NICT 広帯域波長多重技術・光増幅方式を駆使した伝送システム

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、徳田英幸理事長)ネットワーク研究所のベンジャミン・パットナム主任研究員らのグループは、研究開発用の標準外径(0・125 mm㍉㍍)4コア光ファイバを用い、波長多重技術と2種類の光増幅方式を駆使した伝送システムを構築し、毎秒319テラビット、3001㌔㍍伝送実験に成功したと発表した。この結果は、伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算すると、毎秒957ペタビット×㌔㍍となり、標準外径光ファイバの世界記録である。今回は、これまで利用されている波長帯域(C帯、L帯)に加え、利用が難しく一般的に商用化されていないS帯も用いて広帯域化し、552波長多重により大容量化を図った。さらに、希土類添加ファイバを使った増幅器とラマン増幅の増幅方式を駆使し、3001㌔㍍の長距離伝送に成功した。標準外径光ファイバは、既存設備でケーブル化が可能で、大容量長距離伝送の早期実用化が期待でき、Beyond 5G以降の新しい通信サービスの普及に必要な基幹系通信システムの実現に貢献する。 増大し続ける通信量に対応するための新型光ファイバ研究が進み、近年は研究開発用の標準外径の新型光ファイバが市販されている。今後は、光ファイバの特長を生かした伝送システムの研究開発が重要になると考えられ、NICTは新型光ファイバを用い、波長多重技術や変調技術等を駆使した多様な伝送システムを構築して、多くの世界記録を達成してきた。 これまでの波長多重技術では、C帯とL帯の波長を使用するのが一般的であり、帯域を広げS帯も使用した場合は、大容量は実現しても光増幅技術が伴わず、数10㌔㍍程度しか伝送できなかった。 NICTは、研究開発用に市販されている標準外径の4コア光ファイバを用い、波長多重技術と光増幅方式を駆使した伝送システムを構築し、毎秒319テラビット、3001㌔㍍伝送実験に成功した。この結果は、伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算すると、毎秒957ペタビット×㌔㍍となり、これまでの標準外径光ファイバ世界記録(NICTによる)の約2・7倍になる。 今回は、C帯、L帯に加え、利用が難しいS帯も用いて広帯域化し、552波長多重と16QAM変調方式により、毎秒319テラビットの大容量を実現。さらに、希土類添加ファイバを使った増幅器とラマン増幅を組み合わせた周回ループ実験系を構築し、3001㌔㍍の長距離伝送に成功した。 標準外径光ファイバは、実際に敷設するケーブル化の際に、既存の設備を流用することが可能で、大容量長距離基幹系通信システムの早期実用化が期待できる。Beyond 5G以降では、新しいサービスにより爆発的に通信量が増加することが予想される。本成果は、Beyond 5G以降における多くの新しいサービスの普及を支える基幹系通信システムの実現に貢献するもの。 今後は、伝送距離やネットワーク構成が異なる光通信システムにおいて、早期実用化が期待できる標準外径新型光ファイバを利用した様々な実装形態を可能とするため、更なる伝送能力の向上を目指し、将来の大容量光伝送技術の基盤を確立していきたいとしている。