京セラ 水中光無線通信で世界最速レベル5.2Gbps伝送を達成 次世代海洋ICT基盤の構築へ前進

京セラは、水中環境における短距離光無線通信において、世界最速レベルとなる5.2Gbpsの伝送速度を達成したと発表した(同社調べ:2025年11月11日時点)。この成果は、海洋探査や水中ロボット運用において大容量データをリアルタイムで伝送することを可能にし、次世代の海洋ICTインフラ構築に貢献すると期待されている。

 

開発の背景と経緯

 

近年、AUV(自立型無人潜水機)や水中ドローンを活用した海洋調査、構造物点検、資源探査が急速に拡大している。しかし、従来主流であった音響通信は長距離伝送には適するものの、速度が数Mbps程度にとどまるため、高解像度映像や大容量データの即時共有には限界があった。こうした課題を解決するため、京セラは水中環境に特化した光無線通信技術の研究開発を進めてきた。今回、淡水の室内実験において、5.2Gbpsの伝送を達成するに至った。

 

独自技術が支える超高速通信

 

京セラが開発した超高速水中光無線通信技術には、主に二つの特長がある。

 

①独自仕様のPHY(物理層)開発:光無線通信におけるPHYは、デジタルデータをレーザーなどの物理的な信号に変換し、送受信する役割を担っている。既存の標準的な光無線通信仕様は、基本的に有線通信や通常の無線通信技術を基にしているため、水中での伝播が難しく、大容量データを安定して送ることが困難だった。これに対し、京セラは水中環境に特化した最新の高速通信方式をベースとした独自の通信仕様を水中光無線通信に適用することで、水中での安定した大容量伝送を実現した。

 

②帯域幅1GHzへの拡張:この独自通信仕様を適用したことにより、光学半導体部品の帯域特性を最大限に活用する、1GHzを超える広い帯域幅を持つ光フロントエンド回路の開発に成功した。この技術により、同じ時間内により多くの情報を送ることが可能となり、従来の水中光無線通信(「CES 2025」に出展した2Gbpsのプロトタイプとの比較)と比べて、約2.5倍のデータ転送速度を実現する。

 

今後の展開

 

本技術は、AUVによる高精細映像のリアルタイム共有、水中構造物の高精度点検、海洋研究における大容量データの即時取得、さらに水中に設置された多数のセンサー群からの同時データ収集など、幅広い分野での活用が期待されている。この技術は、短距離ながらも圧倒的な速度と高い安定性を兼ね備えており、海洋産業や学術研究における技術革新を加速させ、次世代の海洋ICT基盤の構築に大きく貢献する。京セラは今後もさらなる大容量通信を目指し、研究開発を進める方針だ。これにより、リアルタイム性が求められる海洋ICT分野において、従来にない高速・大容量のデータ伝送環境を提供し、新たな価値創造を推進していく。

 

なお、この「超高速水中光無線通信技術」は、2026年1月6日から9日(現地時間)に米国ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」の同社ブースにて展示される予定だ。