NTTグループが銀行業に本格参入

 NTTは5月29日、SBIホールディングスと資本業務提携契約を締結したと発表した。同日開催の取締役会で決議した。また、NTT子会社であるNTTドコモが同日付で、住信SBIネット銀行株式会社の普通株式を金融商品取引法に基づく公開買付けにより取得して子会社化し、住信SBIネット銀行及び三井住友信託銀行株式会社との間で業務提携契約を締結した。両グループが有する強みを結集し、金融領域を中核に様々な領域での革新的なサービスを市場に提供することで社会の発展や利用客の利便性向上に寄与していくとしている。
NTTによると、2023年5月に公表した中期経営戦略の柱に掲げた「パーソナルビジネスの強化」「社会・産業のDX/データ利活用の強化」や「お客さま体験(CX)を重視したサービスの強化」について加速することを期待し、SBIホールディングスとの資本業務提携契約に至ったとしている。

 提携の主な目的として、「デジタル技術と金融サービスを融合させ、金融領域を中心に様々な領域で革新的なサービスを市場に提供」「社会の発展をめざすパートナーとして、両グループのアセットを活用した幅広い領域における協業関係を構築」「社会課題の解決およびお客様の利便性向上に寄与し、持続可能な社会の構築に貢献することにより、両グループも成長」を掲げた。

 具体的には、銀行・証券領域における提携関係の維持・強化や資産運用・セキュリティトークン・保険分野における新サービスの創造、金融サービス事業におけるシステムの高度化、その他分野における両グループのアセットを活用した連携を進める。

 業務提携に向け、SBIホールディングスが実施する第三者割当増資をNTTが引き受け、両グループの資本業務提携の礎とする。NTTは約1100億円を出資し、SBIホールディングスの普通株式2700万株を取得する(発行済株式総数に対する出資比率は約8・18%)。またNTTの子会社であるNTTドコモも約4200億円を出資してSBIホールディングスの住信SBIネット銀行に対する持株の34・19%に当たる株式を取得して連結子会社化する。資本業務提携の開始日は7月17日を予定している。

 同日会見したNTTの島田明社長は、「両グループの新しい協力関係が未来に向けた様々な挑戦の基礎となることを期待している」と期待を寄せた。

 SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長は、住信SBIネット銀行の生みの親として、住信SBIネット銀行がNTTグループ傘下企業となることで高成長を持続させる責務があるとし、売却後もグループを挙げて同行を支援すると説明。新たな銀証連携サービスの開始やNTTのIOWNを代表する光電融合技術を活用した取り組み等を進めるとし、「両グループ企業間のシナジーを追究し新たなビジネスの協創につなげたい。SBIグループとしてメディア・IT・金融を融合したネオメディア生態系の構築を目指す」と話していた。

 続いてNTTドコモの前田義晃社長は、データ活用による最適なサービス提案や顧客基盤の強化、金融事業の成長加速などを銀行業参入の目標として設定。「コンシューマ事業のうち金融分野を今後の事業成長の柱に位置付けている。今回の銀行業への参入に当たっては自社設立を含めてあらゆる選択肢を慎重に検討し、ドコモが提供する金融サービスとの連携に必要な機能を有する住信SBIネット銀行が最良のパートナーであると判断した」と話し、根拠として経営基盤の安定性収益性、高度なAI技術の保有などを挙げた。

 また住信SBIネット銀行の円山法昭社長はAI事業等テクノロジー面での強みを強調し、「株主の皆様に納得いただける価格提示をいただいた。昨今メガバンクがデジタルバンク領域に次々と参入する中、我々も次の一手が必要と考えていた良いタイミングでご提案をいただいた。NTTドコモさんが持つ膨大な顧客基盤と販売基盤、法人ネットワーク、我々が持っていないクレジットカードやポイント事業などを補完する機能を手に入れることができ、さらなる成長ができると確信している。またSBIグループとの連携も維持していくことも最大のポイント。プラスの効果しかない」と話していた。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。