放送番組の違法動画再生111億回、広告費32億円流出か 民放連が実態調査で警鐘

一般社団法人日本民間放送連盟(民放連、東京都千代田区、会長=早河洋・テレビ朝日会長)は3月19日、放送番組の違法アップロードと広告に関する声明を発表した。2025年末に実施した第2回実態調査により、ユーチューブなどのプラットフォーム上で膨大な数の違法動画が放置され、多額の広告費が不正な投稿者や事業者に流れている実態が浮き彫りとなった。民放連はこのままではコンテンツ制作の持続可能性や民主主義を支える報道活動が危うくなるとして、ユーザー、プラットフォーム事業者、そして行政に対して強力な対策を求めている。

 

今回の調査は2025年11月から12月にかけて、ユーチューブ、フェイスブック、TikTok、Xを対象に行われた。抽出したユーチューブの300アカウントで25の民放番組を調べたところ、1万5214件の違法動画が確認され、累計再生回数は約111億回に達している。特筆すべきは、これらの動画の多くに大手広告主や東証プライム上場企業の広告が表示されていた点だ。1再生あたりの広告単価から推計すると、この調査範囲だけでも約32億円の広告費が違法アップロード者やプラットフォーム側に流出した可能性があり、民放連はこれを「氷山の一角」であると強調している。

 

こうした状況は、日本のコンテンツ文化に深刻な影響を及ぼす。本来、広告主から支払われる広告費は制作現場に還元され、ドラマやアニメ、バラエティーといった質の高い番組を生む源泉となるが、違法アップロードが野放しになれば、出演者やクリエイターに正当な対価が支払われず、国際競争力の低下や将来の才能育成の阻害を招く。また、放送局の収益が悪化すれば、災害報道や調査報道といった公共性の高い活動の継続も困難になり、国民の知る権利や民主主義を損なう恐れがある。さらに近年は、これらの違法動画が生成AIの学習対象とされることで、権利侵害がさらに拡散・助長されるという新たなリスクも浮上している。

 

民放連は解決に向けて、まずユーザーに対し、違法アップロード動画の速やかな削除と、放送やTVerといった正規ルートでの視聴を呼びかけている。放送番組の無断公開は、10年以下の拘禁刑や1000万円以下の罰金(法人は3億円以下)が科せられる重大な違法行為だ。一方、プラットフォーム事業者に対しては、第三者的な傍観を止め、自ら違法アカウントを検出して投稿者に権利確認を行うなど、削除と未然防止のための真摯な取り組みを求めている。現状では被害者である権利者が多大なコストを払って削除申請を行う構図を強いられており、より効果的かつ効率的な環境整備が急務となっている。

 

行政に対しても、2025年4月に施行された「情報流通プラットフォーム対処法」の実効性ある運用と、改善が見られない場合のさらなる措置の検討を求めている。あわせて、デジタル広告の適正な配信に向けたガイドラインの周知徹底も要望した。民放連は、広告が社会から信頼される存在であり続けるために、日本アドバタイザーズ協会などの広告関係団体とも対話を重ね、広告主や広告会社と連携して市場の適正化に取り組む方針だ。

 

民放連・早河会長は以下のコメントを発表した。
「権利侵害コンテンツを掲載する媒体や違法アップローダーへの広告費の流出は、単に民間放送の収入減の問題にとどまらず、日本のコンテンツ産業の持続可能性に影響をおよぼす問題です。コンテンツの制作にかかわった多くの関係者に正当な対価が還元されるよう、広告主の皆様には引き続きご理解をお願いするとともに、プラットフォーム事業者には権利侵害行為に対する真摯な対応を求めます」