NHK 実物大8K映像で鑑賞する「ゲルニカ」

NHKはこのほど、「”実物大”8K映像で鑑賞する『ゲルニカ』」プレス見学会をNHK放送技術研究所で開催した。 ゲルニカは20世紀を代表する傑作と言われており、1937年にスペイン北部の町であるゲルニカが無差別爆撃されたことを知ったピカソが書き上げたもので、縦3・5×横7・8mもある巨大な作品。決して日本には来ないとされている、門外不出の傑作を8Kで撮影して、日本で巨大なモニターに映し出し、子供達や著名人たちに実物大の「ゲルニカ」を間近に見てもらったのが、「ゲルニカ」が来た!~“実物大”8K映像の衝撃~となる。 見学会では番組の短縮版を上映した。NHK担当者は「ゲルニカという絵は色々な感じ方があると痛感しました。番組では子供達や上白石萌歌さん、林修さん、みうらじゅんさん、いとうせいこうさん、冨永愛さん、宮本亜門さん、横尾忠則さん、ジミー大西さんなど10人以上の方に見ていただいたのですが、みんなが全然違う感想を話していました。それがこのゲルニカという絵の魅力、奥深さなのかなと思います。特に8Kでご覧いただくことにより、現地の美術館で実際に見るのより、間近に見られる他、アップで見ることができるので、細かな筆遣いなどをクローズアップして見ることができます。 今回、このような形で1つの傑作絵画を8Kでつぶさに撮影して、実物大で見ていただくことを初めて制作したのですが、今後、レンブラントの『夜警』のような大きく日本には来ないような絵画を同様に制作できれば非常に意味があることだと思います。 特に子供達が教科書や図鑑の写真でみるのではなく、間近に実物大で見ると非常に面白い感想が出てくるなとつくづく」感じました。“絵画”に向き合うことが、8Kにより可能性が広がるとのではと制作者として感じました」と語る。 続いて450インチスクリーンに8Kで撮影した実物大に表示するデモを行った。なお、掲載画像の中心部が光っているのは、スクリーンの調整が上手くいかなかったためで、実際の映像は光っているわけではないという。 ゲルニカはモノクロの絵画だが、グレーの部分は7~8のグラデーションになっている。左上の部分に牛が描かれているが、牛が何を意味するのかなどピカソは何も語っていない。牛を8Kで撮影することにより、クリアに見ることができ、下書きの跡もはっきりと写っていた。線が無造作に残されており、目の位置が大きく変わったことがはっきりと分かった。 また、ゲルニカには人間以外に、様々な動物が描かれており、例えば馬では体を槍のようなものが貫いているように見える。馬の顔のアップを見ると、よだれのようなものが滴っているのを確認することができた。さらに、暗い部分に鳥が描かれていたが、その鳥が机もしくはテーブルに乗っていたことはほとんど知られていなかったとしている。 番組の撮影は、コロナ禍の影響で日本からロケ隊を送ることができなかったので、リモートで現地のコーディネータとクルーと協議しながら実施した。リモートはLiveUを用いて映像も音声も直接やりとりができるシステムを構築している。日本から要望を逐一相談しながら、現地のカメラで撮影した。撮影期間は5~6日かかった。通常、このような名画を収蔵している美術館で撮影を行う場合、休館日か展示時間が終わった夜間になることが多い。しかし、ゲルニカの場合は、展示している最中も撮影が許された。しかし、8Kカメラは調整などに時間を要するため、5~6日を要したという。スタッフはスペイン在住がほとんどで、一部フランスからも参加した。基本的には日本人がメインで、一部現地の人にサポートしてもらった。 カメラはメインがREDで、一部ブラックマジックを用途に応じて使用した。美術館のスタッフが見守る中、安全面に十分に配慮し、クレーンカメラなども使用している。 番組「ゲルニカ」が来た!~“実物大”8K映像の衝撃~はすでにBS8Kで放送済みだが、BSプレミアムでも2月12日(土)午前8時45分~9時45分に放送される(BS8Kと一部内容が変更になる可能性がある)。また、関連番組として、日曜美術館「8Kで体感する ゲルニカ」がEテレで1月16日(日)午後8時~8時45分に放送される。(全文は1月3日号に掲載)