リコー・パナソニック等3件採択 NEDO、次世代型太陽電池の開発・実証事業

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、グリーンイノベーション基金事業「次世代型太陽電池の開発」プロジェクトの「次世代型太陽電池実証事業」にて追加公募し、リコー及びパナソニックホールディングス、エネコートテクノロジーズの応募3件を、ペロブスカイト太陽電池の量産技術開発とユーザーと連携したフィールド実証を行う研究テーマに新規採択した。第7次エネルギー基本計画に挙げられた2040年までに200MW~300MW以上の規模の量産化構想を有する企業3社を採択したもので、量産技術の開発を加速するとともにユーザーと連携したフィールド実証を行う。これにより、ペロブスカイト太陽電池の早期の社会実装を図るとともに、日本の太陽光発電産業の競争力強化を目指す。
 日本政府は、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出量を全体としてゼロにする目標を掲げた。この目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするもので、実現するにはエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど、現行の取組みを大きく加速させる必要がある。このため、経済産業省はNEDOに総額2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション企業基金を立ち上げている。
 「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」では、シリコン系太陽電池に対抗しうる次世代型太陽電池として有望視されるペロブスカイト太陽電池の開発・製品化・市場開拓を早期かつ着実に進めるため、産学官の連携した開発体制を構築し、太陽電池の性能向上と実用化レベルの大型化を実現するための技術開発を進めてきたが、今回の研究開発内容「次世代型太陽電池実証事業」では、品質を安定させつつ大量生産を可能とするための量産技術の開発と国内外の市場を想定したフィールド実証を並行して実施する。
 事業予算は378億円(NEDO支援規模)で、品質を安定させつつ大量生産可能な量産技術の確立に向け、一連の生産プロセス(ライン)として高いスループットや高い歩留まりを実現する技術開発を行う。例えば、ロール・ツー・ロール(R2R)方式の製造に適した材料、製造装置と製造プロセスの開発とその検証、及び改善点を抽出してのフィードバックなどを通じて、量産技術の確立に取組む。
 また、量産技術の確立と並行して、ペロブスカイト太陽電池の特徴を活かした設置方法や施工方法などを含めた性能検証のため、耐荷重の小さい屋根や壁面への設置など国内外の市場を想定して海外を含めたフィールド実証を行い、必要に応じて検証結果を踏まえた改良を行うことで、ペロブスカイト太陽電池の実用化を促進するとした。
 今回採択分の採択テーマは次の通りである。
 ▽(株)リコー:インクジェット印刷ペロブスカイト太陽電池生産技術開発、及び社会実装に向けた設置施工技術・電装技術開発▽パナソニックホールディングス(株):ガラス型ペロブスカイト太陽電池の量産技術開発とフィールド実証▽(株)エネコートテクノロジーズ:設置自由度の高いペロブスカイト太陽電池の社会実装に向けた量産技術開発と実証。
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 ※スループット:単位時間当たりに処理できる作業量であり、ここでは単位時間当たりの生産量の意味。