強化に55億7700万円を充て、科学捜査力の一層の高度化を図るため、DNA型鑑定資機材をはじめとする鑑識・鑑定資機材を整備する。警察における適正な死体取扱い業務の推進に36億9000万円を充て、警察における死体取扱い業務を推進するため、検視、司法解剖を実施。科学警察研究所における研究・鑑定基盤の整備に10億1400万円を充て、犯罪の捜査及び防止に関する科学技術の研究・開発、事件・事故に関する鑑定に必要な基盤を整備する。
 警察基盤の充実強化に560億6300万円(前年度予算271億700万円)を盛り込んだ。全国的に地方警察官の受験者数が減少し、競争倍率が低下する傾向にあるなど、採用情勢は極めて厳しい状況であることを踏まえ、誇りと使命感を持った優秀な人材確保のため、採用活動の強化や警察学校の建て替え・改修による環境改善を推進する。また、依然として厳しい治安情勢に的確に対処するため、警察施設・装備資機材の整備、警察活動基盤を充実強化するための施策を推進する。
 警察における人材の確保・育成の強化及び警察施設の整備に162億7900万円を充て、仕事の魅力・やりがいの発信等の採用活動を強化するとともに、老朽化した施設の建て替え、道場の暑熱対策等により警察学校の環境を改善。現場執行力の強化に163億5800万円を充て、警察活動を迅速かつ的確に行うため、警察用車両、航空機、装備資機材等を整備。警察情報通信基盤の整備充実に217億8600万円を充て、110番通報等に迅速かつ的確に対応するため、通信指令システム、次期高度警察情報通信基盤システム等の整備を推進する。