マグナ・ワイヤレス、1μsec以下でジッタレス通信を実現

 マグナ・ワイヤレスはCOMNEXTにおいて、自社開発した「AU-700」などの展示した、
これまでの無線通信では、通信遅延時間のゆらぎ(ジッタ)を極小に抑えることは困難とされてきた。AU-700は、その課題を克服し、1μsec以下のジッタレス通信を実現。これにより、Time Sensitive Networking(TSN)による精密な時間同期・制御が、有線に加え無線ネットワークでも可能となる。
TSNは、ネットワーク上の機器をミリ秒単位で同期・制御し、工場全体の効率化を実現する技術。工場の完全無人化をめざす上で欠かせない要素とされている。
しかし、従来の無線通信ではジッタが保証されず、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)などの移動体をTSN環境で制御することが困難だった。
AU-700は、通信遅延時間のゆらぎを最大1μsec以下で保証。これにより、AGV・AMRはもちろん、シーケンサー(PLC)の無線化にも対応し、工場ネットワークの自由度と拡張性を飛躍的に向上させる。
さらに今後は、自社開発の専用半導体を搭載した小型モデル「AU-700W」の販売を予定している。AU-700Wはドローンへの搭載も可能となる見込みで、AU-700シリーズ全体で年間100台の販売を目指すという。
 また、ポスト5G対応半導体チップも紹介した。NEDOの委託事業である「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、同社と国立大学法人大阪大学大学院工学研究科(、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が共同開発したもので、世界初となる超低遅延通信を実現するポスト5G対応半導体チップとなる。
ポスト5Gチップは、5G無線通信の処理時間(遅延時間)を従来の約10ミリ秒から0.2ミリ秒以下へと50分の1に短縮した。これにより、超低遅延が要求される制御信号などにも無線通信の適用が可能となる。具体的には、人工知能(AI)サーバーからローカル5G無線通信を介してロボットをリアルタイムに制御できるようになる。マグナ・ワイヤレスは、2025年11月にポスト5Gチップを製品化する計画。
5G(第5世代移動通信システム)は、高速大容量(eMBB)、超多数接続(mMTC)、超低遅延(URLLC)の三つの特徴を持ち、これらの特性は本来トレードオフの関係にある。また、産業用途に必要な数ミリ秒以下の超低遅延通信に対応した半導体チップは提供されていなかった。このため多くの用途に無線が適用できず、産業活用が期待されるローカル5Gの普及が進まない一つの要因となっていた。
同チップはソフトウエア無線(SDR:Software Defined Radio)にも対応しており、さまざまな応用に対して最適な無線方式を選択できる。また、ローカル5Gの通信性能を向上する新無線通信方式も併せて開発した。今回の成果は、ローカル5Gの普及促進と産業DXの加速に加え、AIの高度活用が可能な次世代ネットワークの実現にも貢献することが期待されるとしている。

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成澤誠
放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。