ソニー、〝つなぐ〟でコンテンツ制作の未来へ
ソニーはInterBEE説明会を開催した。今年は「Creativity Connected ともに〝つなぐ〟コンテンツ制作の未来へ」をテーマとしている。
前半はソニー メディアソリュ―ン事業部の村田雅和事業部長が説明した。
メディア業界は、動画需要は指数関数的に上昇している。一方、フェイクニュースの問題や、正確性などコンテンツの内容そのものへの要求も増大している。一般的にはこれは相反するものなのだが、同社ではネットワーク、ソフトウェア、AI、XRなどの技術を導入することで、両立を目指すという。
〝つなぐ〟は大きく分けて4つの意味があり、テクノロジーでソリューションをつなぐ、テクノロジーとクリエイティビティをつなぐ、テクノロジーでワークフロー自身をつなぐ、そしてテクノロジーとロケーションをつなぐとなる。
1つ目のテクノロジーでソリューションをつなぐということで、ニュース制作とライブ制作の柔軟な制作環境と新たな価値創出。オンプレとクラウド、ハードウェアとソフトウェア、それに加えてAI 技術の融合など、全体のソリューションを提案することにより、ユーザーの要求に応じたフレキシビリティに富んだ制作環境を提供する。
メモリーカムコーダー「PXW―Z300」は、カムコーダーとして世界で初めて動画への真正性情報を記録するC2PA規格(さまざまな種類のメディアの出どころと来歴を追跡できるようにするオープンな技術標準)に対応。また、5Gやクラウド技術を活用したワークフローに対応し、収録素材をその場で伝送してクラウド上で共同編集を行うといった、より即時的な映像制作を可能。
LiveU社がソニーとのパートナーシップに基づいて共同開発した小型データトランスミッター「LiveU TX1」を、国内で初めて展示(参考展示、2026年商品化予定)。複数の通信回線を束ねて使用することで伝送速度を向上させる「ボンディング伝送」や、カメラにUSB接続するだけで自動的に素材伝送を行う機能を備える。
より柔軟な運用に対応するニュース制作「Contents Production Accelerator(コンテンツプロダクションアクセラレーター)」は、パッケージ型を採用した新たなニュース制作システム。従来の放送局向けシステムはカスタマイズベースで構成され、運用負担が大きいことに対して、本システムは標準化された仕様を採用することで、より柔軟に定期的なバージョンアップやセキュリティ対策を取り入れることが可能になる。
2点目のテクノロジーとクリエイティビティをつなぐでは、新たな映像表現を可能にするためのイメージング商品のアップデートを紹介した。
マルチパーパスカメラ「HDC―P50A」の最新バージョン(2025年9月対応)を展示した。同機は小型軽量で撮影の自由度が高いことに加え、カメラコントロールユニット(CCU)との接続にも対応したシステムカメラ。2025年9月のアップデートで、CCUとの接続無しに4K 2倍速のハイフレームレート撮影が可能となり、スポーツ中継で印象的なシーンを捉えるなど運用の幅が広がる。
また、システムカメラ商品群の新製品として、カメラエクステンションアダプター「HDCE―500」を国内初展示した(2026年3月発売予定)。同機は、カメラ本体とCCUの双方に接続することで、カメラ本体への電源供給を行い、さらにSMPTE光ファイバー接続をシングルモードファイバー接続に変換することができる。これにより、カメラとCCUの間で最長10 kmの映像伝送を実現。また、「HDC―P50A」との接続時は、1本のSMPTEケーブルで電源供給、映像伝送が可能となり、クレーンカメラとしての運用や、撮影場所と中継車システムが離れているゴルフ中継などの現場での運用性向上をサポートする。電源が取れない場所でもカメラの設置ができるようになるとか、配線が1本になるので、クレーンでのクレーンカメラでの運用に対して非常に活用が容易になるといったメリットがあるという。
後半については、ソニーマーケティングのB2Bビジネス本部の中川一浩本部長が説明した。
3つ目はテクノロジーでワークフロー自身をつなぐ。制作ワークフローのプロセスにおいて、デジタルトランスフォーメーションの必要性が高まっている。動画需要が拡大しているが、国内の労働人口が減っている。映像業界も働き手は減少していることに加え、コンテンツの制作ワークフロー、プロセスにおいて、マニュアル作業が多い。
ソニーでは、映像制作における制作ワークフローのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する、「イグナイト・コンテンツ・エコシステム」構想を参考展示した。パートナー企業との連携を通じて、企画/編成や制作準備/リサーチ、プロモーションでの2次利用など、多くの関係者の業務プロセスの効率化と柔軟なワークフローの構築を目指すという。
ライブプロダクションスイッチャー「MLS―X1」は、2025年10月にリリースしたVer. 2・4を展示。ユーザーごとに表示できるメニューを制限する「User Access Control」が実装されました。また、Ver.2・3で実装されたタリーやクロスポイントの情報を組み合わせて自動的に操作を実行する「Conditional Action」が進化し、より使いやすく高速な実行が可能となった。あわせて、これまで特注ソフトウェアで対応していた複雑な運用を実現することが可能。また参考出展として、ソフト/ハードの拡張性を生かした、SRT対応やスマートフォンなどでの閲覧に適した9:16での制作など、従来のスイッチャーの役割を超えて制作ワークフローを発展させるソリューションのコンセプトを紹介した。
4つ目はテクノロジーとロケーションをつなぐ。ソニーは、カメラやディスプレイなどの技術に加えて、スタジアムやアリーナへのシステム納入などで培ったノウハウを活用し、ロケーションエンタテインメントのソリューションを提供している。ブースでは、来場者のエンゲージメントを高め、ベニューの価値を向上させるライブコンテンツの創出を提案。
ソニー・村田氏は電波タイムズの取材に対し、「テクノロジーの力を元に何をつないでいけるかというのがテーマの一つです。
最近の技術の話は効率化とかコストカットが多いです。しかし、我々は技術の方向性としては、2つあると思っています。1つが効率化やコストカット、もう1つが私たちのソリューションや機材を使っていただける放送局の皆様のコンテンツの品質の向上。いかにコンテンツの品質を向上させるか、価値を向上させるかにも、非常に重点を置いています。
今年のソニーブースでは、ライブ制作のソリューションに加えまして、フェイクニュースが色々問題になっていますが、真実性ソリューションやニュース制作のソリューション、バーチャルプロダクトのシネマテック技術など色々と展示しました」と述べた。
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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