廃小型家電の無人選別システム実証開始 NEDO・産総研等、世界初・貴金属や銅など資源循環に貢献

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、高度循環型システム構築に向けた廃電気・電子機器処理プロセス基盤技術開発事業にて、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、大栄環境(株)、佐藤鉄工(株)共同で、廃小型家電の無人選別システムの実証を開始する。
 稼働するシステムは、世界初となる高度なリサイクルに向けた無人の選別システム。スマートフォンやタブレットなど廃小型家電6品目を対象に人工知能(AI)が機種を判定し、機種に応じて最適な破砕・選別工程を施し、貴金属、銅、レアメタルを回収。連続運転試験を通して、対象製品と回収素材の拡張も取組み、廃小型家電のリサイクル技術の高度化を目指す。
 この事業を通じて、多様な廃家電製品から、貴金属、銅、レアメタルに加えて、ベースメタル、プラスチックなども循環利用を可能とする基盤技術を確立し、経済活動と環境負荷低減を両立した循環経済関連産業の創出・成長促進に貢献するとした。
 さて、日本は資源の大半を海外に依存しているのが現状。近年の国際的な資源需要の高まり、地球温暖化をはじめとする環境問題の深刻化から、廃製品の再利用が強く求められ、小型家電に含まれる貴金属やレアメタルなどの再資源化が期待される一方、リサイクルの現場では、収集される廃製品の種類が増え、モバイル機器搭載のリチウムイオン電池によるリサイクル工場の火災も多発し、現場では手作業の負担が大きく、効率的な資源環境を実現する新技術が望まれている。
 このような背景から、NEDOは2017年度より「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業」、2023年度からは「高度循環型システム構築に向けた廃電気・電子機器処理プロセス基盤技術開発事業」に取組み、その一環として産総研、大栄環境、佐藤鉄工と共同で、今般、廃小型家電の無人選別システムの実証を開始することにした。
 同システムは新規に開発した6台の装置と、これらの運転を自律制御する機構から構成。実証に際して、各装置をつなぐ搬送コンベヤーなどの新規設備を加えることで、連続かつ無人で処理する構成とした。実証では、スマートフォン、タブレットなどの廃小型家電6品目を対象にAIが機種を判定し、機種に応じて自律的に最適な破砕・選別を施す。これにより、安全かつ高精度な資源回収を実現し、従業員不足の解消にも貢献するという。
 このシステムは、前述のように世界初となる高度なリサイクルに向けた無人の総合選別システム。NEDOは、連続運転試験で得られた実証成果をもとに、今後は対象家電や回収素材の拡張、装置のメンテナンスなどを含めた完全無人運転など、未来のリサイクル工場に向けた研究開発を継続して実施していく考えである。