
航空インフラ国際展開協議会総会開催 国交省、海外のプロジェクト獲得に向け後押し
国土交通省の航空インフラ国際展開協議会(会長:進藤孝生日本製鉄相談役)は今般、東京都千代田区霞が関の中央合同庁舎第3号館・国土交通省本省会議室及びオンライン併用ハイブリッド方式による第13回「航空インフラ国際展開協議会総会」(非公開)を開催し、官民双方からこれまでの取組み状況を報告するとともに、世界の旺盛な航空インフラ需要の高まりを踏まえ、官民連携による更なる海外の航空インフラプロジェクト獲得に向けた今後の取組について、情報共有や意見交換を行い、わが国企業を後押しすることとなった。
世界の旺盛なインフラ需要を取り込み、わが国企業の受注機会の拡大を図ることは、日本の持続的な経済成長を実現するうえで非常に重要な戦略。このため、国土交通省航空局では平成25年4月に「航空インフラ国際展開協議会」を設置し、官民ミッションや政府間会合の場を利用した日本企業のプレゼンス強化等、官民連携により様々な取組みを進め、わが国の航空インフラの国際展開を積極的に推進してきた。
第13回総会の冒頭、進藤会長から「世界の航空需要が新型コロナウイルス前の水準を上回り、航空プロジェクトの需要が高まる中、官民がより一層連携して協議会活動を拡充し、航空インフラ国際展開を推進する」と発言し、注目された。また、国土交通省の吉井章国土交通大臣政務官は「日本企業の海外空港整備・運営事業への参画や日本の技術の導入による相手経済や社会問題解決への貢献を推進するとともに、今後も国土交通省として日本企業による航空インフラ海外展開を促進していく」旨、挨拶した。
今回の総会の議題は、航空インフラ海外展開に向けた各取組みの紹介及び報告。これまでトップセールス、要人招聘(航空視察)等による相手国政府への働きかけ、政府間会合での本邦企業プレゼンス強化・情報発信(運輸ハイレベル会合参加、航空セミナー開催、本邦技術パンフレット作成)、案件発掘に向けた情報共有、ネットワーク強化が行われたが、国土交通省からの航空インフラ海外展開報告のほか、屋井鉄雄東京科学大学特任教授・名誉教授、一般財団法人運輸総合研究所所長から、国内や海外空港における空港技術の動向について説明するとともに、海外事業展開における課題及び関係者が一体となった事業の推進への期待を述べた。
今年度実施予定について、航空インフラ国際展開協議会では海外空港の運営・建設等の情報共有を月1回実施するとともに、会員の関心が高い情報を不定期に共有する。空港整備・運営発掘WG/空港技術WGでは年度内に2回程度開催。また、航空技術セミナー(マレーシア及びタイ)について、11月下旬~12月上旬を想定し参加者募集中で現地とオンラインのハイブリッド開催を行う。
協議会総会出席者は、進藤孝生会長をはじめ、副会長の菅原達也大成建設常務執行役員国際事業本部長、清水一樹三井物産執行役員プロジェクト本部長(一般社団法人日本貿易会経済協力委員会顧問)、民間企業58社、関係機関7機関。航空・情報通信関連企業からは、岩崎電気、ANAホールディングス、NTTデータ、沖電気工業(OKI)、シンフォニアテクノロジー、東芝、東芝電波テクノロジー、日本航空、日本電気(NEC)、日本無線(JCR)、パナソニックコネクト、国際電気、古河電気工業、三菱電機、明星電気、等が参加。関係機関からは、(国研)海上・港湾・航空技術研究所、(一財)航空交通管制協会、(一財)航空保安無線システム協会、(一財)港湾空港総合技術センター、(一財)日本気象協会、(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)、等が参加した。
◇
〈空港運営事業等3件に参画/電波システムプロジェクト海外展開〉
日本企業の関与する主要プロジェクトの概要・進捗状況を見る。海外空港運営事業へは、現在、わが国企業は3件の空港運営事業に参画。一つは、チンギスハーン国際空港(モンゴル)。今後の旅客数増加等への対応のため、モンゴル側が空港施設の拡張を希望。国際協力機構(JICA)が空港施設の拡張等に向けた基礎調査を実施。今年度は、円借款を念頭にした案件形成に向け、JICAが協力準備調査を実施しており、国土交通省も積極的に支援している。
二つに、ハズラット・シャージャラ―ル国際空港(バングラデシュ)。国際線旅客ターミナル(T3)や貨物ターミナル等を円借款事業により建設中。その運営について「バングラディシュジョイントPPPプラットフォーム」の枠組みを活用し、本邦企業に優先交渉権が付与され、現在、運営委託に向けて協議中。三つ目は、バリクパパン空港(インドネシア)。インドネシア新首都近郊のバリクパパン空港及びIKN空港への運営参画事業の案件形成調査を実施。現在、6社の日本企業が関心表明をインドネシア政府に提出し、参画に向けインドネシア政府等と協議中。
一方、総務省の電波システム海外展開プロジェクトは、各種電波システムの実証実験を経て運用実績を確保することにより、国産電波システムの海外展開を進めるものであり、国土交通省航空局は管制システムの展開にあたりマニュアル作成等ソフトインフラ面のサポートを実施してきた。これまでに、ベトナムにおけるMLAT(空港面監視システム)、マレーシアにおけるFOD(滑走路異物)検知装置、タイにおけるGBAS(地上直接送信型衛星航法補強システム)の実証実験を実施。同調査により、海外展開プロジェクトの最終的な目標である、国産の管制システムの海外展開を更に推進する。
Global Implementation Support Symposium2024でJCABよりICAO事務局長に手交された太平洋島嶼国の支援(ATSネットワークの構築及びキャパシティ・ビルディング)を引き続き行う。
今年度の取組みでは、現地調査の実施としてパプアニューギニア、バヌアツ、ラオスにおいてGBAS、MLAT、FODDS等のニーズ調査及びネットワーク調査を行う。招聘の実施では、太平洋島嶼国支援としてフィジー、ツバル、キリバス、バヌアツ、マーシャル諸島、ミクロネシア、パラオ、パプアニューギニア、ソロモン諸島、サモア、トンガ、クックアイランド、ナウルより各1名程度招聘し、人材育成の研修及び国際会議への参加を行う。研修場所は、羽田空港、ICAOアジア太平洋地区ネットワーク国際会議(東京)。
また、令和8年度は、対象国を選定しての案件発掘調査の実施、及び国産の管制システムを導入予定、または興味を持っている国を対象に招聘を行う予定である。