警察庁 8年度予算案は総額3117億円超え、テロ・大規模災害対策でドローン等強化

 警察庁の令和8年度予算案は、一般会計3115億600万円、東日本大震災復興特別会計2億1300万円の合計3117億1900万円となった。サイバー空間の脅威への対処、テロ対策と大規模災害等への対処、安全かつ快適な交通の確保、科学技術を活用するなどした緻密かつ適正な捜査の推進、組織犯罪対策の推進、生活の安全を脅かす犯罪対策の推進と犯罪被害者等支援の充実、警察基盤の充実強化、の7つの重事項を柱とし、特にテロ対策と大規模災害への対処では、水際・ドローン対策等を強化するとともに、警察情報基盤の整備充実では通信指令システム、及び次期高度警察情報通信基盤システム等の整備を推進する。また、警察業務デジタル化・高度化の推進とともに、治安上の諸課題に対処するため、国家公務員154人を増員する。(リード)
 重要事項であるサイバー空間の脅威への対処には、66億7900万円(前年度予算56億9200万円)を盛り込んだ。サイバー犯罪の検挙件数が過去最高を記録し、わが国の政府機関、民間事業者等を狙ったサイバー攻撃が発生するなど、サイバー空間の脅威は極めて深刻な情勢にある。国境を越えて実施されるサイバー事案や情勢の変化に先制的かつ能動的に対処するため、また、サイバー対処能力強化法及び同整備法施行に向け、サイバー警察局・サイバー特別捜査部の充実強化をはじめとする人的・物的基盤の強化を図るなど、組織の総合力を発揮した効果的な対策を推進する。
 対処能力の向上に53億8000万円を充て、サイバー対処能力強化及び同整備法の施行に向けたアクセス・無害化措置の実施環境を整備等のほか、高度化・複雑化するサイバー事案に的確・機動的に対処するサイバー特別捜査部の体制強化、捜査・対処用資機材と情報技術解析用資機材の整備等を推進。人的基盤の強化及び研究の推進に7億1100万円を充て、サイバー事案に対処する人材確保の推進、警察学校における体系的教育により能力底上げや高度な専門人材の育成を図る。官民連携及び国際連携の推進に5億8800万円を充て、民間事業者・団体との連携推進とともに、国際共同捜査への参画や国際機関、外国治安情報機関等との情報交換・連携を推進する。
 テロ対策と大規模災害等への対処に102億600万円(前年度予算100億4100万円)を盛り込んだ。わが国に対する国際テロの脅威の継続やローン・オフェンダー等による重大事件の発生、及び厳しい安全保障環境等を踏まえ、情報収集・分析、水際対策、ドローン対策、警戒警備等のテロ対策を強化するとともに、国境離島における警備事象等の緊急事態への対処能力の向上を図るほか、安倍元総理に対する銃撃事件及び岸田総理(当時)に対する爆発物使用襲撃事件等を踏まえ、警護を強化する。また、激甚・頻発化する豪雨災害、今後発生が懸念される首都直下地震、南海トラフ地震等の大規模災害への備えの強化を図る。
 現下の情勢を踏まえたテロ対策・緊急事態への対処・警護の強化に75億8600万円を充て、ローン・オフェンダー等の脅威やドローンの性能向上等といった現下の情勢を踏まえ、テロの未然防止、テロへの対処体制の強化、緊急事態への対処能力向上及び警護の強化のために必要な装備資機材の整備等を推進する。大規模災害への対処に13億6700万円を充て、大規模災害への対処能力向上に向け、各種装備資機材及び情報通信基盤の整備を推進する。
 安全かつ快適な交通の確保に189億5200万円(前年度予算191億5600万円)を盛り込んだ。交通事故は、発生件数、負傷者数の減少傾向にあるものの、他の年齢層に比べて致死率が高い高齢者の人口増加を背景に、交通事故死者に占める高齢者の割合が高水準なほか、次世代を担う子供の命が犠牲となる事故も後を絶たず、交通事故情勢は依然厳しいことから、交通安全を確保するための諸施策、並びに円滑な交通環境の整備等の対策を推進する。
 科学を活用するなどした緻密かつ適正な捜査の推進に97億600万円(前年度予算93億9500万円)を盛り込んだ。刑法犯認知件数は戦後最少を記録した令和3年から3年連続で増加しているほか、通り魔事件等の突発重大事案が発生するなど、依然厳しい犯罪情勢にある。このような情勢に的確に対処するため、客観証拠の早期確保に向けた迅速・的確な捜査を展開し、一層緻密・適正な捜査に努めるほか、警察における適正な死体取扱い業務を推進する。
 警察における科学捜査力の強化に35億7400万円を充て、科学捜査力の一層の高度化を図るための鑑識・鑑定資機材を整備。警察における適正な死体取扱業務の推進に36億9000万円を充て、適正な死体取扱業務を推進するため、検視、司法解剖等を実施。科学警察研究所における研究・鑑定基盤の整備に9億6400万円を充て、犯罪の捜査及び防止に関する科学技術の研究・開発、事件・事故に関する鑑定に必要な基盤を整備する。
