
ひまわり10号打上げ2030年度に延期 気象庁、8年度概算要求545億円
気象庁の令和8年度予算要求では、一般会計で前年比1・08倍の545億9000万円を要求した。重要項目「次世代静止気象衛星の整備」、「線状降水帯・台風等の予測精度向上に向けた取組みの強化」、「大規模地震災害・火山災害に備えた監視体制の確保」、の3つの柱で編成。但し、次世代静止気象衛星『ひまわり10号』=イメージ画像=について、最新技術である大気の3次元観測機能『赤外サウンダ』開発の遅れにより、打ち上げを2028年度から2030年度に延期したため、「次世代静止気象衛星の整備」は事項要求となった。
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重要項目の一つ、「次期静止衛星の整備」(事項要求)では、頻発する自然災害から国民の命を守るため、線状降水帯・台風等の予測精度の向上に重要な役割を果たす静止気象衛星『ひまわり』について、引き続き整備を進める。『ひまわり』は、安全・安心な国民生活・社会経済活動に不可欠な社会インフラ。線状降水帯や台風等の予測精度を飛躍的に向上させる『赤外サウンダ』など最新技術を導入した次期静止気象衛星『ひまわり10号』は、運用開始にあたり、宇宙基本計画において優先的に利用する国産基幹ロケット(H3ロケット)を使用して打ち上げる計画で、そのための準備作業に着手する。
また、次々期静止気象衛星に関する技術動向調査(事項要求)では、2機体制による安定した衛星観測を維持するため、次々期静止気象衛星の運用を円滑に開始できるよう次期静止気象衛星の整備で得た知見も活用しつつ、次々期静止気象衛星の調達の仕様を確定していく必要があることから、観測センサに関する世界の最新技術動向等について調査を行う。国内外の静止気象衛星の最新技術動向を取得し、世界最高水準の観測センサ技術の導入など、次々期静止気象衛星の仕様へ反映する。
重要事項の二つ目、線状降水帯・台風等の予測精度向上等に向けた取組の強化には、1億7600万円を要求。ほかにデジタル庁一括計上5億1200万円、事項要求あり。線状降水帯・台風の予測精度向上等による防災気象情報の高度化とともに、平時及び緊急時における気象解説を通じた支援等により地域防災力の向上を図る。
線状の降水域が数時間にわたってほぼ同じ場所に停滞することで、災害の危険性が急速に高まる線状降水帯や台風等に関する予測精度を向上させるため、次期静止気象衛星の整備に加え、観測の強化予測技術の強化、防災気象情報の段階的な改善、等を行う。
気象防災アドバイザーによる支援体制を拡充するための企業に7900万円を要求。アドバイザーの活用を通じて市町村の防災対応力向上に寄与するため、アドバイザー数の拡充やアドバイザー活用促進等に取り組む。大規模災害等に必要なJETT装備品の整備に6000万円を要求。発災直後の捜索・救助オペレーションなど、人命に関わる重大な場面においても、効果的に気象解説等の支援ができるよう、衛星通信を活用するための機器や、非常時持ち出し機材(JETT装備品)を整備する。
重要事項の三つ目、大規模地震災害・火山災害に備えた監視体制の確保に26億2200万円を要求。ほかにデジタル庁一括計上1億6800万円、事項要求あり。大規模地震災害に備えた監視体制の確保に17億9000万円を要求。老朽化する観測機器の更新・整備、情報システムの更新強化により、緊急地震速報や津波警報、南海トラフ地震臨時情報等を適時的確に発表し、減災目標の達成に貢献する。
大規模火山災害に備えた監視体制の確保と新たな火山灰予測情報等の発表に8億3200万円を要求。ほかにデジタル庁一括計上1億2100万円、事項要求あり。火山災害に備えるため、老朽化する観測機器(地震計・傾斜計・カメラ等)を更新・整備し、噴火警報等の迅速かつ安定的な発表体制を維持。また、大規模噴火時に広域に降り積もる火山灰に関し、新たな予測情報等を提供するため、情報システムを更新・強化する。
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※事項要求:各府省庁が財務省に提出する翌年度予算の概算要求で、必要な金額を示さずに事業項目だけを記載して予算要求することを言う。