「2030ケーブルビジョン」 日本ケーブルテレビ連盟

一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟(JCTA、東京都中央区、渡辺克也理事長)は、6月30日に連盟内で記者発表会を開催し(オンライン会見も開催)、ケーブルテレビ業界が、地域とともに成長し、更なる発展を遂げるために、2030年に向けて業界が担うべきミッション、目指すべき姿及びアクションプラン「2030ケーブルビジョン」を策定したと発表した。 わが国は、少子高齢化の進展や、コロナ禍による「新たな日常」の浸透など、社会構造が大きく変わる局面を迎えている。こうした変化を受け、政府の本格的なデジタル化推進が始まり、全国各地の地域行政も持続的な成長を求め、Society5・0やDX関連の取組を加速させている。また、地域においてもそれに呼応した取り組みが進むことが想定される。 業界が取り組んできたサービスや事業は「地域づくり」そのものであり、地域が直面している状況を直視し、業界と各事業者が一体となってこのビジョンを推進していくことが必要と考えるとし、『コンテンツとインフラの両方をもつ事業者として、地域ニーズに総合力で臨んでいく』としている。 目指すべき姿~6つのアプローチは次の通り。 ◇放送が変わる『地域における情報メディア・プラットフォームになる』◇コンテンツが変わる『地域の魅力を創出するコンテンツプロデューサーになる』◇ネットワークが変わる『安全で信頼性の高い地域ナンバーワンネットワークを構築する』◇ワイヤレスが変わる『地域MNOとして第5のモバイルキャリアを目指す』◇IDで変わる『ケーブルIDで地域経済圏を構築する』◇サービス・ビジネスが変わる 『地域DXの担い手になる』。 会見で渡辺理事長が次のように挨拶した。 ケーブルビジョン2030の考え方について簡単にお話しいたします。ケーブルテレビのこれまでの歴史的なものを簡単に振り返ってみますと、1955年に伊香保からわが国初のケーブルテレビが始まり、当時は難視聴地域あるいは区域外で東京波を他の地域で観るといった形でケーブルテレビが発展してまいりました。大きな転機となったのが1980年代になります。いわゆるスペースケーブルネットという通信衛星を介した番組配給に併せて都市型ケーブルテレビということで、まさに多チャンネルのケーブルテレビの時代がこの80年代に突入したわけでございます。当時の普及率はだいたい15パーセントぐらいでございました。それ以降90年代に入りまして技術革新に伴いまして、ケーブルテレビでケーブルを使ったいわゆるインターネットのサービスや電話サービスといった、当時はトリプルプレイと言いましたが、そういった形で通信関係の対応をさせていただいたというのが流れです。さらに2000年代に入りましてテレビのデジタル化ということで、地デジ化ということに対してケーブル業界としても対応させたという形で放送関係の方々と連携をとりながら対応しました。こういったことを踏まえて普及率というのは50パーセントと多くの方々がケーブルテレビを通じて放送を観ているという環境になっています。2010年代に入りまして4K化さらには無線のサービスという形で対応してきました。振り返ってみますと10年単位で我々ケーブル業界としましては、情報通信技術の進展等を踏まえて、また地域の方々のニーズを踏まえて進展してきたということが言えるかと思います。 こういった状況の中で、10年先の2030年をみてわが国がどういったことに直面しているかということで、少子高齢化、人口減少、さらにはグローバル経済における日本の地位が低下しているといった状況に2030年代になるのではないかといわれている状況です。さらに昨年からはコロナを踏まえての生活あるいはビジネスの仕方を含めて大きな変化がございました。特にケーブルテレビは地域経済の対応がどうなってくるのかということに加えて、移動しない、接触しない。これが新たな日常といわれています。働き方あるいはライフスタイルも大きな変化がございました。また政府においてもデジタル庁が今秋、設置される予定ですが、政府全体としてのデジタル化に向けての大きな動きがあるという状況です。今はコロナによって移動できない社会ですが、ポストコロナは移動しなくていい社会。こういったことが社会として登場するんじゃなかろうかということでございます。これらの実現に関しましては情報通信技術、ICTなくしては実現し得ないものです。我々ケーブルテレビ業界にとりましてはこの移動しなくていい社会というのは、新しいチャレンジとともに大きなチャンスになるだろうなという認識を持っているところです。 こういったことを踏まえてケーブルテレビ業界として、今後、どう地域として共に成長し、さらなる発展を遂げるにはどういったことに対応したらいいだろうか。