 組織犯罪対策の推進に40億2600万円(前年度予算36億5900万円)を盛り込んだ。近年、匿名・流動型犯罪グループは、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺を含む様々な犯罪への関与など、これら組織犯罪は極めて憂慮すべき状況にあり、また、覚醒剤や大麻の流通、銃器隠匿方法の巧妙化、犯罪のグローバル化等も進んでいる。こうした厳しい組織犯罪情勢を踏まえ、暴力団や匿名・流動型犯罪グループの弱体化・壊滅に向けた対策を推進する。
 生活の安全を脅かす犯罪対策の推進と犯罪被害者等支援の充実に37億4300万円(前年度予算40億600万円)を盛り込んだ。令和6年の刑法犯認知件数の総数は、戦後最少を迎えた令和3年以降、3年連続で前年比増となり、ストーカー・DV、児童虐待をはじめとした子供や女性がその被害に遭う犯罪や、国民に大きな不安を与える凶悪事件が発生するなど、犯罪情勢は依然として厳しい状況にある。また、犯罪被害者等に対し適切な支援が必要なため、安全で安心な国民生活を確保するための施策を推進する。
 警察基盤の充実強化に227億9600万円(前年度予算259億5700万円)を盛り込んだ。全国に地方警察官の受験者数が減少し、競争倍率が低下する傾向にあるなど、採用情勢は極めて厳しい状況にある。それを踏まえ、誇りと使命感を持った優秀な人材を確保するため、採用活動の強化や警察学校の建替え・改修による環境改善を推進。また、依然として厳しい治安情勢に的確に対処するため、警察施設・装備資機材の整備、警察活動基盤を充実強化するための施策等を推進する。
 警察における人材の確保・育成の強化及び警察施設の整備に120億2100万円を充て、仕事の魅力・やりがいの発信等の採用活動を強化するとともに、老朽化した施設の建替え等により警察学校の環境を改善。現場執行力の強化に18億7600万円を充て、警察活動を迅速かつ的確に行うため、警察用車両、航空機、装備資機材等を整備する。警察情報通信基盤の整備充実に75億1300万円を充て、110番通報等に迅速かつ的確に対応するため、通信指令システム、次期高度警察情報通信基盤システム等の整備を推進する。            ◇
 【令和8年度国家公務員の増員】
 国家公務員154人増員(他方、定員合理化等の取組みにより87人を削減)。内訳は、匿名・流動型犯罪グループに対する総合対策の推進44人、サイバー空間の脅威への対処能力の強化52人、国民生活の安全・安心を確保するための諸対策の推進11人、わが国の安全を確保するための体制の強化22人、警察業務のデジタル化・高度化12人、その他(国家公務員のワークライフバランス推進等)13人。
 【令和8年度地方警察官の増員】
 ◎サイバー空間における対処能力の強化及び匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的な取締りの強化のための増員:最近の治安情勢については、サイバー空間をめぐる脅威が引き続き極めて深刻な情勢にあるほか、特殊詐欺をはじめとする匿名・流動型犯罪グループによる犯罪が重大な脅威となっているなど厳しい状況にある。
 こうした情勢を踏まえ、警戒の空白を生じさせないための組織運営に係る取組みとして業務の合理化・再配置を行ってきたが、それでもなお既存の人員で対処し難い緊急の課題に的確に対処するため、地方警察官の増員を図る必要があるとして、サイバー空間における対処能力の強化、及び匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的な取締りの強化に475人を増員する。
 ◎福島県警察への期限付増員の延長(東日本大震災関係):東日本大震災以降、福島県警察の警察官の増員を措置しており、令和8年以降においても、特定復興再生拠点区域等におけるパトロール機能の強化のため、増員の継続を図る。特定復興再生拠点区域等におけるパトロール機能の強化に92人を増員する。
 【その他】
 ◎地方公務員の定年引上げによる影響を緩和して新規採用者を確保するため、地方警察官279人の期限付き増員を図る。
 【令和8年度警察庁組織改正の概要】
 ◎新設(府令事項):▽捜査支援分析管理官「捜査支援連携対策官」▽国際捜査管理官「国際組織犯罪対策官」▽公安課「ローン・オフェンダー等対策室」▽サイバー企画課「サイバー企画官」。