日本コミュニティ放送協会・久田五海代表理事スペシャルインタビュー~「市民をパートナーに共に歩む」

 コミュニティ放送は、放送エリアが地域(市町村単位)に限定されるため、地域の商業、行政情報や独自の地元情報に特化し、地域活性化に役立つ放送を目指している。営業エリアの狭さをカバーするため地区ごと、全国での共同営業に取組むほか、使命ともいえる防災・災害放送では地域と緊密な連携を保つなど、様々な問題に放送を通じて貢献している。
 一般社団法人日本コミュニティ放送協会(JCBA、東京都港区)は、総務省・関係機関が認める唯一の団体で、コミュニティ放送事業者の相互啓発と協議により放送倫理の向上を図るとともに、コミュニティ放送事業者の共通問題の解決を推進することにより、コミュニティ放送の健全な発達・普及を促進することなどを目的としている。JCBA 代表理事の久田五海氏(浜松エフエム放送 )に、コミュニティ放送局の現状、コミュニティ放送に必要なもの、今後の抱負などについて聞いた。

 ―JCBAの現状と役割は?
 久田 私はJCBA理事として全国各地の放送局を訪れる中で、地域に深く根ざし、住民の皆さまから高い信頼を得ているコミュニティ放送局が数多く存在していることを改めて実感しております。こうした「地域との信頼関係」こそが、私たちの最大の強みであり、コミュニティ放送の存在意義そのものです。
 一方で、SNSを中心とした情報発信の加速により、社会全体が大量の情報に晒されています。情報が溢れる今、何を信頼し選択すべきかという視点がますます重要になっています。
 私たちコミュニティ放送局は、情報の量ではなく、「正確さ」「的確さ」を武器に、住民にとって本当に必要な情報を届けることができます。だからこそ、私たちの役割は決して色あせるものではなく、むしろ今こそその真価が問われていると考えています。
 JCBAとしても、会員局の皆さまと緊密に連携し、共に歩む姿勢がこれまで以上に求められています。私はその思いを胸に、この職務に全力で取り組んでまいります。
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 ―今後の方針と改革すべき点は?
 久田 組織への信頼を得るには、私たち自身が変わっていかなければなりません。これは、前代表・鈴木氏と共に進めてきた改革の根本的な理念であり、今後もその方針を揺るがせることなく継続していきます。
 中でも、定款や細則の見直しは、時代に即した組織運営のために欠かせない課題です。就任当初より早急に取り組むべきだと感じ、現在も継続して取り組んでいます。
 また、地区協議会においては、活発に活動している地域もある一方、十分に機能していない地域も見受けられます。地域に根ざした活動を再構築するためにも、地区協議会の再活性化は急務です。
 JCBAだけが先行してはなりません。会員局や地域と共に歩み、多様なニーズに応える組織であることが、今後の信頼を築くカギになると考えています。私たちは過去を丁寧に検証しながら、未来に向けた新たな土台づくりを進めてまいります。
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 ―未加入局へのアプローチは?
 久田 JCBAは、これから新たに加入を希望される放送局を心より歓迎いたします。仲間が増えることは、私たちの活動にとって非常に大きな力となります。
 加入することで、放送倫理の向上、情報共有による相互啓発、そして協会内でのネットワーク構築といった大きなメリットが得られます。私たち自身が、社会の規範となる活動を実践し、その姿を通じて加入の意欲を喚起していきたいと考えています。
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 ―コミュニティ放送の社会的役割ついて
 久田 私たちの役割は、「信頼される情報を日常的に発信する」ことに加え、災害時には地域住民の命と生活を守るメディアとして機能することです。臨時災害放送局として、減災・復旧に貢献することは、私たちの不可欠な使命です。
 同時に、「我が街の放送局」として地域に認知され、娯楽性や話題性を持ち合わせた魅力ある放送を行うことも大切です。日々の積み重ねによって信頼と親しみを育てていく姿勢が求められます。
 また、地方公共団体との連携は、災害対策や地域づくりにおいて非常に重要です。放送局と自治体がパートナーとして協力しあう関係の構築が、地域の安心と活力に直結します。
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 ―災害対応の強化と課題について
 久田 現在、いくつかの地区協議会では、県を越えた相互支援体制が構築され、人材・物資・資金などの協力体制が整いつつあります。さらに、総合通信局との連携により、臨時災害放送局の訓練も実施しています。
 しかし、実際の災害時にはリソース不足や、放送局・自治体間での意識の格差が課題として浮き彫りになります。特に、自治体側の担当者が制度を十分に理解していないケースも多く、対応に遅れが出るリスクがあります。
 そのため、今のうちから制度や仕組みを広く周知し、災害への備えを地域全体で進めていくことが重要です。JCBA設立から30年を迎える今こそ、次の10年・20年を見据えた災害対応の体制強化が求められています。
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 ―災害意識の醸成と啓発活動ついて
 久田 「自分の地域には災害は来ない」といった油断が、結果として大きな被害をもたらすことがあります。地域住民一人ひとりの意識を高めることこそが、被害の軽減につながります。
 今後もさまざまな場を通じて防災意識の醸成と啓発活動を進めてまいります。こうした継続的な取り組みを通じ、コミュニティ放送が地域社会にとって欠かせない存在であり続けることを目指します。(全文は7月30日号3面に掲載)
    

この記事を書いた記者

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成澤誠
放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。