また地域社会や住民の方々のために、地域で役に立つようになるにはどういった意識を持って対応すべきなのだろうか。こうした思いを強く持って、2030年代に向けて我々はどういったことを実行していくべきなのか。それを具現化するために昨年9月から本ビジョンの検討に着手しました。今の現状のまま何もしなかったらどうなるかといういわば最悪のシナリオも、我々業界としても直視しつつ、さらにそうした状況を踏まえて、どういったことにわれわれ取り組まなければいけないか。6つのアクションをまとめました。さらにそれらに取り組むことによって、将来どういった社会に我々ケーブル業界として貢献できるのか、CATVの社会像をわかりやすく説明する資料としてイラストも作成しました。 これらの実現を図るためには当然のことながらケーブルテレビ業界だけでは実現できないことばかりです。そういった意味で地域の方々、多くの業界の方々、関係省庁の皆様など多くの方々のこれまで以上ご協力ご支援をいただくことが不可欠でございます。引き続き、ご理解とご支援を切にお願いしたいと思っております。また今回のビジョン策定が我々としてのゴールではなく、むしろこれからが本番です。特にこれから2年間は2030に向けての勝負の年となるだろうと。そういった認識を強く持っています。そういった観点からこのビジョンを受けまして、これらの対応を具現化するために連盟として2030ケーブルビジョン戦略推進会議を設けて具体的な取り組みに着手していきたいと思います。ぜひ皆様方もこれまで以上のご理解、ご支援等を賜りたいと思っています。 続いて、塩冶憲司副会長による「2030ケーブルビジョン」概要説明ビデオ放映、同イラストの説明があった。    ◇ 「2030ケーブルビジョン」の『2030年に向けたアクションプラン』では〝強みを最大限に発揮〟とし、掲げたのは▽私たちのサービスや事業は、地域づくり《SDGsへの取り組み》そのものである▽顔が見え、足回りが利く事業者として、高齢者はじめ、デジタル難民のサポートができる▽コンテンツとインフラの両方をもつ事業者として、地域ニーズに総合力で臨むことができる▽地域の特性や課題に応じて、多様性のある、しなやかな事業の組み立てができる▽「頼りになるのは地元のケーブル」を徹すれば、地域のハブ機能を果たすことができる▽お客様のニーズに総合力で真摯に向き合えば、ブルーオーシャンの世界を作ることもできる▽個社対応が難しいテーマには、オールケーブルの業界連携をもって臨むことができる―である。また、〝こんな姿勢で臨みたい〟として次の5点を挙げた。①各社の事業環境に照らしながら、『それぞれの会社のビジョン』に仕上げていくことが大事②10年の計で考えれば、足元の事業基盤強化から、新しいチャレンジまで、考えうる選択肢はたくさんある③「やれるものからやってみよう」「どうやったら実現できるか」の思考で臨む④2030年の社会を念頭におきながら、今から、具体的な行動を着実に実行していくことが必要⑤「変われるものが生き残る」の覚悟にて、さらには「変化を創造する業界へ」。 そして、「目指すべき姿」の実現に向けて、6テーマでアクションプランを策定し、『新たな事業領域を創出し、顧客創造を図る』とした。 業界共通のアクションプランのポイントは『従来のビジネスに固執せず、業界をあげた取り組みとする』。▽『2030ケーブルビジョン』を啓発し、真の業界連携の実現による共通目標を達成▽ケーブルテレビ関連業界団体間の一層の連携▽働き方改革や労働環境整備の取り組みを、コロナ禍における期間限定の対応とせず、制度や運用の常態化を進め、業界をあげて、「健康経営、さらには社員の健康と幸せ(Well being)」を実現▽デジタル領域を事業推進する人材の育成・確保・活用に向けて、業界の支援策を検討し、順次、実行▽進捗状況の定期的なフォローアップ、課題に応じた推進体制の構築・展開、適切なビジョンの改定▽各分野において、競争領域と協業領域のコアをはっきりさせ、パートナーシップを推進▽次期ケーブルIDプラットフォーム、AJC-CMSなどの「業界連携の取組」を強化、発展させる▽「大手事業者が実証を重ねた、新たなサービスモデルの業界内展開」。「中小規模事業者による実践から生まれた、スモールビジネスの業界内横展開によるスケール化」両面から業界連携を進めていく―を打ち上げた。 2030年への飛翔シナリオは『地域DXで地域を豊かに、人々を笑顔に』。①放送・通信(有線)の既存サービスは、商品の強化・改善、バンドル強化等で成長を維持する②BtoB/Gへの注力、広い範囲のコンテンツ事業化、BtoC事業の拡大(電力・ガス・新サービス)により、新規事業領域の拡大と顧客創造で多収益化を図る―とした。