映像情報メディア学会年次総会 公開講演会「AR・VR最前線」に多数の聴講者

 一般社団法人映像情報メディア学会(ITE、相澤清晴会長)は、「2019年 年次大会」を8月28日(水)~30日(金)の3日間、東京工業大学の大岡山キャンパス(東京都目黒区)で開催した。 同大会は、多岐にわたる専門分野の人々が一堂に会し、発表・討論などを通じてそれぞれの立場から意見を交換する場として開催される。毎年好評の企画講演は、今年もホットなテーマを第一人者が論じる。また、注目されるキーワードに関わる講演を集めて、発表に関する密度の高い質疑が行える特集テーマ講演が行われた。 毎年注目度の高い公開講演会(聴講無料)の今年のテーマは「AR・VR最前線」。近年、AR(Augmented Reality:拡張現実)・VR(Virtual Reality:仮想現実)に関する市場が急速に拡大してきており,医療・教育・エンターテインメントなど、我々の生活に身近な存在になってきた。AR・VRを実現するための技術は観測・制御・表示・認知など様々な領域にまたがっており、それぞれの領域においてこれからのAR・VRの発展を担うであろう興味深い研究が行われている。同講演会ではそうした各領域の研究者を招き、AR・VRの活用事例や最新の研究について紹介した。 講演者は、東京都市大学・向井信彦氏(VRとARの事例紹介)、東京工業大学・長谷川晶一氏および三武裕玄氏(物理エンジンと心のシミュレーションによる人のような存在感を持つバーチャルキャラクタ)、奈良先端科学技術大学院大学・久保尋之氏(インダイレクトビジョンによる潜在的映像の可視化)、NTTサービスエボリューション研究所・巻口誉宗氏(空中像や3D映像で実現する高臨場映像表示)、豊橋技術科学大学・北崎充晃氏(心と身体の未来)。技術開発が急激に進み、注目を集めている分野なこともあり、非常に多くの聴講者がつめかけ、熱心に聞き入り、活発な議論なども交わされた。 今年の企画セッションのうち、企画セッション2では「地上デジタル放送による4K8K放送の研究」が行われた。我が国では、平成12年からBSデジタル放送、平成15年から地上デジタル放送を開始し、また平成30年には新4K8K衛星放送を開始するなど、新たな技術を順次導入していくことで、放送の高度化を実現してきた。特に、昨年12月の新4K8K衛星放送の開始により、日本の主要な放送メディアで4K放送が提供されていないのは、地上放送のみになっている。今回は、新たな地上放送サービスの実用化に向け、放送の未来像を見据えた放送用周波数をさらに有効活用するための放送技術政策の動向について紹介する。新4K8K衛星放送が開始され,地上波による4K・8K放送の研究開発が進められている。同企画セッションでは、地上放送の高度化に向けた技術的取り組みの動向と、2016―2018年度に実施された総務省の委託研究「地上テレビジョン放送の高度化技術に関する研究開発」の成果について講演された。最初に総務省 放送技術課の金子稔氏が地上放送の高度化および技術政策の展望などについて解説した。続いてNHK放送技術研究所の土田健一氏が地上放送高度化方式、パナソニックが地上デジタル放送の階層伝送方式(FDM・TDM・LDM方式の比較)、NHK放送技術研究所が次世代地上放送の映像符号化における雑音除去・帯域制限装置の開発と画質破綻抑制効果の検証および地上放送高度化方式における多重化技術、神奈川大学 中村聡氏が移動受信特性改善、NHK放送技術研究所が大規模実験試験局の整備および東京地区における野外実験について (地上放送高度化方式の野外伝送実験)、NHKテクノロジーズが名古屋地区における多地点固定受信実験について、ソニーが高度化放送方式の初期野外移動受信実験について講演した。 なお、「冬季大会2019」は、12月12日(木)~13日(金)に電気通信大学(東京都調布市)で開催される。