イートラスト、クラウド型防災監視システム「STAND GUARD」

 イートラスト(東京都台東区、酒井龍市社長)は、1935年の創業以来、産業機器のメンテナンスや電気・情報設備工事など、〝現場〟で磨いてきた経験・知見をベースとして、河川の氾濫、増水など豪雨災害の脅威に備える防災・減災ソリューションを提供してきた。そして新ブランドとしてクラウド型防災監視システム「STAND GUARD」(スタンドガード)を立ち上げた。完全ワイヤレスで、撮影画像を取得し、クラウドサーバーへ自動送信するスタンドガード防災クラウドカメラ「eT001s」、測定データを格納し、専用の管理画面やウェブWebサイトにリアルタイムで表示するスタンドガード防災クラウドシステム「eT―Cloud」をパッケージ化した。 酒井龍市社長は「『STAND GUARD』は、〝河川を見守る、暮らしを守る。〟システムです。川の様子をリアルタイムで監視。すべての人が安心して過ごせるように、IoTの力で、いつもの暮らしを守ります。『STAND GUARD』の意味は、歩哨、見張りを意味するもので、イギリスの宮殿で見張りをする衛兵もSTAND GUARDと呼ばれています。つまりお城を守る屈強な兵隊さんのように、皆さまの暮らしと安全を身守り、守りたい。そんな思いを込めた名前です。従来は型番表示でしたが、見張り番、命を守る見守りという意味を込めたブランド表示でお客様にわかりやすくしました」と述べた。 クラウド型防災監視システム「STAND GUARD」のコンセプトは①必要とされる場所に、不可欠な機能を。②クラウドで、いつでもどこでも、誰にでも。③カスタマイズで様々なシーンに。④環境や景観にも配慮。―の4点。 スタンドガード防災クラウドカメラシステム「eT001s」は、ソーラーパネル、カメラ本体、電源ボックスで構成。国や自治体から信頼を得て、日本全国ですでに1000台以上が稼働している「eT001」の後継機として、2020年にリリースされた最新モデル。省エネ化や小型化を追求し、コスト面や運用面で大幅に改良することに成功した。2019年のモデルチェンジでカメラの小型軽量化を実現。従来モデルに比べて大きさは約3分の1、重量は約2分の1の約1・5㌔㌘となった。 河川の状況が確認できる画像を一定間隔で自動撮影する。リアルタイムに河川の状況を画像として確認することで、適切な避難指示を促す。さらに、夜間でも確認できる高性能カメラが大きな特長。きれいに撮影できるスマートフォンでも、照度が低いと鮮明度が落ちるが、『STAND GUARD』の画像は、星あかりほどの明るさでも、しっかり現地画像を確認できる。関係省庁・自治体では最大2分間隔で河川の状況を正確に把握できるため、的確なタイミングで状況の把握、避難指示が出せる。一般市民にとっては、スマートフォンやPCなど、インターネットを通じて、いつでも・どこでも河川の状況を確認できる。 ソーラーパネルで発電し、LTE通信で伝送するため通信線や商用電源が不要。インフラ条件の影響を受けず、どこでも設置可能だ。また、ソーラーパネル・カメラ本体・バッテリーは小型で軽量。街路灯や電柱、橋桁などへも設置でき、短工期で低コストな導入を実現する。 1週間以上、給電せずに稼動。最大8日間無日照でも監視することが可能。小さな基盤に工業用のUSBカメラを実装することで、消費電力を大幅に低減することに成功した。30㍗のソーラーパネルと26アンペアのバッテリーを組み合わせることで、無日照での長期稼動を実現した。 気温、湿度、雨量や風速、日照、紫外線から人感センサーまで、様々なセンサーを組み合わせて、運用できる。 スタンドガード防災クラウドシステム「eT―Cloud」は、防災クラウドカメラで撮影された画像を閲覧・確認するためのWebアプリケーション。複数のカメラから収集された画像を一括で確認することで、適格な状況判断をサポートする。一括管理・閲覧ができるクラウドサービスとして、カメラからデータを送信。サーバー上に保存されて、それを関係省庁・自治体、一般市民はデータ閲覧・確認が行える。具体的には、カメラが撮影した写真データはLTE通信でインターネットに接続しサーバーに伝送される。サーバーに保存されたデータは専用の管理画面からリアルタイムで確認できる。