
第6回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2025 豊田工業高等専門学校が最優秀賞
DCON実行委員会(実行委員長・松尾豊一般社団法人日本ディープラーニング協会理事長、東京大学大学院教授)は5月9日(金)・10日(土)の2日間、渋谷ヒカリエ「ヒカリエホール」(東京都渋谷区)で、高専生が日頃培った〈ものづくりの技術〉と、AI(人工知能)分野で特に成果を出す技術〈ディープラーニング〉を活用した事業プランを提案、企業評価額を競うコンテスト「第6回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2025」(DCON2025)を開催した。主催は一般社団法人日本ディープラーニング協会、一般社団法人全国高等専門学校連合会、NHK、NHKエンタープライズ.後援はデジタル庁、経済産業省、文部科学省、農林水産省、渋谷区、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)、日本経済新聞社。豊田工業高等専門学校(愛知県豊田市、チーム名「NAGARA」)が、腕に装着するウェアラブル端末(作品名「ながらかいご」)で最優秀賞を受賞した。
高専生が日頃培った〈ものづくりの技術〉と、AI(人工知能)分野で特に成果を出す技術〈ディープラーニング〉を活用した事業アイデアで、企業評価額を競うコンテスト「第6回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2025」(「DCON2025」)の本選が5月9日(金)・10日(土)の2日間に渡り開催された。
今回の大会は昨年度の1・3倍となる95チーム42高専がエントリーし、本選には2度の予備審査を勝ち抜いた10チームが出場した。本戦に出場した10チームは、上場を経験した現役起業家経営者をはじめとするメンターの指導を受けて、ビジネスプランと作品を磨き込み、本選でのプレゼンテーションに挑んだ。
初出場は4チーム、そのうち1チームはDCON初となる連合チームとなっている。歯周病予防システム、海難事故防止システム、循環型の飼料生産システム、バーチャルアーティストの3DCGライブの課題に取り組むアイデアなど社会課題の解決からエンタテインメントまで多様な提案が出揃った。本選では、高専生ならではの〈ものづくりの技術〉と〈ディープラーニング〉を活用した作品と事業プランをプレゼンテーションし、企業評価額を競った。
9日は開会式、技術審査会、作品展示が行われた。
10日は展示作品観覧、本選プレゼンテーション、受賞高専発表、表彰式が行われた。本選プレゼンテーションの流れは①メンターからの紹介コメント②チームメンバーによるプレゼン③技術審査員による技術講評(事前の技術審査による講評)④メンターからの推しコメント⑤審査員質疑⑥審査員による投資意思表示という形で行われた。本選技術審査員による評点とプレゼンテーション審査を加味し、ベンチャーキャピタリストである本選審査員が提示する企業評価額で最優秀賞が決まった。
MCはヒャダイン(音楽クリエイター)、佐竹美希(フリーアナウンサー/富山高専卒)が務めた。
ヒャダインは「昨今もはや日常に溶け込んでいるAI技術、一般的になってきたからこそ高専生の斬新かつ純真なアイディアが一際輝くと期待しています!今年はどんなビジネスに繋がるのか楽しみです」とコメントした。
佐竹美希は「富山高専出身でフリーアナウンサーの佐竹美希と申します。この度DCONに初参加させていただきます。〝未来のものづくりリーダー〟となる皆さんを、卒業生として応援する気持ちで臨ませていただきます!」とコメントした。
本選技術審査員は
▽尾形哲也早稲田大学教授
▽佐々木雄一Spiral.AI株式会社CEO
▽松尾豊一般社団法人日本ディープラーニング協会理事長、東京大学大学院教授。
本選審査員は
▽川上登福株式会社先端技術共創機構(ATAC)代表取締役
▽佐藤真希子株式会社iSGSインベストメントワークス代表取締役代表パートナー
▽仁木勝雅株式会社ディープコア代表取締役社長▽松本真尚株式会社WiL General Partner&Co―founder
▽村上由美子MPower Partners Fund L.Pゼネラル・パートナー。
豊田工業高等専門学校(愛知県豊田市、チーム名「NAGARA」)が、腕に装着することで介護中の会話から記録に必要な情報をマイクを用いて抽出し、自動で記録を作成・共有ができるウェアラブル端末(作品名「ながらかいご」)で最優秀賞を受賞し起業資金100万円を獲得した。審査員5名によるもしチームが企業だった場合の評価する金額である『企業評価額』7億円という評価を受けた。
さらに副賞として、8月開催のEXPO 2025 大阪・関西万博イベント「XROBOCON」への出場権利を手にした。同イベントは主催がNHKエンタープライズ、後援が一般社団法人日本ディープラーニング協会、一般社団法人全国高等専門学校連合会。会場は大阪・関西万博「シャインハット」。
最優秀賞の審査員による評価コメントは『介護という社会課題の大きさに加え、圧倒的な現場感が伝わってきた点を高く評価しています。ITに不慣れな現場でも音声入力は親和性が高く、両手がふさがる状況にも適した実用性の高いソリューションだと感じました。今後さらに現場に寄り添った磨き込みを期待しています』。
また2位には企業評価額1・5億円の評価を受けた鳥羽商船高等専門学校(三重県鳥羽市、チーム名「ezaki―lab)による音とレーザーを活用し、海苔養殖を食害から守るプロダクト(作品名「めたましーど~ノリ養殖を食害から守る~」)が受賞した。
