総務省がR7年度版周波数再編アクションプラン策定

 総務省はこのほど、周波数再編アクションプラン(令和7年度版)を策定した。電波資源の有効活用や周波数需要増への対応を目的に策定しているもので、2040年末までに+約47GHz幅の帯域確保を目指すことを目標に、7つの重点的取り組みについて示している。また策定に当たり、令和7年9月12日(金)から同年10月14日(火)までパブリックコメントを募集した結果、131件の意見提出があり、この意見とこれに対する同省の考え方についても公表した。
 有限希少な電波資源の有効利用の促進と、新たな電波利用システムの導入や周波数の需要増に対応するため、同省では平成16年度以降、「周波数再編アクションプラン」を策定し、公表している。同アクションプランは、総務大臣が実施する電波の利用状況の調査と電波監理審議会が実施する電波の有効利用の程度の評価の結果等を踏まえて策定している。
 公表した概要によると、「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会報告書(令和6年8月)」で、2040年の無線トラヒックについて、地域累計別当に携帯電話網・NTN・Wi―Fiで収容するとした場合、合計で約70GHz幅(73・1GHz幅)が必要になると試算。2023年末時点で約26・5GHz幅を確保していることから、2040年末までに+約47GHz幅の帯域確保を目指すことを目標とした。令和6年度中においては、+0・34GHz 幅の帯域を確保している。
 7年度版の重点的取組としては、①価額競争の実施による5Gへの割当て②無線LANの更なる高度化と周波数拡張等③V2Xの検討推進④非地上系ネットワーク(NTN)の高度利用等⑤公共業務用周波数の有効利用⑥その他の主な周波数再編、移行等の推進⑦次世代移動通信システム(6G)を含むBeyond5Gの推進―の7つの項目を挙げている。
 【①価額競争の実施による5Gへの割当て】
 26GHz帯について、令和7年5月に実施した利用意向調査の結果を踏まえ、令和7年度内を目途に5Gに係る技術基準及び価額競争の実施に向けた指針を整備。その後、速やかに既存無線システムと共用可能性が高い周波数を価額競争により5Gに割り当てることを目指す。また、更なる5G利用の需要動向等を踏まえつつ、26GHz帯の既存無線システムに割当済みの周波数については、他の周波数へ移行させること等を前提として5Gに割り当てることを目指す。今後は既存免許人等と調整を図りつつ、周波数の使用期限等を定めるものとする。40GHz帯については、令和7年5月に実施した利用意向調査の結果、早期の5Gの割当て希望が示されなかったことから、技術的な動向や国内外の需要動向等を勘案しつつ、改めて割当て時期等を検討するとした。
 【②無線LANの更なる高度化と周波数拡張等】
 6GHz帯(5925~6425MHz)におけるナローバンドデバイスの利用に関して、諸外国における動向に留意しつつ、周波数共用の検討を推進。6GHz帯無線LANのSPモードによる屋外利用及び6・5GHz帯(6425~7125MHz)へのSPモードによる屋外利用を含む周波数帯域の拡張に係る周波数共用等の技術的条件について、令和7年度中を目途に取りまとめる。取りまとめに当たっては、WRC―23においてIMT特定された周波数帯(7025~7125MHz)に留意するとともに、既存の無線局等への有害な干渉を与えないようにするために必要なAFCシステムの在り方やその運用方法等に関して検討し、その結果を踏まえる。
 【③V2Xの検討推進】
 自動運転については、AI技術の急速な高度化等を背景に開発等が進展しており、これを支える通信環境の確保や通信インフラの整備が急務。既存のITS用周波数帯(760MHz帯等)に加え、国際的に検討が進められている5・9GHz帯(5850~5925MHz)のうち5895~5925MHzの最大30MHz幅をV2X通信向けに割り当てる方向で、必要となる各種取組を推進する。具体的には、5888~5925MHzについて、令和5年度補正予算でのデジタルインフラ整備基金による既存無線局の周波数移行を引き続き進めるとともに、V2X通信向けの割当てを可能とすることや既存無線局に関する使用の期限を定めるなどの周波数割当計画の変更を令和7年度中目途に実施し、特定周波数変更対策業務によって、既存無線局の周波数移行を全国に展開する。加えて、政府戦略等を踏まえ、東北自動車道等における技術実証や他の通信とも連携した面的な通信環境の検証、隣接システム等との周波数共用検討など、5・9GHz帯V2X通信システムの技術基準等の整備に向けた技術的検討を進める。
