映像情報メディア学会 冬季大会、12月18日(木)・19日(金)に慶應義塾大学 矢上キャンパスで開催

 一般社団法人映像情報メディア学会(ITE、齋藤英雄会長)は、12月18日(木)・19日(金)に、慶應義塾大学 矢上キャンパス(横浜市港北区)において、「2025年映像情報メディア学会冬季大会」を開催する。95件の一般講演では、映像表現・CG、次世代符号化・伝送方式、メディア工学、ヒューマンインフォメーション、情報センシング、立体メディア技術などから最新技術や取り組みが報告される。また、毎年好評な企画イベントでは、スポーツとハイパフォーマンス、AI技術、インダストリアルメタバースなどホットなテーマについて講演が行われる。
 映像情報メディア関連の技術は、AI、IoTなどのICT技術の進展を背景に、4K8K放送や第5世代移動通信システム(5G)などの新しい放送、通信サービスだけでなく、スポーツや医療、ロボット、自動車など幅広い分野への応用が期待され、多くの研究者・技術者が多様な視点で精力的に研究開発を進めている。こうした変化に即応し、できるだけ新しい情報を持ち寄って大いに意見交換をする“場”を提供するため、映像情報メディア学会では冬季大会を毎年開催している。
 今回も例年通り企画・特別イベントに注力しており、興味深いテーマについて講演などが行われる。初日の18日には、企画セッション1(9時~13時20分、会場A)「スポーツとハイパフォーマンス情報技術」(企画:スポーツ情報処理研究委員会)が行われる。同セッションは、スポーツと親和性ある情報処理に関する話題を紹介し、体育教育・競技スポーツ実践のための情報処理技術の一層の利活用促進となる議論の場となる。トップアスリートらによる極めて難しい動きの獲得および表現の可能な映像情報処理は、アリーナやスタジアムにいる人々に対して観戦中のプレー価値をわかりやすく伝えられて、スポーツ愛好家による競技場訪問などに繋がる情報技術である。このような情報処理時に得られたデータを基にした知見が学校体育や地域スポーツに取り組む生徒また学生の気持ち等に寄り添う指導に、ひいては人々の心身の健康増進に広く役立てられる。スポーツと情報関連技術これら両面から新技術開発などの示唆および気づき等ある研究フィールド〝SportImTech〟が期待される。
 座長は鈴木元樹氏(室蘭工大)と三ッ峰秀樹氏(広島工大)。開会挨拶は日本体育大学/スポーツ情報処理研究委員会委員長の角田貢氏。講演1―1「ウェアラブル脳波計による脳状態推定とその応用 ~ 身体拡張を目指して ~」を東京大学 荻野幹人氏、講演1―2「ポジトロン断層撮像法による脳のハイパフォーマンスイメージング」を量子科学技術研究開発機構の山谷泰賀氏、講演1―3「実戦におけるトップアスリートの心―身体―脳のダイナミクス」をNTTの柏野牧夫氏、講演1―4「運転技能に関連する情報処理の基礎 ~ 個人の特性に応じた運転フィードバック提供のために ~」をSUBARUの和田修平氏、講演1―5「グラフ信号処理を用いた3Dデータの品質改善及び評価手法」をKDDI総合研究所の渡邊良亮氏、講演1―6「ハイパフォーマンススポーツのための映像センシング・認識処理」を慶應義塾大学の斎藤英雄氏、講演1―7「バスケットボールのハイパフォーマンス分析の最前線」をデータスタジアムの柳鳥亮氏、講演1―8「Integrating Multi―Object Information for Dominant Area Analysis in Badminton」を東京都立大学のMuhammad Abdul Haq氏、講演1―9「パブリシティ権とAI」を明治学院大学の櫻井成一朗氏、講演1―10「スポーツ動画像解析の研究開発とAI活用によるビジネス創出」をNTTドコモの春山知生氏、閉会の挨拶を広島工業大学/スポーツ情報処理研究委員会副委員長の三ッ峰秀樹氏が行う。
 企画セッション2は「クリエイティブ、広告、マーケティングにおけるAI技術」(企画:メディア工学委員会、18日13時~15時30分、会場B)。
 人間の注意/感情/行動に影響を与えることが求められるクリエイティブ・広告・マーケティングの領域では、近年、AI技術の発展と活用が加速度的に進んでいる。同セッションでは、これらの領域に携わる企業の研究者やエンジニアをお招きし、最前線での研究開発動向や取組事例を紹介してもらう。
 座長は田良島周氏(NTTドコモビジネス/都立大)と横井謙太朗氏(東芝)。企画2―1「クリエイティブ、広告、マーケティングに関するAI技術の研究開発と取り組み」をNTTドコモの井手秀徳氏、企画2―2「Eコマース領域でのクリエイティブ生成AIの技術開発と活用事例」をLINEヤフーの吉橋亮太氏、企画2―3「Human―CenteredなAI研究と広告クリエイティブ領域への応用:アルゴリズムによる人の拡張、人の代替の限界」を博報堂DYホールディングスの熊谷雄介氏、企画2―4「大規模行動モデルのマーケティングへの活用」をNTTの倉沢 央氏が講演する。
 企画セッション3は「現場が変わる、働き方が変わる:インダストリアルメタバース最前線」(企画:大会実行委員会、18日14時50分~17時40分、会場A)。
