電力ロス大幅低減の鉄系磁性材料開発 NIMS等、次世代トランス・EV部品応用に期待

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS、茨城県つくば市千現)は、東北大学及び国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と共同で、鉄系の軟磁性アモルファスリボンに新たなナノ組織・磁区構造の制御技術を導入し、電力損失を従来比で50%以上削減することに成功した。
 次世代高周波トランスや電気自動車の駆動用電源回路などで求められる数十キロヘルツの高周波領域で高性能を発揮し、電動機器の省エネ化やカーボンニュートラル実現への貢献が期待できるとした。
 AI向けデータセンターや電気自動車などの電力利用が急速に拡大する中、電力の高効率利用が重要な課題。その要となるパワーエレクトロニクス技術では、電力を変換・供給するトランスやインダクタなどに使われる軟磁性材料の性能が効率化の鍵を握る。難磁性材料は、外部磁界に対して素早く反応する磁化応答性に優れ、電力ロスを抑えられる金属材料だが、パワーエレクトロニクス技術の高周波化に伴い、軟磁性材料で発生するエネルギーロスの増大が深刻な問題となっていた。
 今回、NIMS、東北大学、及び産総研の研究チームは、鉄を主成分とした軟磁性アモルファスリボン内部の「ナノ組織」、「磁区構造」を精密に制御する手法を新たに開発したもので、これにより前述のように、特にトランスや電気自動車のパワー回路など、応用が期待されている数十キロヘルツまでの高周波域で、軟磁性材料の電力損失を従来比で50%以上削減することに世界で初めて成功したものである。
 今後、この新たに開発した材料を用いて、トランスなどのプロトタイプ素子の作製や実際の電力変換回路への実現を目指すという。この成果の詳細は、Nature Communicationsのオンライン版に掲載された。