NHKスペシャルがIBCで最優秀賞を受賞

 NHKは、NHKスペシャル「ディープオーシャン 幻のシーラカンス王国」がオランダ・アムステルダムで開催された国際放送機器展「IBC2025」において、革新的なイノベーションをもたらした共同プロジェクトを表彰する「IBC Innovation Awards」の Content Creation 部門の最優秀賞を受賞したと発表した。
 IBC Innovation Awards は、テクノロジーパートナーと共に革新的な取り組みで技術的課題を解決し、社会問題や環境問題に取り組んだプロジェクトを称える賞であり、今回の受賞はNHKの高度な技術力と表現力が国際的に高く評価されたことを意味する。
 受賞した『Deep Ocean: Kingdom of the Coelacanth』(日本語名:ディープオーシャン 幻のシーラカンス王国、初回放送日:2025年3月2日)は、世界初となるシーラカンスの8K撮影と、22・2ch立体音響で制作したドキュメンタリー番組。本番組は、海外放送局のZDF/ARTEと非営利海洋調査組織のOceanX との国際共同制作であり、(株)後藤アクアティックス、SGO、(株)レスターなどの技術パートナーの協力のもと制作した。
 舞台は赤道直下、インドネシアの中央部に位置するスラウェシ島沖。最新鋭の深海調査船 Ocean X 号に乗り込み、3台の潜水艇を駆使して昼夜を分かたず徹底的にシーラカンスに密着。8時間ずつ深海で交代させ、徹夜で観察・撮影する大調査「72時間連続追跡」を世界で初めて敢行。誰も見たことのない生きた化石、シーラカンスの真の姿に新開発の8K超高感度深海カメラで迫った冒険ドキュメント。
 この番組は、深海を 340 度パノラマで見渡せる球体型透明潜水艇と新たに開発した機材の活用により実現した。シーラカンスは代謝が非常に低く、わずかな刺激にも敏感なため、チームは長時間の撮影を可能にする、超高感度・超高解像度の8K 深海専用カメラシステムを2種類開発した。あわせて、超高感度カメラの性能を最大限引き出すため8K補正レンズの設計も行った。これらの新技術が、これまでにない詳細な映像記録を可能になったという。
 NHK メディア技術局コンテンツテクノロジーセンター センター長の白石好孝氏は、「超高感度・超高解像度の8K深海専用カメラと8K/22・2chワークフローはNHKが長年に渡り培ってきた技術力と技術パートナーの皆様の知見を結集させたことで開発・制作することができました。
 放送メディア業界はもとより国内外からのシーラカンス研究者にも認められ、大変うれしく思います。
 改めて関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
 今後も、最新技術の開発に取り組み、視聴者の皆様に新たな感動を届けてまいります」とコメントしている。

(ⒸNHK/ZDF/ARTE/OceanX)

この記事を書いた記者

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成澤誠
放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。