 コロナ禍による行動制限の中で注目を集めた「メタバース」は、エンターテインメント分野を中心に、人々のコミュニケーションを拡張する手段として拡がりをみせている。
 一方、産業分野における「インダストリアルメタバース」は、仮想空間と現実空間を融合させることで、設計・生産・保守・教育などのプロセスを革新し、現場のあり方や働き方そのものを変えつつある。
 同セッションでは、産業界から専門家を招き、インダストリアルメタバースの最新動向、具体的な活用事例、関連技術、そして導入にあたっての課題について講演してもらう。
 座長は横山徹氏(日立)と堀内俊治氏(KDDI総合研)。企画3―1「XR標準化の動向と医薬品物流・リハビリ分野でのインターバース実証」を国立研究開発法人産業技術総合研究所の蔵田武志氏、企画3―2「日本デジタル空間経済連盟と日立製作所のメタバースへの取組み」を日立製作所の影広達彦氏、企画3―3「現実拡張メタバースで現場作業を支援するAIエージェントNaivy」を日立製作所の井上祐貴氏、企画3―4「鉄道車両メンテナンスの現場力を高める『車両メタバース』」を東武鉄道の間仲祥司氏と日立製作所の平松義崇氏、企画3―5「NVIDIA RTX PRO Blackwellで加速するフィジカルAIと産業デジタル化」をNVIDIA合同会社の高橋想氏、企画3―6「バーチャル空間の活用によるDX」をKDDIの菅野勝氏が講演する。
 19日の企画セッション4は「2024年度各賞受賞企業による記念講演」(企画:大会実行委員会、15時20分~18時、会場A)。
 2024年度に同学会が主宰する各賞を受賞した企業の方々の協力を得て、記念講演企画を行うにした。いま放送の現場で用いられている技術や、次世代の放送を予感できる技術、そして研究の最前線の技術について、それぞれわかりやすく、親しみやすく紹介してもらう。
 各企業でどんな研究開発が行われているかについて、企業の特色も垣間見ることができ、大学関係者、学生の皆さんにも貴重な機会となっている。
 座長は堀内俊治(KDDI総合研)。企画4―1技術振興賞 進歩開発賞(現場運用部門)受賞「特殊カメラを用いたゴルフ打球軌跡リアルタイム描画システムの開発」を日本テレビ放送の鈴鹿聖之介氏および鳥谷周太朗氏、企画4―2技術振興賞 進歩開発賞(現場運用部門)受賞「同一チャネルで全二重伝送を可能にするFPU高度化」を毎日放送の柴山武英氏、企画4―3技術振興賞 進歩開発賞(研究開発部門)受賞「コンテンツレイヤリング対応VVCマルチレイヤエンコーダの開発」を日本放送協会の市ヶ谷敦郎氏、企画4―4技術振興賞 コンテンツ技術賞受賞「顔認識AIを活用した新番組『変顔スパイ』の制作」を日本テレビ放送網の三浦祐樹氏、企画4―5技術振興賞 コンテンツ技術賞受賞「次世代伝送回線を活用した新たなバーチャルプロダクション演出による音楽番組での取り組み」をテレビ東京の宮澤真子氏、企画4―6技術振興賞 コンテンツ技術賞受賞「3Dスキャンワークフローの簡易化とその活用」を日本テレビ放送網の戸部雄輝氏、企画4―7映像情報メディア未来賞受賞「理想的なヘッドマウントディスプレイの要求仕様の解明」を日本放送協会の原澤賢充氏が講演する。
 この他、「フェロー記念講演」も実施する。
 映像情報メディア学会には、テレビジョンを含む映像情報メディアに関する学術および産業分野の発展・普及・振興あるいは本学会事業の発展に対して、特に貢献が顕著と認められる会員に高い尊敬と深い感謝の意を表するための制度として、フェロー会員の認定制度がある。本同企画では、新たにフェローの称号が贈呈されました皆様を講師として招き、映像情報メディア技術の発展に寄与した業績を講演してもらう。
 ブリルニクスジャパンの髙柳功氏が「真実としての画像入力と広ダイナミックレンジ撮像技術」と題して講演する。
 生成AI技術の発展は、社会生活および個人生活に多大な恩恵をもたらしている一方で、物理世界の情報を正確に担保するために、高精度かつ高確度な画像情報が一層重要となっている。
 過去から現在に至るイメージセンサの発展を振り返ると、感度、分解能、フレームレートなどの指標において、すでに人間の視覚を超える性能を実現しており、イメージセンサの用途やその重要性にも変化が見られる。
 同講演では、特にイメージセンサにおける広ダイナミックレンジ(HDR)性能の向上、すなわち検出感度および飽和レベルの改善に注目し、HDR技術を体系的に論じる。
 さらに、招待講演として一般財団法人マルチメディア振興センターの飯塚留美氏が「欧米における4Kコンテンツの放送・配信に関する動向 ~ 米英仏を中心に ~」を講演する。
 欧米では地上波の次世代放送規格への移行が進みつつあり、一部の国では4Kチャンネルが開始されているが、全面的な移行には至っていない。
 他方で、4K対応のコネクテッドTVや高速ブロードバンドの普及により、4Kコンテンツのストリーミング視聴が可能となり、SVODをはじめTVアプリやFASTなどでの4Kコンテンツの配信が増えてきている。
 また、4Kコンテンツのビジネス展開をめぐっては、高画質の視聴体験にとどまらず、番組の内容にあわせたサービスを組み合わせることで、新たな視聴体験の提供や収益源の確保などが模索されているところだ。同講演では、欧米における地上波4Kや4K配信をめぐる現状と課題について解説する。

画像は昨年の模様