JWAY、AIコンシェルジュ「LinKa for CATV」

 株式会社JWAY(ジェイウェイ、茨城県日立市)は、ケーブルテレビ業界特化型AIコンシェルジュ「LinKa for CATV」を展開している。中言裕之代表取締役社長とAIコンシェルジュ(LinKa for CATV)担当の寺家通浩取締役に話を聞いた。

 AIコンシェルジュとは、AI(人工知能)を活用してユーザーの問い合わせや要望に対し、最適な情報提供やサポートを行うサービスのこと。
 すでにJWAYは「LinKa for CATV」をウェブサイトに導入して自社で実践している。窓口担当のJWAYのキャラクター「ジェイ坊」がホームページ画面に登場して案内する。パソコンからは、画面右下のチャットアイコンをクリックして利用する。スマートフォンからは、画面下中央に表示されるチャットアイコンをタップして利用する。
 ウェブサイト利用者にとってAIコンシェルジュは①サービスや料金プランの案内②加入者向け機器サポート③よくある質問への回答④各種手続きのサポート―などの案内が行える。
 知りたい情報をキーワードを入力するだけで、すばやく案内が可能だ。「どこにあるんだっけ?」と探す時間をグッと短縮。24時間いつでも利用できるので気軽に利用できる。
 寺家取締役は「他の業界と比較してケーブルテレビ局の電話対応は、話し中の待ち時間が短く細かな点を理解して案内する丁寧な点が特長です。また、電話対応で難しい点は往訪により、解決するまで対応する行き届いたところも利点です。こういったところを理解した上で、問い合わせ時に最初に使っているチャネルを調べたお客様窓口の利用実態をみると問い合わせチャネルの変化が起こっています。お客様は今まで電話でコールセンターに各種問い合わせをしていましたが、今は、スマホの普及で高齢者層も含めてウェブの問い合わせで解決を試みるようになっています」と話した。
 一方、ケーブルテレビ局のウェブサイトは複雑化している。具体的には「トップページのどこを見たら良いかわからず離脱した」「サイト内を探してみたものの、必要な情報にたどりつけず離脱した」「サイト内検索ツールがあっても、適格な回答にたどり着けないため離脱した」などウェブ上で解決できず、仕方なく電話で問い合わせするケースが増えてきた。ケーブルテレビ局のウェブサイト担当者からも「ウェブサイト更新のたびに各部署からの意見を反映しているが、ある情報に焦点を充てると、他の情報にたどり着きにくくなってしまい、結局、解決できていない」という声が多い。
 寺家さんは「ケーブルテレビ業界の方が思っている以上にお客様は各種問い合わせにおいて、一旦ホームページで調べて、必要な情報にたどりつけず、結局、電話をする人数が多いのが実情です。ある調査では60歳代以上でも男性の68%、女性の47%がまずウェブで自己解決を試みるが、そこで見つからずに結局、コールセンターに電話する方は意外とたくさんいます。加えて、少子高齢化で生産年齢人口の減少が拍車をかけています。ケーブルテレビ局は地元密着型のサービスなので、お客様から呼ばれると何とか駆けつけてあげようという思いがどの局も強いのですが、一方で何度も呼ばれたり、それで訪問スタッフを確保しなければいけないとカスタマ注力できない、さらに人員確保がどんどん難しくなっていく、こうした課題を解決してあげたかったのが目的でした。コールセンターの人員確保も大変で、仕事の内容を熟慮した人がやめてしまい、若い人も仕事を覚えた頃にやめてしまうという声を聞きます、そこで電話応対の人員がいらないAIコンシェルジュが威力を発揮します。AIを主体として、その方が調べたい情報にすぐに一直線に導いてくれるソリューションがあったらいいというのが今回のシステム開発を進めた経緯です」と話した。
 そして7月に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催された「ケーブル技術ショー2025」に出展。「LinKa for CATV」は引き合いが多かったという。
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 「LinKa for CATV」は、汎用的に受付、接客、商談を自動化させることを目的に開発された、次世代対話型AI『LinKa』をベースにケーブルテレビ業界に特化させたもの。
これを開発したナノコネクト(神戸市、木島貴志代表取締役)とアライアンスを組んで、ナノコネがカスタマイズ・運用保守を手掛けて、JWAYはケーブル局向けシナリオ開発・提案を行った。
出合ったきっかけは1年半前の都内で行われたAI関係の展示会で寺家さんがブースにいた木島社長と意気投合したという。
 「すでに自動車ディーラー向けに全国3800店舗で導入実績があると伺って、ケーブルテレビ業界に特化した『LinKa』がほしいとお話を進めました」(寺家さん)。
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 寺家さんは「LinKa for CATV」は「『知りたい・確認したい』情報を把握してウェブサイト上の、適切な階層に直接たどり着く。また、『知りたい・確認したい』キーワードからお客様が望む質問を推測します。サジェスト(提案)し、その中から適切な質問を選択。適切な回答に直接たどり着く」と述べた。