 【④非地上系ネットワーク(NTN)の高度利用等】
 スマートフォンやドローン、IoT機器のための超広域エリア通信の実現アプローチとして期待される高高度プラットフォーム(HAPS)の国内導入に向け、必要な技術基準の策定を目的として、固定系リンク及び移動系リンクに関する無線システムについて、他の無線システムとの周波数共用に係る技術的条件等について検討を進め、令和7年度内を目途に制度整備を行う。また、HAPSの周波数有効利用技術の研究開発を推進する。700MHz帯を利用する衛星ダイレクト通信システムの導入のため、既存無線システムとの周波数共用に係る技術的条件等について検討を進め、令和8年中を目途に制度整備を行う。高度約600kmの軌道を利用するKa帯の非静止衛星通信システムの導入に向け、既存無線システムとの周波数共用に係る技術的条件等について検討を進め、令和7年度内を目途に制度整備を行う。5Gの更なる上空利用の拡大に向け、3・7GHz帯及び4・5GHz帯について、他の無線システム等への混信を防止しつつ、ドローン等による上空利用を可能とするための技術的条件の検討を引き続き行う。
 【⑤公共業務用周波数の有効利用】
 デジタル変革時代の電波政策懇談会において、公共用周波数の有効利用を図るため、国が使用する公共業務用無線局(電波利用料の減免を受けているもの)のうち、「他用途での需要が顕在化している周波数を使用するシステム」と「アナログ方式を用いるシステム」について、令和5年度以降、当面の間、電波の利用状況の調査を毎年実施することとされた。対象の公共業務用無線局について、調査・評価結果を踏まえ、引き続き、廃止・周波数移行・周波数共用・デジタル化等の取組を推進していく。
 【⑥その他の主な周波数再編、移行等の推進】
 デジタルMCA陸上移動通信システムについて、令和11年5月末をもってサービスを終了するとの発表があったことを踏まえ、代替可能なシステムへの移行を促進するとともに、移行により開放される周波数において新たな無線システムを早期に導入できるよう、移行期間中からの周波数共用による段階的導入の可能性も含め、三次元測位システム及び800MHz帯広帯域小電力無線システムの技術的条件等について令和7年10月に取りまとめた。引き続き、令和7年度中を目途に制度整備を行う。高度MCA無線通信システムについて、令和9年3月末でサービス終了するとの発表を踏まえ、代替可能なシステムへの移行を促進するとともに、サービス終了後の周波数について利用意向調査を実施し、令和7年度中を目途に活用方策を決定する。タクシー無線、地域振興用MCAなど、自営系無線システムにおいては、アナログ方式のみならずデジタル方式においても減少傾向があり、今後、自営系無線システムは、携帯電話(IP無線等)を始めとした電気通信業務用の通信サービスやデジタル簡易無線等への移行等が進むことが想定される。デジタル方式の無線局数が減少している無線システムや、アナログ方式・デジタル方式問わずシステム全体の無線局数が顕著に減少している無線システムについて、それらの減少傾向を注視し、他システムへの移行状況や移行予定等も踏まえて、中長期的な課題として全般的な周波数の整理、再編(分類を見直し、これまでは周波数を分けていた用途などを統合し、共用させるなど)について調査、検討を進める。
 【⑦次世代移動通信システム(6G)を含むBeyond 5Gの推進】
 AI社会を支える次世代情報通信基盤Beyond 5Gの実現に向け、総務省が令和6年8月に公表した「AI社会を支える次世代情報通信基盤の実現に向けた戦略― Beyond 5G推進戦略2・0 ―」に基づき、次世代移動通信システム(6G)、オール光ネットワーク(APN)分野、非地上系ネットワーク(NTN)分野等の各種取組を推進する。 2025年度大阪・関西万博において総務省が実施した「Beyond 5G ready ショーケース」の成果も活用して、Beyond 5Gに向けた取組を加速化する。•産学官の連携や業界横断の活動について、 XGモバイル推進フォーラム(XGMF)による我が国の移動通信システムの社会実装や次世代移動通信に向けた国際連携等を推進する。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。