A―PAB オリンピック前に累計500万台目指す

 一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A―PAB)は昨年12月20日、「“新4K8K衛星放送”視聴可能機器台数(2019年11月までの集計値)」に関する記者発表会を開催し, 11月末までに視聴可能機器が270万台となり、10月末の218万台から大幅に増加したことを明らかにした。 冒頭、福田俊男理事長は「放送開始してから1年少しになりますが、2018年12月1日から、およそ半年間は低迷が続き、言わば低空飛行でありました。それから、年の半ばにラインナップが揃い、特に後半になってくるとチューナー内蔵の録画機も相当普及してきましたので、視聴可能機器の台数が想定を超える規模となりました。 新4K8K衛星放送は、民放の場合、スモールスタートという形でスタートしました。しかし、ラインナップが揃ってきたことに加え、視聴者の方から番組を増やしてほしいという要望も高まってきました。これに対し放送事業者でも真摯に取り組み、色々な工夫をしていたたきました。 特に12月1日は、放送開始から満1年、さらにはBSデジタル放送が開始されてから、20年目になるということで、NHKが得意の長時間中継を行いました。民放は5社共同の8時間にわたる番組を相互乗り入れで行いました。これは、BSでは初めての試みであり、皆さん相当力を入れていただきました。さらに、これからの年末年始番組について、各局様々な工夫を凝らした編成になっていると聞いており、こちらも楽しみにしていただければとおもっています。 2019年の年後半はスポーツ満載の年でした。その代表がラグビーのワールドカップで、特に「にわかファン」という言葉が流行語になるほど盛り上がりました。また、放送に加えて、大型画面でのパブリックビューイング(PV)も実施され、その中には8KでPVもありました。そういった画面で迫力ある映像や美しい映像を見ることで、外で見るだけでなく、家庭でも楽しみたいという方も増えてきたいのではないかと思っています。 この12月はまさにボーナス商戦たけなわであります。来年になりますといよいよ東京オリンピック・パラリンピックイヤーとなりますので、新4K8K衛星放送に対する期待も高まってくると思います。7月24日の開幕日までおよそ8か月となります。それまでどれだけ普及するかを皮算用しても仕方がないことですが、相当数にのぼるのではないかと期待しているところです。しかし、一度に注文が集中すると、設置が間に合わないことも想定されますので、準備はお早目にどうぞということをつけくわえていただければと思っています」と挨拶した。 続いて理事の木村政孝氏が「新4K8K衛星放送 視聴可能機器台数、販売現場の状況」を説明した。11月末までの視聴可能機器台数は270万7000台と大幅に増加した。昨年7月以降、月平均約22万台ペースで推移していたが、11月は52万1000台と平均の約2.5倍成長した。この最大の要因は11月から新たに新チューナー内蔵録画機が加わったことによる。これまで新チューナー内蔵録画機を販売していたのが2社だけだったので、電子情報技術産業協会(JEITA)では統計を公表していなかった。最近新たに新チューナー内蔵録画機を発売したメーカーがあったため、11月より公表値を発表したもの。11月分として発表した台数は25万4000台だが、これはこれまでの累計値となる。これが11月分の機器台数を大幅に押し上げている。 また、新チューナー内蔵テレビも21万2000台と増加し、初めて20万台を突破した。さらに、外付け新チューナーも台数は少ないが、前月比4倍の8000台と大幅に増加した。4K対応テレビ購入者が、やはり4K放送を視聴したいということで、価格も安価な外付けチューナーを購入しているのではないかとした。これらにより、単月で過去最高となる台数を記録したもの。 木村氏のヒアリングによると、ある量販店では12月の4Kテレビの販売台数は前年同月比で約4倍になっているという。1年前の4Kテレビは合計で20機種しかなかったが、現在では約100機種に達しており、メーカー数も大幅に増加した。これにより、価格競争が起こり、価格も低下していることから、購入しやすくなっていることが大きいという。これにより12月もテレビ販売は好調に推移するのではとした。 例年量販店では、1~3月は新社会人や学生向けに、新生活キャンペーンを実施する。主に白物家電の販売が中心となるため、AV関連の売上は落ちる傾向になる。しかし、今年の量販店では1~3月もテレビ販売に注力するところが少なくないという。このため、1~3月も4Kテレビの販売台数は期待できるとした。 次に4K8K推進センター長の宇佐美雄司氏が「新4K8K衛星放送コールセンター状況、衛星放送用受信環境整備事業」について説明した。コールセンターへの相談状況は、11月の件数は前月比19%減の247件。相談内容は引続き内蔵テレビ、チューナー、レコーダーに関するものが多いという。また、4K8K機器の操作方法への問い合わせや4K受信不良(方向調整)の相談も増えている。受信設備関連では、既存のパラボラアンテナで受信は可能か、ケーブルテレビでは受信可能かなど、新4K8K衛星放送の受信に関して具体的な相談となっている。なお、「4K画面が暗く感じる」について相談は2件と減少傾向にあるとした。 12月の相談件数は11月比25%増の310件前後と予想している。新4K8K衛星放送視聴可能機器の導入が進んだことから、相談件数も増加したとしている。相談内容は引続き、内蔵テレビ、チューナー、レコーダーが多いという。一方、「中間周波数漏洩対策事業費補助事業」いわゆる「電波漏洩対策」の助成金について、8月1日の受付開始以降、11月末現在では登録事業者数は約5800店、申請件数は約220件、交付決定数は約200件。申請の締め切りは、2020年1月24日(金)の消印有効。ただし、集合住宅の申請には準備が必要なため、できるだけ事前に相談して欲しいとしている。電波漏洩対策の助成金は、2018年度に不正が見つかったため、その調査等で一時打ち切りとなっていたが再開したもの。しかし、手続きの煩雑さなどにより、申請件数は伸び悩んでいる。このため、事業費予算にはかなりの余裕があり、このままでは予算を消化できないで補助事業が終了してしまう。A―PABでは、新4K8K衛星放送の普及促進の一環として、是非助成金を活用して欲しいと呼びかけている。 最後に周知広報部長の冨永勝也氏が「新4K8K衛星放送 各チャンネルのこれからの番組」を説明した。 ◇ 今後の視聴可能機器の台数の推移について、「(2020年1月に発表する)2019年12月末で300万台を超えていると、具体的に盛り上がっていることが分かる」(福田理事長)とした。また、早期に500万台の達成を目指すとした。例えばオリンピック開幕までに500万台を達成するためには、2019年12月から2020年7月の間、月間平均で合計約30万台が必要となる。4Kテレビが20万台超、新チューナー内蔵STBが5万台、新チューナー内蔵レコーダーが2万台を見込んでおり、これに新チューナーを加えると約30万台になる。「道はそんなに甘くないですが、逆にこれを達成しないと本格的な普及につながりません。オリンピックのできるだけ前に達成したい」(木村氏)と意気込みを示した。