
国際電気/プライベートLTE網の広報ドローン
7月30日に発生したロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする巨大地震に際し、国際電気(東京都港区、佐久間嘉一郎社長)が提供するプライベートLTE活用の「津波避難広報ドローン」が初稼働。宮城県に発令された津波注意報を受け、2機のドローンが仙台市沿岸部を自動飛行し、上空から住民への避難を呼びかけ、避難誘導に威力を発揮した。
このドローンシステムは、東日本大震災で避難広報中の職員や消防団員が津波の犠牲になったことを教訓にして開発されたもので、Jアラート(全国瞬時警報システム)の津波注意報、及び津波警報に連動し、自動でドローンを飛行させ避難広報や現場映像監視を行う。
国際電気では、災害時でも安定した通信を提供できる仙台市専用のプライベートLTE網を整備し、ドローンの運航情報や搭載カメラによる現場映像をリアルタイムで仙台市災害対策本部へ伝送する機能を実現した。同システムは、2022年10月から運用が開始され、今回の地震で初めて実稼働に至った。
以下、プライベートLTEネットワーク、及び全自動ドローン運航監理システムによる「津波避難広報ドローンシステム」の本格運用開始に至る経過にスポットをあてる。
仙台市は、過去に例のない東日本大震災に係る復興の経験と教訓を世界に発信すべく、「仙台防災枠組2015―2030」に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理を策定し、市民社会の視点から減災に取組み、プライベートLTEネットワーク、及び全自動ドローン運航管理システムによる「津波避難広報ドローンシステム」を国の未来技術社会実装事業による支援を受け、津波情報伝送システム等の既にある避難広報手段の強化・多重化として開発した。
同システムは、前述のようにJアラートと連動してドローンを自動運航し津波避難広報を実施するシステムで、ネットワーク基盤として自治体専用のプライベートLTEを活用し、次の機能を実現した。
①Jアラートに連動し、市内施設に設置されたドローン格納庫から、スピーカー、及びカメラを搭載した2機のドローンが自動離陸
②あらかじめ定められた海岸線や河口付近のルートを自動飛行しながら津波避難警報・注意報を発し、観光客や釣り人、サーファーなどに対し避難広報を実施
③避難広報と同時に最前線の現場を上空から俯瞰的に撮影し、収集した情報を仙台市災害対策本部にリアルタイムに伝送し共有
④活動終了後はドローン格納庫に帰還し自動着陸・自動給電
⑤着陸の際、規定以上の風速を観測すると、安全のためドローン格納庫周辺に緊急避難着陸
⑥これらの一連の機能は自動実行され、職員の安全確保と省力化、有事での状況判断等に寄与。
国際電気は、今後ともセンシング、無線通信、情報処理技術で社会課題ヘソリューションを提供し、「つなげる技術で価値を創る」ことを目指すとした。
(沼田洋一)