KDDI総合研究所が施設内や最新の研究事例を公開 KDDI総研R&D2026レポート
KDDI総合研究所(KDDI総研)は2026年2月18日(水)、埼玉県ふじみ野市の同総研で「R&D成果公開2026」を開き、最新の研究事例等を紹介した。報道関係者を対象としたプレスツアーでは、AIや量子、6Gに向けた無線通信技術といった各分野の最新動向を楽しみながら理解できるゲーム形式で紹介する試みも実施された。
小西聡所長は、ツアーの冒頭でKDDI総研の設立経緯からこれまでの歩みを紹介。1953年の創立から続く研究所の歴史的な流れを振り返りつつ、日米間の衛星中継や光ファイバー技術、セキュリティ研究などの主要な実績について説明した。AIや量子計算の進展を見据えた最新の取り組みに加えて、サイバーセキュリティや月面での高速通信環境の構築といった未来へのビジョンを紹介する4つの初公開となる主要プロジェクトを紹介し、「当研究所では、最先端の技術開発と合わせて、政策動向や市場・消費者動向の調査も行っている。いわゆる『文理融合』の研究が、これからの時代にますます重要になると考えている」と挨拶した。
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6Gに向けた無線通信技術のコーナーでは、まず「AIによる通信エリア最適化」と題したブースを案内。「AI for Network」として人手では困難な全国数十万カ所の基地局に対する設定を最適化するために開発した独自の分散型AI技術を紹介した。
同技術では、複数の基地局の複雑な設定を最適化するため、従来の集中型AIよりも効率的な分散型AIを導入。このAIは現場の状況を学習・推論することで、通信エリアの質を劇的に改善し、低速エリアの減少を実現した。これにより先行して導入したエリアでは、通信品質の安定性については25%改善、最適化に要する作業期間については95%短縮を実現させたという。ブースでは、アンテナの角度を調整して通信品質を向上させるプロセスをゲーム形式で示し、人間や旧来の技術を上回る精度を強調。最終的に、作業の自動化による運用コストの削減と、ユーザーの満足度向上を両立させるビジョンを示した。
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続いて「ユーザセントリックRANの実証試験」のブースでは、屋外に設置した6G通信技術の試作機によるデモンストレーションを解説。従来の通信方式では基地局の境界付近で接続が不安定になる課題があったが、新技術であるセルフリー構成では複数のアンテナを連携させることでこれを解決する。ユーザーの移動に合わせて最適なアンテナを自動で組み合わせるため、場所を問わず常に安定した高速通信が可能になるといい、展示ブースでは、参加者がスマートフォンを持ち歩き、従来方式と比較して通信品質が劇的に向上する様子をリアルタイムで体験することができた。この技術は、将来的にドローンやロボットが屋外で自在に活動するための重要なインフラとして期待されているという。
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「月―地球間光通信の取り組み」と題したブースでは、同日発表した衛星間の追尾・捕捉・光行差補正技術と月面環境に耐えうる光アンテナ技術の検証について紹介。検証では、KDDI総研のほかに▽アークエッジ・スペース▽テックラボ▽トプコン▽三菱ケミカル―が参画し、月と地球間の光通信で必須となる「通信を確立し継続的に維持する追尾技術」「通信相手を捉える捕捉技術」「高速に動く衛星間の速度差による送受信光の角度ずれを補正する光行差補正技術」と、「月面の過酷な環境での通信に必要な広い温度範囲に対応する光アンテナの設計・製造技術」の確立を目指す。
地球と月の間の膨大な距離では光が拡散し、通信が不安定になるため、極めて精密な光軸制御が必要とされており、特に衛星本体の微細な振動による手ブレを補正するシステムが重要とされている。ブースでは、縮尺実験モデルを活用して実際の衛星の揺れを模した環境下で光のブレを抑え、安定した接続を実証する取り組みを解説すると共に、高速なフィードバック制御を用いて通信品質を維持する仕組みを説明した。今後はJAXAなどの機関と連携し、高精細な8K映像や広大な月面の風景を地球へ届けるためのインフラ構築を目指していくとしている。
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セキュリティのコーナーでは、不正ログイン対策技術として「kCAPTCHA(ケイキャプチャ)」と「KWAF(ケイワフ)」を紹介した。
kCAPTCHAは、毎回異なる検知プログラムを生成することで、ボットによる不正ログインを確実に阻止する技術。サイバー攻撃を自動化する「ボット」と呼ばれるプログラムを用いた不正ログインやSNSでの自動情報拡散が大きな社会問題となる中、同技術はこうしたボットによるアクセスを正確に判定し、不正ログインを防止する。検知プログラムをブラウザに送り込んでボット機能の有無を検知。検知プログラムは時間をかければ解読され、応答を偽装される可能性があることから、検知プログラム自体を、アクセスの度に全く異なるものに変化させる。毎回変化するプログラムをタイムアウト時間内に解読して応答を偽装することは不可能なため、ボットを確実に検知できるという。
KWAFは、ホワイトリストを自動生成し、従来の対策では防げなかった未知のゼロデイ攻撃を高精度で遮断する。2025年は複数の大企業がサイバー攻撃で事業停止に追い込まれるなど多くの被害が出たが、こうした攻撃では「ゼロデイ攻撃」と呼ばれる未知の攻撃手法が多く用いられたという。従来技術であるWeb Application Firewall(WAF)はブラックリスト型の為、既知の攻撃以外を検知することが困難だったが、KWAFではサーバーログからホワイトリストを自動生成することで、誤検知率0・1%以下という高い精度を達成、未知のサイバー攻撃を止めることができるようになったとしている。
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また「量子暗号通信でAI時代のデータ流通を守り抜く」と題したブースでは、AI社会の進展に伴う膨大なデータ通信を守るため、量子暗号通信の実証実験に成功したことを紹介。
同日発表した資料によると、KDDI、KDDI総研とノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社、東芝デジタルソリューションズが2026年1月26日にKDDI大阪堺データセンターと大阪市内のネットワークセンターを結ぶ商用ネットワーク上で耐量子セキュリティ技術を使って大容量データ伝送実証を成功させた。この実験により、既存の商用網においてキャリア品質の運用・保守体制を維持しつつ、世界最大級となる57Tbpsのデータ容量を暗号化できることを証明したという。これらの技術は、将来的な計算能力の飛躍による脅威から社会インフラを保護する包括的なソリューションとして活用していくとした。
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プレスツアー以外でも、多数の研究事例をブース展示で紹介していた。

このうち、「高周波数帯の利用拡大 液晶メタサーフィス反射板」のブースでは、電波の拡散を防ぐ電波無響室を公開すると共に、電波の反射方向を制御する液晶メタサーフェス反射板について解説した。
高い周波数の電波は、建物や人・物にさえぎられると、相手に届きにくくなる。そこで、壁や柱などで跳ね返る電波の向きを制御し、周りに散らばっている電波を集めてピンポイントで届けることで、いつでも安定してつながる通信を実現するため、電波を好きな方向へ反射できる反射板の研究開発が進んでいる。紹介された反射板はディスプレイに使われる液晶技術を応用して、従来比約1/25となる低消費電力での駆動を実現し、身の回りの様々な場所に設置することを可能にしたという。
このほかフィジカルAIやメディア圧縮技術に関する展示もあった。
この記事を書いた記者
- 主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。
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