ビデオリサーチ「VR FORUM 2025」開催 radiko、TVer両社長が登壇 セッションレポート「民放主体配信サービスが描く未来」
ビデオリサーチ(東京都千代田区、石川豊社長)は10月8日、9日の2日間、東京ミッドタウン(東京.六本木)で恒例の大型セミナーイベント「VR FORUM 2025」を開催した。今回のテーマは「Next STANDARDをともに。」。2日間で全19のセッションが行われ、4900名以上が会場とオンラインで参加した。
イベント2日目の9日に行われたセッション「民放主体配信サービスが描く未来」では、共に今年6月に新社長に就任したradikoの池田卓生氏とTVerの大場洋士氏が登壇し、それぞれの社が手掛けるサービスの特徴や今後の展開等を語り合った。モデレーターは、ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット プラットフォームアライアンス統括の松尾剛氏が担当した。
(写真左から:松尾剛氏、池田卓生氏、大場洋士氏)
セッションは「社長に就任し6か月」というトークテーマでスタートした。両氏は就任前の外から見た印象と中に入って把握した違い、すなわち「就任前/就任後のギャップ」について言及した。池田氏は「radikoはラジオをネットで聴くプラットフォームとしての印象が強かったが、SNSでシェアする機能や好きな番組をプッシュ告知する機能など、さまざまな便利機能が実装されていて驚いた。それに伴い、これからいろいろなことができるなと期待感を持った」と語った。大場氏は「入る前とは違い、見えていなかった景色が見えた。TVerにはプロパー社員が数多く在籍しており、さまざまな知見を持っている人が多い。ベンチャーぽい気質が会社全体にあることが初めてわかった」と社長に就任して気づいた点を語った。
続いてのテーマ「これからのメディアが果たすべき価値」では、池田氏は「コンテンツを放送局へ提供することから、これからは放送局と結束する新たなフェーズへ進んでいきたい。これを我々は『Unity』という言葉で表現している。社会インフラとして、よりradikoの価値向上を目指す。現在、AM局はFMへの転換、FM局は小規模中継局の維持にかかる多額の費用という問題を抱えているが、radikoがその代替メディアとして機能することを目指す」と考えを示した。
一方、大場氏は「今、コンテンツの数は無尽蔵にあり、視聴者の可処分時間を奪い合いあっているのが現状だ。その中にあってTVerは放送局クオリティのサービスが最大の武器。その強みを活かし、広告主から信頼されるメディアになっていきたい」と語った。
「ユーザーとつながる、拡がる」のテーマでは、成長を支える具体的な挑戦が示された。TVerは現在、デバイス対応に注力しており、特にコネクテッドTV(CTV)デバイスへの対応を強化している。今年4月1日から6月30日までの見逃し配信における動画再生数では、CTVの割合は38.6%まで増加しており、3月には1.7億再生を記録した。さらに9月には「PlayStation5」への対応を開始したことがトピックスとして紹介された。これはTVerにとって初のゲーム機対応で、新たなデバイスジャンルへの採用は約3年ぶりとなる。TVerの月間ユニークブラウザ数は今年1月時点で4120万(単体)。その一方、調査では、TVerの認知率は73.3%とどまっている。大場氏は「当社のサービスが無料であることをPRすることが課題だ。そして、それが伸びしろであると思っている」と語った。さらに、YouTubeの国内ユーザー数が7500万といわれる中で「少なくともそこに追いつき、追い越したい」と意欲を述べた。
一方、radikoはユーザーの利用環境を拡大するため、「Apple CarPlay.Android Auto」に対応を開始した。これにより、車載インフォテインメントシステムと連携し、より安全で快適なリスニング環境を提供している。radikoのサービス規模は、月間ユーザー数(MAU)が約850万人、1日のユーザー数(DAU)が約185万人だった。有料会員数は約100万人に達しており、1日あたりの平均利用時間は約130分と長いのが特徴だ。radikoは現在の月間ユーザー数が850万となっているが、池田氏は「これを1000万、2000万にしていくことが必須」と意欲を示した。昨年のデータで都道府県別の人口に対してのradikoユーザー率を見ると、最も高い東京都でも12.53%にとどまり、47都道府県平均では4.8%だった。これをふまえ池田氏は「まだまだ全国でradikoユーザーを増やしていける伸びしろがあると思っている」と意欲を示した。
「暗黙知」「熱量の可視化」を要望
広告については、radiko、TVerとも、広告価値の向上への挑戦を続けている。日本のテレビメディア関連動画広告費は2024年時点で653億円規模に推移している。その中でTVer広告は2022年度から24年度にかけて売上、キャンペーン数、広告主数、広告会社数のすべてが右肩上がりで成長している。特に売上は22年度から23年度にかけてYoY (Year over Year)は221%、広告主数は2138社へと拡大した。TVer広告では、地上波放送での広告秒数と同様の長さの広告を出稿できる点が強みだ。大場氏は「早い段階で1000億、2000億にいきたい。先を目指すなら、3000億、4000億は目指していくべきと考えている」と述べた。そのために必要なこととして「データによって暗黙知をどう可視化するかが、放送局クオリティの価値向上につながると思う。そこはビデオリサーチさんの知見を頼りにしながら実現していきたい」と要望した。
radikoの売上高は24年度が前年比162.2%と伸長している。池田氏は「よりご活用いただけるようになってきたと実感している。今後の事業計画では、100億の売上規模を目指している」と明かした。このために必要なこととして「放送局の皆さんと協力して広告在庫を増やしていくのはもちろんだが、radikoと地上波が一体となったセールスを企画する仕組み作りが重要」とし、「ラジオはリスナーの熱量とすごく密接なメディア。さまざまなラジオ番組発のイベントが大きな集客を生んでいるが、その熱量はなかなか数値化できていない。これが数値化できれば、さらにラジオやradikoを広告媒体としてより活用していただけるのかなと考えている」と述べた。
この記事を書いた記者
- テレビ・ラジオ番組の紹介、会見記事、オーディオ製品、アマチュア無線などを担当



