Spectee AI活用でSNSから情報をリアルタイム収集

 Spectee(スペクティ、東京都千代田区、村上建治郎社長)の「Spectee(以下、スペクティ)」は、日本で最も使用されているSNS緊急情報リアルタイム配信サービスだ。 スペクティは、独自特許技術による人工知能エンジン「Spectee AI」を用いて、世界中のソーシャルメディアにアップされた画像や動画、テキスト情報を24時間モニタリングしながら、“いつ”“どこで”“何が”発生しているかをリアルタイムに識別し配信する。 村上氏は大手電機メーカーに入社後、外資系企業に転職、シスコシステムズでマネージメントにも携わった。元々、起業したいという思いもあったが、大きな転機になったのが、2011年の東日本大震災だ。村上氏はボランティアとして何度も東北を訪れたが、そこで情報収集および分析の重要性を強く感じたという。ある避難所には物資は十分あるが、別の避難所には全然物資がないといったことが多数起きており、それが中々解消されなかった。これは国や自治体が現地の状況を細かく把握できなかったからだ。 東日本大震災の際に注目を集めたのが、ツイッターなどのSNSだ。様々な人々が自分の置かれた状況を訴え、それを見た人がさらに拡散することで、多くの人々が避難所の状況などを知ることができた。テレビや新聞などの大手メディアがカバーできない、地域・エリアの情報をピンポイントで得られることも大きなメリットだ。村上氏もSNSで情報収集を行ったが、この経験がスペクティの開発につながった。 2011年に会社を立ち上げ、村上氏と2名のエンジニアの計3名でスタートした。当初は、SNSのデータ整理と位置情報抽出を行っていたが、本当に必要な情報だけを取得することが難しかった。このため、当時勃興してきたAI技術を取り入れることにし、独自のエンジンを構築した。これにより、2014年にスマホアプリをリリースした。さらに、報道機関向けにスペクティサービスも開始している。大きなポイントになったのは、2016年4月の熊本地震。地震発生が深夜だったことから、大手メディアは現地に行くことができず、状況の把握も困難だった。しかし、一部、報道機関向けスペクティサービスを利用してテレビ局は、現地の情報を得ることができ、映像を流すこともできた。このことが口コミで広がり、ゴールデンウィーク後にはテレビ局など大手メディアから問い合わせが殺到したという。 スペクティは前述のAI技術を活用し、SNSに上がってくる数多くの情報から、画像解析や自然言語解析を駆使し、情報の重要性や真偽、正確な発災場所を判断し、リアルタイムに配信する。国内で唯一、複数のSNS(Twitter、Facebook、Instagram、YouTubeなど)に対応し、各地の事故・事件・火事・気象・災害などの情報を配信する。報道機関での採用シェアは約9割に達している。さらに、報道機関以外でも、自治体や官公庁、交通機関、インフラ企業、民間企業など、業界問わず幅広く使用されている。現在、国内260社以上、世界40ヵ国以上で採用されている。 採用の広がりと共に業績も順調に成長しており、2018年の売上高は2017年比で倍増、2019年も2018年比で3倍増となる見込みだ。 村上社長は「我々はメディアではないので、あくまでも裏側で技術開発をしたり、特にカメラやSNSのなどの情報解析が得意なので、それを用いて情報配信をサポートする立場です」と語る。海外への展開も積極的に進めていく考えで、「今6月にロイターと契約し、現在、ロイター経由で各メディアに動画コンテンツの提供を行っています。また、2017年にはAP通信と契約していますので、対メディアという意味ではAPとロイターを軸に展開していこうと考えております。ただし、APとロイターが入っていけない分野もありますので、我々としても海外に出て行こうとも思っています。また、海外でのパートナー探しも行っています。特にアジアへの展開はできるだけ早く進めたいと思っています。 競合については、アメリカが一番進んでいて、すでに競合する起業が数社出てきています。ただし、ほとんどの場合はテキスト解析であり、我々のように画像や動画を解析しているところはまだないので、この部分ではまだまだ我々の強味になります」(村上氏)。 順調に成長を続ける同社だが、次のステップとして、株式公開(IPO)も視野に入れている。