また、自治体の公開サーバーへの伝送や、国土交通省サーバーで公開されている住民向け防災Webサイト「川の防災情報」への伝送も可能だ。伝送方式はオンプレ方式、クラウド方式、直接方式の3方式。 「管理用のクラウドと一般公開向けのクラウドをパターン化しました。関係省庁・自治体様には管理画面をご提供しています。Webブラウザからアクセスできます。住民の皆様は公開Webサイトから閲覧でき、確実で便利な情報提供が可能です。各自治体様の要望により、防災Webサイトでカメラの画像を一般公開することも可能です。スマートフォン、PC、タブレットなど各デバイスに合わせたレイアウトで見やすく情報提供ができます。市民への公開・非公開は各自治体様の状況に合わせてお選びいただけます」(酒井社長)。 主な機能は▽スケジュール機能=撮影間隔を指定してスケジュール撮影が可能▽センサー入力撮影とメール通知=センサー入力時に登録したメールアドレスへの通知が可能▽ユーザーごとの監視局参照範囲選択=ユーザー側で参照可能範囲を選択可能▽平常時画像の登録=監視局ごとに平常時の標準画像を登録でき、比較検討に使える▽メール通知=観測データの閾値超過時に登録ユーザーにメール通知▽マルチデバイス対応=閲覧機能はPCやスマホなど表示デバイスに応じ、自動で見やすいレイアウトに。 同社は国土交通省が主導する「革新的河川技術プロジェクト」に参加している。このプロジェクトは増加する豪雨災害に、IoTなどの最先端技術を取り入れることで、河川管理を効率的・高度化する取り組み。近年の豪雨災害では洪水の危険性が十分に伝わらず、的確な避難行動につながっていないという課題があり、河川の状況をリアルタイムで画像確認できる河川監視カメラは、河川氾濫などの災害時に重要な役割を果たす。 『STAND GUARD』は、国土交通省が定めた要求仕様に適合しており、これまでに多くの自治体などに導入されている。スタンドガードは、国土交通省が定めた要求仕様▽屋外に容易設置可能なカメラシステム▽設置後5年程度の連続使用を想定▽夜間でも撮影可能(月明かり程度〈最低被写体照度0・5ルクス〉)▽無日照等の状態で7日間の静止画像伝送が可能(約2000回伝送)▽静止画像伝送時の通信料は1台あたり月額1000円以下を目標▽静止画像及び動画は、インターネット経由で閲覧可能(静止画像はJPEG形式とする)―のいずれにも適合している。 「『STAND GUARD』は、国、県、市区町村などの政府・自治体をはじめ、民間企業や地域団体の皆様から河川防災の有効なソリューションとして厚い信頼をいただいています。国交省の『革新的河川技術プロジェクト(第3弾)』での実証実験に参加し、また東京都『先進的防災技術実用化支援事業』での取り組みを経て、認定を受けたスタンドガード防災クラウドカメラシステムは、現在、国交省の地方整備局5局、20の都道府県をはじめ各地の自治体様への導入が進んでいます。また方式が少し異なりますが、海を越えて、ミャンマーやフィリピンなどの国でも河川監視システムとしても活躍しています」(酒井社長)。 酒井社長は今年(2021年)の抱負を次のように述べた。 「コロナ禍が落ち着く落ち着かないに限らず、防災に関しては〝待ったなし〟。豪雨災害はいつ起きるかわかりませんし、気候の温暖化の影響もあって年々気象災害は局地化、集中化、激甚化しています。私どものクラウド型防災監視システムを導入したからといって、豪雨災害の襲来を防ぐことはできませんが、豪雨災害によってどこで何が起きているのか、今よりもきめ細かく分かるようになれば、早く安全に避難ができるようになります。導入されたお客様からは監視カメラも水位計も高い評価を得ています。今後もシステムの普及に取り組んでいきます。製品開発では、新しいテーマとして、たくさん集めてきた情報をいかに分かりやすく整えて市民向けに公開するかに取り組んでいます。クラウドの品質性のさらなる向上も含めて、画像認識関係でAIを導入しようと考えています。AI化に取り組む体制として技術者の採用も積極的に行います。大学との産学連携によるプロジェクトも進んでいます。将来的なシステム像は、市役所から避難勧告、避難指示が出る前に、地元のコミュニティ単位において河川の画像を閲覧して避難する『自主防災』を目指しています」と述べた。