NEC、サイバーセキュリティ事業説明会・施設見学会

 NECは5月8日、NEC玉川事業場ルネッサンスシティ ノースタワー(神奈川県川崎市)で、サイバーセキュリティ事業説明会・施設見学会を開催した。森田隆之取締役代表執行役社長兼CEO、中谷昇執行役Corporate EVP兼CSO兼NECセキュリティ株式会社代表取締役社長が会見した。

 高度化・複雑化するサイバー攻撃から、政府・企業などを守るサイバーセキュリティ事業に注力している。そのような状況下において政府は今年2月に、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた法案を閣議決定し、法案が成立すればわが国のサイバーセキュリティ政策の変換点になると考えられている。

 今回、同法案への対応も見据えてさらに強化するNECのサイバーセキュリティ事業の説明と、新設する施設の紹介を行う場を設けたもの。

 NECは、「.JP(日本のサイバー空間)を守る」をスローガンに、日本のデジタルインフラの安全性確保に貢献するためサイバーセキュリティ事業を強化する。
 その一環として、米国政府機関が遵守すべき高度なセキュリティ基準「NIST SP800―53」をベンチマークとした「Cyber Intelligence&Operation Center」を新設する。日本政府や重要インフラ事業者、そして海外で事業展開する日本企業向けに今年下期からサービス提供を開始する。
 「Cyber Intelligence&Operation Center」は、従来のSOC機能に加え、インテリジェンス・ドリブンなサイバー攻撃の予兆把握から地政学リスクを考慮したインシデント対応支援・報告までの機能を集約し、日本のデジタルインフラを守るための包括的サービスを提供する。
 会見で発表した強化ポイントは①独自のサイバー脅威インテリジェンスの提供②国産AI技術を活用し、安全性と機能性を両立③グローバルでの推進体制を確立―の3点。

 ①では、グローバルな情報源からサイバー脅威情報や攻撃パターンなどの膨大なデータを収集し、データレイクに一元的に蓄積・管理する。これらをAIを活用して分析・可視化し、地政学的観点や各国の法規制なども考慮した上で、サイバー攻撃の脅威やリスク、対応手段などをNEC独自のサイバー脅威インテリジェンスとして提供する。これを活用することで、サプライチェーン全体をカバーした、より高度な戦略立案と脅威への迅速な対応が可能となる。

 ②では、サイバー脅威情報の収集・分析・可視化・対処にNEC開発の生成AI「cotomi」(コトミ)などのAI技術を活用し、専門家の意思決定を支援する。分析から対処まで90%の作業を完全自動化し、リアルタイムで分析結果を顧客に報告する。残りの10%の手動分析では、関連情報をAIが自動的に収集してアナリストに提示するなど、より効率的かつ高精度な分析を支援する。また、信頼性の高い国産AI技術を活用することで、安全性と機能性を両立したサービスを提供する。

 ③では、今年10月に日本に「Cyber Intelligence&Operation Center」を開設後、2026年度以降、APAC、欧州、米国に順次開設し、各拠点間を有機的に連動することでグローバルに切れ目のない推進体制を確立する。各拠点では、各国の法規制に対応した迅速な対応を支援、インシデント対応から監督官庁への報告までを包括的に支援できる体制を確保することで、24時間365日、日本の政府・企業を守るコンセプトである「Make Japan Cyber Secure」の実現を目指す。

 森田社長は「私たちが日常的に使用しているインターネット、あるいは様々なデジタルサービス、これらを支えているのがデータセンターあるいは通信を担う5G、海底ケーブルそして衛星といったデジタルである。このデジタルインフラは、今や社会全体の神経網を担っており、電気、ガス、水道といったライフラインのみならず、交通や物流、そして製造業や金融業に至るまで、全ての産業の根幹を支え、私たちの日常生活にとって欠かせないものになっている。一方で、デジタルインフラが社会の神経網となったことで、サイバー攻撃が社会インフラにも致命的な影響を及ぼすケースは多く存在している。サイバー攻撃は私たちの日常生活を止めてしまう危険性を受ける。デジタルインフラはいわば国、私達の生活の生命線といえる。こうしたサイバー攻撃リスクに対して、政府においてもデジタルインフラの安全性確保に向けた動きが急ピッチで進んでいる。国を挙げてデジタルインフラを守るためには、官民一体での取り組みが重要になると考えている。こうした中、NECは日本のデジタルインフラを守ることができる存在であると考えている」と述べた。

 さらに森田社長は「実際サイバー攻撃の99%は海外。NECは海底ケーブルと衛星両方を提供している稀有な世界企業である。また、政府や企業のミッションクリティカルシステムを長く、実際のフィールドにおいて守り続けている。日本独自の法制度価値観に基づいた国産AIを保有している。NECはこれらの強みを生かし、日本のデジタルインフラを守り、日本の政府、企業、そして日本の人々の生活を守り続けていく」と話した。

写真は 「Cyber Intelligence&Operation Center」

全文は5月14日付け5面に掲載

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。