テレビ北海道&Zabbix、Media over IP統合監視の実証開始

Zabbix Japan LLC(東京都港区、寺島広大代表)はテレビ北海道と共同で、放送業界初となるMedia over IP(MoIP)制作システムの統合監視に関する実証実験(PoC)を2025年3月より実施していると発表した。  

同PoCでは、MoIP制作システムにおける統合監視手法の確立、その実現性の検証を目的としている。まず、MoIP制作システムに対する監視手法は、従来のSDI(Serial Digital Interface)ベースのシステムからIPベースのシステムへの移行によって生じる「監視レイヤーの変化」に対応する必要がある。具体的な変化の内容は以下の通り。
 ▽SDIルーターからメディア用ネットワークスイッチへの移行:ハイスピードインターフェース(25G/40G/100G)疎通状況確認の必要性
 ▽物理接続から論理接続への移行:IPアドレス、IPマルチキャスト、RTPストリームといった論理的な接続状況の可視化の必要性
 ▽Black BurstからPTPを用いた絶対時刻同期システムへの移行:PTP(Precision Time Protocol)の同期状態や、BMCA(Best Master Clock Algorithm)の状態の可視化の必要性
 ▽すべての機器がネットワークスイッチに接続される構成:MoIPシステム全体を対象とした一元的な統合監視の必要性

 これらの変化は、従来の「点」での監視ではなく、MoIPシステム全体を「面」として捉え、放送機材、ネットワークインフラ、センサー、クラウド環境などを包括的に一元監視する体制を構築することを意味する。これにより、従来はシステムごとに分断されていた監視オペレーションを1箇所に集約し、監視業務全体の効率化を図ることが可能になる。
 同PoCでは、ライブ制作系システムを構成する放送機器を直接監視するのではなく各システム単位で監視しているアラーム監視装置との連携を主としている。Zabbixが各システムのアラーム監視装置と連携することで効率的に監視することが可能。
 Zabbixでは各システムの状態変化レベルに合わせて各システム担当者に通知することが可能。これにより、各システムのアラーム監視装置単体の常時チェックも不要となる。
 2025年5月22日には、同PoCの中間報告をテレビ東京系列6局、および在札民放3局、およびPoC協力企業(NEC、パナソニックコネクト、ネットワンシステムズ)に向けて実施し、総勢50名が参加、次世代監視モデルの意義と有効性を共有した。
 同PoCは2026年1月末まで継続予定であり、テレビ北海道との協議を通じて、最終成果を踏まえた運用モデルの構築、さらには他局・全国展開への応用も視野に入れているという。

 テレビ北海道 執行役員 技術・DX推進局長の高橋康二氏は、「IPベースシステムの障害特定は、単体監視では時間がかかる課題がありましたが、PoCにより統合監視の有効性を確認できました。業務ネットワークを含む局全体の統合監視を目指し、Zabbixのさらなる活用を期待しています」と述べている。

 電波タイムズの取材に対して、「この実証実験は、PoCでは、Zabbixが標準で搭載していない監視手法をZabbix Japan主体で実装し、動作検証を進めています。その実装検討は、一昨年の秋ごろより開始しています。最終成果を踏まえた運用モデルの構築は2026年以降を予定しています」(Zabbix Japan)と答えた。

この記事を書いた記者

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成澤誠
放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。