 特化型の特長は次の通り。
 ▽CATV汎用情報が事前登録済み=端末のリセット、不具合の解消等、各局で発生している汎用的な内容を網羅。各種端末や工事事例も事前登録。局ごとの登録不要。
 ▽動画・画像で分かりやすい=リセットボタンの場所や設定方法など画像や動画で分かりやすく案内。
 ▽最新の汎用情報を追加登録=新しいSTBやONUなど、各局の要望に応じて、新しく使用開始した端末などを任意で追加。
 ▽回答のブラッシュアップ=『検索の傾向』や『回答への未達案件』を分析し全局の回答をブラッシュアップ。
 ▽希望日時の申請=訪問対応の希望日時や、不具合が解消しない場合の、電話連絡の希望日時を申請。
 ▽スタッフ・外注のマニュアルとして使用=汎用異例を網羅しているため、日常の運用面でのマニュアルとして活用。新人や、外注スタッフ・工事業者などからの問い合わせ減少。
 「ある局からは、サイト更新で定期的に改修して楽しそうにしたり、わかりやすくしたりホームページ担当の方が、構築するとき、できる限り皆さんの意見を取り入れていくと、テレビもネットも電話もスマホもコミュニティチャンネルもあって、結局複雑なものをどうまとめようとしても複雑なところに行き着いてしまうという声がありました。せっかく作ったのに、うまく活用してもらえないのはすごく残念だと。『LinKa for CATV』は汎用的なのでCATV汎用情報がMSOでも小規模の局でも規模にかかわらず、各局で発生している7~8割程度の汎用的な内容を一切合切登録して網羅しています。さらに、新しいSTBが入ってくると、各局10局あれば各局の担当者10人がバラバラに動いて案内のサイトを作っていますが、『LinKa for CATV』はこちらで準備しますので、運用面での人手を少しでも解消できると思います。初期登録を手厚くしておくことでその後の負担が非常に少ないのです」(寺家さん)
 中言社長は「どの局も、サイト更新で同じような悩みがあって、どの局も同じように情報が過多になって、担当が変わるとまた一から作り直すという課題がありました。蓄積した情報は、ある意味で財産なんですが、それをうまく活用できてないという。『LinKa for CATV』の仕組みでは、ある程度ケーブルテレビ業界でこういうものが必要だろうというシナリオを当社で作って、ナノコネクトが構築しています。他社の差異の部分はカスタマイズしていきますので、各局が一から作る手間がいらないのです」と話した。
 ケーブルテレビのホームページは、放送サービスといったベーシックな事業はどの局も同じなので、見せ方が違うだけで届けているカテゴリーはほぼ同じ。今まではその〝見せ方〟で差異化を図るところからサイト更新を進めるのが普通だった。『LinKa for CATV』は実質的には同じ情報を流しているので汎用情報をベースにしてベーシックな部分はすでに網羅されているソリューションとなっているのだ。
 さらに中言社長は「『ケーブルコンベンション2025』でもケーブルテレビの地域DXをテーマにさまざまなセミナーがありました。今まではDXソリューションを開発メーカーが持ってきたものをそのまま使っていたところが多かったのですが、我々もその地域DXとケーブルテレビ業界がどう関わっていくのか考えたときに、サービスエリアにこだわった独自性のある地域密着型サービスと、エリアにこだわらないでも提供できる汎用的なサービスは、方向性として2本立てで進めた方がいいと思いました。我々の業界とはお付き合いのなかったメーカーの製品で我々の事業に応用できそうなものを探して、今回、汎用的に他の局も使えそうだということで『LinKa』を業界に特化させました」と話した。
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最後に寺家さんにアピールポイントを話してもらった。
 「特長のひとつ『最新の汎用情報を追加登録』では先ほどお話したように『LinKa for CATV』を10局使っていただいたら10個の知見が集まります。それが集まれば集まるほど非常に強くなっていくツールとなっています。私たちが気づいていないような汎用事例はまだまだありますので、新しく導入いただいた局さんで汎用と思っていたものが、私たちにとっては気づいていない汎用だったりする可能性もあります。この情報の入力を皆さんにお願いするのではなくて、こちらで一手に引き受けることによって労力の減少につながります。
さらに来年には『LinKa for CATV』がバージョンアップします。今、注目されているAIエージェント機能を備えるようになります。お客様の利便性をさらに高まるとともに、社内業務をマニュアル化して提示したり、社内教育にも活用できるようになります。社員側も『LinKa for CATV』社内専用サイトにログインすることで、例えば総務の仕事でこの経費の扱いはどうするのかなど、本来わかっていなければいけないのに悩んだりする案件をAIエージェントがサポートします。さらに社内からの問い合わせの分析機能もあるので、こんなお困りごとが多かったという分析は、なかなか手作業ではわからない部分があると思いますので、よりブラッシュアップしやすくなっていくと思っています」。

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。