【InterBEEレポート】NHK&JEITA「つくる」「とどける」「たのしむ」のゾーンで紹介~「ニュース速報の手話CG生成技術」など

 NHKは「Inter BEE 2025」に、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)と共同で出展した。
「100年、その先へ メディアの新しいカタチ」をコンセプトに、NHKのサービスを支える技術を「つくる」「とどける」「たのしむ」の3つのゾーンに分けて紹介した。
 特別企画として、放送100年の歴史や、インターネットサービス「NHK ONE」の魅力を紹介するコーナーも設けていた。


「ニュース速報の手話CG生成技術」

 「とどける」のゾーンでは「ニュース速報の手話CG生成技術」を紹介。ニュース速報のテキストを手話に翻訳し、その内容を基に手話CGアニメーションを自動生成する。具体的には、任意の日本語を入力して翻訳ボタンを押すとAIが日本語文を、単語と単語の並びに変換する。このことを翻訳と呼んでいる。その結果に従って、あらかじめデータとして取り溜めた手話の動き(モーションデータ)を繋ぎ合わせて、アニメーションを作るというのが基本的な手話CGの仕組みとなる。
 ブースではCGアニメーションの生成の部分が空間位置を再現する提示位置の制御をデモで説明。手話は手話を出す場所が文脈によって変わる。例えば、新潟県の村上市と関川村という2つの地名に大雨特別警報が出た場合、これまでは手話話者が目の前の同じ位置で手話を出していた。それだと、村上市と関川村が同じ場所で表現されるので、新潟県の「村上市内の関川村」という一つの地点に大雨の警報が出たと勘違いされてしまう可能性がある。実際評価実験すると、そう感じるケースが結構多い。それを改善するためにこの村上市と関川村という2つの地名の固有名詞を右と左に出し分ける。これは実際の手話通訳の方がよく使うテクニックで、それを導入したもの。
 この他、自然な口型制御も説明した。手話は口の動きが非常に大事で、同じ手話の動きをしても口の向きが変わると意味が変わってしまうことが、単語にはたくさんある。手話を表現する場合、口の動かしかたを口型というが、それを手話CGでも再現できるようになった。これまでも口型を置き換えるという処理はしていたが、精度が不十分で口型が不自然だった。このため、手の動きと口の動きが同期してかつ口がちゃんと開いて読み取れる手話が自動で作れるようになった。


「MRキャスト」

 「たのしむ」では、MR(Mixed Reality、複合現実)によってCGオブジェクトを自由に動かせる技術「MRキャスト」を紹介した。
 MRキャストは、MRデバイスを用いてCGオブジェクトを手で自由に操作し、その様子を第三者視点となるカメラ映像にリアルタイム合成する簡易バーチャルシステム。
 本来MRはMRゴーグルをつけている人しか見ることができなかった。その世界を放送にも活用しようということで、リアルタイムに操作して、視聴者に見せることができるようなものになっている。美術館などの場合、正面しか見えないが、裏側を見せたり、色々な角度でリアルタイムに見せることができることが特徴となる。
 仕組みはバーチャル空間に、カメラをキャリブレーションして、バーチャル空間に映る3Dの素材とカメラの映像を合成して表示する。素材はあらかじめ作ったものであり、放送で使用した様々な素材を利用している。

 
 特別企画の1つ目は、「放送100年 れい明期の貴重な機器に見る放送技術の原点」で家庭用ラジオ・テレビや番組制作機材の歴史を展示した。2つ目が「NHK ONE Touch&Try」でインターネットサービス「NHK ONE」の魅力を紹介した。