審査員による評価コメントは『海苔の養殖はプレゼン段階ではニッチに見えるが、海の危険や害虫から身を守るというテクノロジーは全然足りていないので、すぐに売上を作ることができそうですし、本当に困っている方を支えるようなプロダクトなので、すぐにスケールするのではないかと期待をしています』。
3位には企業評価額8000万円の評価を受けた富山高等専門学校 本郷キャンパス(富山市本郷町、チーム名「Wider)による育児の負担軽減を目的としたAIカメラシステム(作品名「Smart Care AI」)が受賞した。
審査員による評価コメントは『今まで見守りカメラは幼児をメインとしていたが、今回は6歳までということで新しく需要が見出だせるのではないかと思いました。さらに高齢者を含め大人の見守りに応用できるのではないかと思い、今後の成長に期待を込めてこの評価をさせていただきました』。
今年は、過去最多となる全国95チーム(42高専)がエントリーし、本選には10チーム(11高専)が出場した。今大会では、歯周病予防システムや海難事故防止システム、バーチャルアーティストの3DCGライブといった課題に取り組むアイデアなど、社会課題の解決からエンターテインメントまで、多様なプロダクトとビジネスプランが出揃った。
「DCON2025」では最優秀賞と2位、3位のほか、産業への影響度や将来の期待度が最も高いチームに贈られる「経済産業大臣賞」や、農林水産業の課題解決とした優れたチームに贈られる「農林水産大臣賞」、技術面で優れたチームに贈られる「文部科学大臣賞」、「企業賞」の発表も行われた。
経済産業大臣賞は鳥羽商船高等専門学校、農林水産大臣賞は大阪公立大学工業高等専門学校(大阪府寝屋川市)・チーム名「IdentiX」・作品名「Worm Farmer」、文部科学大臣賞は沖縄工業高等専門学校(沖縄県名護市)・チーム名「沖縄マリンレジャーレスキュー隊」・作品名「海難事故防止の必須アイテムRiCAS」が受賞した。
各協賛企業による企業賞の表彰も行われた。各賞と評価コメントは次の通り。
▽アクセスネット賞=鳥羽商船高等専門学校。完成度が非常に高く、海苔生産者への事前ヒアリングを含む調査の深さに感心しました。鳥の撃退にレーザーと音を活用する発想も素晴らしく、今後は魚への対応も検討できると、さらに完成度が高まると思います。今後の展開にも期待しています。
▽NECソリューションイノベータ賞=富山高等専門学校 本郷キャンパス。当社は「いつかを、いまに、変えていく。 」というコーポレートメッセージのもと社会課題に取り組んでおり、富山高等専門学校の「これからの日本を担う子どもを守る」という想いに大変感銘を受けました。子どもの危険行動サンプルが少ない中で生成AIを活用し危険行動を判定するという発想も非常に興味深く、当社の技術陣の評価がとても高かった。
▽トピー工業賞:茨城工業高等専門学校(茨城県ひたちなか市)。落とし物の特徴をAIが判定してトレースする技術は、部品管理が重要な製造業である当社にとっても応用できるのではないかと感じました。茨城工業高等専門学校の作品を拝見し、一緒に研究したいと思うほど興味を引かれました。
▽トヨタ自動車賞=仙台高等専門学校 広瀬キャンパス(仙台市青葉区)。歯磨きという誰にでもリーチできるテーマに感銘を受けました。実際に触れてみると非常に軽量で転用の可能性を感じられました。今後の広がりに期待しています。
▽日立産業制御ソリューションズ賞=茨城工業高等専門学校。当社が大切にしている「世の中の安心・安全・快適」というという点で、ニッチながら非常に高い親和性を感じました。また、初エントリーでここまで上り詰めた成功体験を称え、ぜひ賞をお贈りしたいと思います。
▽フソウ賞=沖縄工業高等専門学校。当社は「水を支える企業」として、「見えない水」を「見える化する」という沖縄工業高等専門学校のコンセプトに大変共感しました。自ら処理が可能で、誰もが担える仕組みである点も、今後の展開のしやすいと思い高く評価しました。
松尾豊DCON実行委員長は次のように総評を述べた。
技術力の高さに加え、ビジネス構想の練り込みも素晴らしく、非常に完成度の高いプレゼンテーションでした。現在、日本国内にはAIやディープラーニングの活用が進んでいない分野が数多く残されており、世界のビッグテック企業もこのような市場への参入を進めています。だからこそ、日本から世界に向けて新たな技術を生み出していくことが重要であり、その主役となるのは高専生だと思っています。ぜひスタートアップ基金を活用して起業に挑戦し、多くの学びや社会貢献を実現していただきたいと思います。我々も、その挑戦を全力で応援してまいります」。
「DCON」は、高等専門学校の学生が日頃培っている「ものづくりの技術」と「ディープラーニング」を活用して社会課題を解決する作品を制作し、生み出される「事業性」を企業評価額で競うコンテスト。地域社会の課題解決に取り組む高専生ならではの発想力・技術力を生かした、多様で新規性の高い作品の応募が毎年多数寄せられ、例年複数チームが本コンテスト出場後に実際の事業創出に挑戦している。実際に起業して事業を行っている人もいる。「DCON」は未来のものづくりリーダーを発掘し、技術活用・事業創出を促進する機会をつくり、全国の高専生が持つ可能性を支援し続けていく。
DCON実行委員会は、今後も「DCON」の継続的な開催によりディープラーニングの産業活用を促進する若手人材の輩出を目指し、引き続き本コンテストの運営にあたっていく。第7回大会「DCON2026」の開催を決定している。
全文は5月16日付け4、5面に掲載
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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