NHKテクノロジーズ 幕張から渋谷の音声中継車をフルコントロール
NHKテクノロジーズは、イマーシブオーディオ&リモートプロダクションのデモを行い、同社のリモートプロダクションについて説明した。
Yamaha Sound Crossing Shibuya、 渋谷T2音声中継車、幕張メッセの3点を一般ネットワーク回線で結び、イマーシブオーディオ&リモートプロダクションをライブでデモンストレーションする。演奏はコアラモード.。
ライブの映像音声は、Yamaha Sound Crossing Shibuya(東京都渋谷区)で演奏されている映像音声を、同社テクノビル富ヶ谷に設置した同社のT2音声中継車に送る。音声はリニア64チャンネルの音声信号がリアルタイムで伝送されている。シグナルのプロセッシング自体はこの音声中継車ですべて完結するが、今回のデモではこの幕張のブースから、音声中継車の音声卓SSL のシステムキーをフルでコントロールした。
さらに、NHK テクノロジーズ独自の取り組みとして、ライブエクストリームエンコーダー、コルグのライブエクストリームエンコーダーを使って、ドルビーアトモス5・1・4チャンネル、それとHPL(HeadPhone Listening)バイノーラルで音声中継車から配信を行っている。
リモートプロダクションのメリットとしては、まず物理的な制約からの解放がある。作業スペースを確保するのは難しい。例えば、音声中継車が現場に行って留め置きすることが難しい現場もある。
また、今回の幕張のブースには4・1・4チャンネルのスピーカーシステムを組んだが、これを各現場で狭い環境で組むというのは非常に難易度が高い。この環境構築には非常に時間がかかるので、それはコストにも跳ね返ってくる。
これらはリモートプロダクション導入のハードルを上げる一つの要因ではないかと考えているという。そのため、IPを活用して、ライブ会場と制作スタジオをネットワークで接続する。そして、調整済みのいつものモニター環境でライブ制作ができる。
例えば、外部に設置したシステムを、自身のスタジオやレコーディングスタジオなどで操作することにより、いつも使い慣れたモニター環境でイマーシブオーディオライブ制作を実現できる。
そして、仕様の異なるスタジオを複数接続することで機能を分散することもできる。音声中継車はスペースの都合上5・1・4チャンネルのモニター環境になるが、例えば9・1・4チャンネルのスタジオにこの音声を持っていけば、5・1・4チャンネル以上のフォーマットで制作ができるという形になる。このように機能を向上させることができるということも、大きなメリットという。さらに、一般ネット回線を使用することにより、コストを削減することができる。
これまで制作が難しかった会場で、イマーシブオーディオライブ制作を実現するのがこのシステムだが、同社では、リモートプロダクションの目的を効率化だけではないとしている。
よくリモートプロダクションは、現場に行く人を減らすことが目的だと語られることが多いが、それだけではなく、これまで届けることのできなかった良質な音楽を高い臨場感を持ってライブで視聴者に届けたいという思いから、このリモートプロダクションのシステムに取り組んでいる。

この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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