
NECと東京科学大学、バーチャル医療・ヘルスケアシステム構築に関する協定を締結
NECと東京科学大学(東京都目黒区、大竹尚登理事長、田中雄二郎学長)は、患者中心の医療と医療従事者の能力を最大限に発揮できる業務環境の実現に向けて、仮想空間上で医療関連データの流通を可能とするバーチャル医療・ヘルスケアシステム構築に関する協定を締結し、研究開発を開始したと発表した。またこの取り組みを推進するため、医療関連の研究者や、スタートアップから大手まで様々な企業を対象とした共創コミュニティを2025年度内に立ち上げる。
厚生労働省による地域医療構想や地域包括ケアシステムなどの政策により、複数の医療機関や様々な医療・介護制度に跨ったサービスの提供が始まっている。しかし、疾患ごとに異なる診療プロセスや見守りを患者中心で行うための情報管理の仕組みは整備されておらず、また患者中心の医療・ヘルスケアサービスに必要な要素技術・サービスに関わる新規スタートアップの創出や、優れたアイデア・技術を有効活用する方法も求められている。
NECと東京医科歯科大学(現東京科学大学)は2020年に、「ヘルスケア領域における新たなサービス事業の創出・推進に関する連携協定」を締結し、一人ひとりの健康状態に合わせた身体のケアサービスを提供する「NECカラダケア」の運営や、AIによる慢性腰痛のセルフケア支援技術の開発などを行ってきた。
このほど同連携を発展させ、NECが有する最先端AI技術や医療情報システムの構築およびサービス提供ノウハウと、東京科学大学が有する医療・ヘルスケアの知識や工学的知識を融合し、バーチャル医療・ヘルスケアシステムを構築する。これにより、予防医療から急性期、慢性期、介護までをシームレスに繋いだ疾患ごとに異なる患者中心のサービスや医療従事者の能力を十分に発揮できる業務環境の実現を目指す。
具体的な取り組みとして、病院内・外に存在する医療・ヘルスケア情報への容易なアクセスと安全な情報共有を実現するデータ基盤や、データ収集用デバイスの開発などを行う。また将来的には、蓄積したデータを製薬企業や医療関連のセンサー開発企業などに提供する事業も検討する。
併せて、同取り組みを推進するための共創コミュニティを2025年度内に立ち上げ、医療関連の研究者やスタートアップに、研究フィールドや企業とのパートナリングおよび市場・顧客へのアクセス機会を提供するなど、効率的な事業参入を支援する環境を整備する。
具体的なテーマとして、NECカラダケアや、東京科学大学・ALSOKグループ・エヌジェイアイが出資し設立した慢性期(在宅、施設内)の医療・介護サービスの研究フィールドを提供する科学的看護・介護研究機構(通称:カガクル)などを通し、両者が取り組んでいる既存のサービスの高度化や、医療的ケア児および難病患者にかかるサービスの提供からはじめ、データの収集と活用を進める。これらを通じて事業性を見極めながら、新しいテーマや領域にも取り組む。
「電波タイムズ」の取材に対して「ここでいう仮想空間上で医療関連データの流通を可能とするバーチャル医療について、実際の利用シーンとしては、例えば、医療従事者が患者に対して適切なケアや処置を判断・実施しなければならないシーンにおいて、その判断のために参考となるノウハウ情報を手元で直ぐ確かめることができるようなことを考えており、そのもととなるデータを本共同研究で構築するデータ基盤で提供する想定です。他にも、患者ごとに取得された日々のバイタルデータと院内の臨床データなどをもとに、患者の状態を数値化して見える化することで、症状悪化前の早期介入など、患者本人が症状に気づく前に医療従事者から患者に寄り添えるといった環境を実現するためにも、蓄積されたデータを活用することができると考えています」(NECコーポレートコミュニケーション統括部)と述べた。
また、ここでの『NECの最先端AI技術』についてNECコーポレートコミュニケーション統括部では「NECでは長年にわたりAI関連の研究に取り組んでおり、『BluStellar AI』として、映像解析、マルチモーダル解析、異種混合学習、LLMなど多様なAI技術を提供しています。例えば、患者にかかわる映像や臨床データ、バイタルデータなどからAIの一つである機械学習を用いて患者の状態を推定、可視化し、東京科学大学の臨床知見を組み合わせて、患者や医療従事者が治療法を選択する際に必要な情報を提供できると考えています。また、『NECカラダケア』で用いている腰痛AIでは、映像解析技術とマルチモーダル解析技術といったAI技術により、スマートフォンやタブレット端末で撮影した映像から高精度に骨格を推定し、属性情報などから慢性腰痛の原因を推定して、改善のための運動プログラムを提供することができます」と話した。
写真は 両社の関係者
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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