新春記念特別号インタビュー NHK 上田会長に聞く

 昨年5月、改正放送法が成立し、NHKはテレビ放送をインターネットで常時同時配信することが可能になった。NHKでは公共的価値を指針に、「公共メディア」への進化を目指してきた。常時同時配信もその一環であり、放送を太い幹としつつ、インターネットも活用し、多様な伝送路で視聴者に「いつでも、どこでも」公共性の高いコンテンツを提供できる環境を作るべく準備を進めている。また、今年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催される。NHKでは高い関心に応えるため、史上最大規模の放送を実施するともに、様々なサービスにより、視聴者の多様なニーズに対応していく。 2017年1月に就任し、1月24日に任期を満了する上田会長に、就任からこれまでを振り返っていただくとともに、「公共メディア」への進化の進捗と課題、東京オリンピック・パラリンピック放送、常時同時配信、防災減災報道への取り組みなどを聞いた。 ――就任からこれまで振り返っていただき、特に心に残った出来事などをお願いします。 上田 天皇の退位・即位に伴って「平成」から「令和」へと変わった昨年は、NHKにとっても歴史的な年でした。昨年5月に改正放送法が成立し、NHKがテレビ放送をインターネットで常時同時配信することが可能となりました。私は、3年前に会長に就任した時から、放送と通信の融合時代にふさわしい「公共メディア」への進化を最大の経営課題として掲げてきました。それだけに、改正放送法が成立したことは感慨深く、NHKが「公共放送」から「公共メディア」に進化するための環境整備が一段と進んだと受け止めています。現在は、常時同時配信と見逃し配信の開始に向けた準備を急ピッチで進めているところです。 また、受信料の値下げは、大きな決断でした。昨年10月に消費税率が引き上げられた際に受信料額を改定せず、実質2%の値下げを実施しました。今年10月にはさらに2.5%の値下げを実施することにしており、合わせて4.5%の値下げとなります。また、受信料の負担軽減策として、「社会福祉施設への免除拡大」「奨学金受給対象などの学生への免除」「多数支払いにおける割引」「設置月の無料化」をすでに実施しており、値下げと合わせると通年で422億円、2018年度の受信料収入見込みの6%相当の還元となります。NHKの毎年度の収入と支出の差である事業収支差金が400億円を超えたことはこれまでにありませんから、それを上回る還元額というのは、今できる最大限の規模だと言えると思います。 昨年11月に東京で開かれたABU(アジア太平洋放送連合)の総会も強く印象に残っています。71の国と地域の274の放送機関などが加盟する世界最大の放送連合で、私はABU会長として会の運営にあたりました。この中では、放送の未来について活発な議論が行われ、アジア太平洋地域の放送の一層の発展に寄与するとともに、「国際公共メディア」としてのNHKのプレゼンスをさらに高めることができたと考えています。 このほかにもいろいろありますが、やはり忘れがたいのは、会長就任1年目にNHKの予算・事業計画が国会において全会一致で承認されたことです。全会一致での承認は、4年ぶりでした。国民を代表する国会で全会一致の承認を得ることが、NHKに対する信頼の証だと考えてきましたから、参議院本会議の採決結果を表示する画面に「反対0」と出た時には、思わず目頭が熱くなりました。それ以来、3年連続で全会一致での承認が続いています。(全文は1月6日号に掲載)